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性悪貴族?なにそれおいしいの?  作者: ぽて
ドキドキワクワク学外研修編

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番外編 いつかの会話(*未来のIF話)

ねたばれ自重してないので注意。さらにヒューイ君は『中の人』統合バージョンなので重ねて注意。



もしかしたらあるかもしれない未来の会話








「ヒュー君、ヒュー君。そういえばなんだけど、いつか食べた○らやのよーかんおいしかったよねー……」

「そーだねぇ。あの絶妙なバランスは量産品には真似できないよね」


 ポツリとこぼした妖精女王の言葉に同意するヒューイ。アレは……お高いのには理由があるのだと思い知らされた逸品でもある。


「生菓子と良い、ホントおしょーさんの和おやつセンスは神がかってたねー」


 そこで二人揃ってため息。ゼフィアランス王国と妖精郷には、圧倒的に和菓子成分が足りない。


「あ、そーだ! 私、あっちに行って和菓子買ってくる!」

「え? そんな簡単に行けるものなの!?」

「道さえ知ってればカンタンカンタン」


 どうだすごいだろう! とでも言いたげに胸を張る妖精女王様。山も谷間も存在しないのが物悲しいが。


「てゆーか、シィってあっちじゃ姿見えなくなるから買い物とか無理なんじゃ……?」

「ところがどっこい! 今の私は大物だから、あっちのヒトに自分の姿を見せる程度はお茶の子さいさいなんだよ!」

「おぉー、シィさんすごーい!」


 ……と、感嘆の声を上げた所でヒューイの頭の中を何かが過ぎった。


 −−大物、……大物といえば……。


「確か……大物って『境界』、超えられないよね?」

「はぅわ!? 何という盲点!!」

「やっぱり自分達で作り出すしかないのかぁ……」

「そんなの素人な私達じゃ無理だよぅ!」


 食べる専門の女王は論外として、ある程度は料理できるヒューイでも大味での再現ならともかく、繊細な伝統技能は真似しようがない。


「−−こうなったら結界を破って和菓子職人さんを拉致るしか……!」


 女王は限りなく本気の目で呟いた。昔の彼女であれば無理だったが、今の彼女であれば可能な所業である。


「ちょ、そんな理由で結界破られたら退魔師さん達血涙流しちゃう!!」


 元退魔師としても複雑な心境である。理由が平和的? なのが唯一の救い−−拐かされる和菓子職人以外は−−ではあるが、あんまりだ。


「でもそれぐらいしないと、エトガル君に任せっきりじゃあ何年かかるか分かんないよー」

「うーん。せめてレシピと材料が揃ってればなぁ……」


 材料に関しては、『あちら側』と『こちら側』で名前が違っていたり、品種が認知されていなかったりするので、『あちら側』の物を持ち込めるならそれに越した事はない。


「……あれ? そういえばヒュー君なら『境界』抜けられるっぽくない?」

「…………へ?」

「だって、あの『結界』ってあくまでも『こちら側』の強力な魔物の行き来を阻害する物なんだから、人間のヒュー君なら普通にスルーできるっぽくない?」

「まじか」

「まじまじ」


 高まる期待に二人のワクワクは最高潮にまで達した。思い立ったならば善は急げ!


「行っちゃう? 行っちゃう?」

「行っちゃえー!」


 じゃあ案内するよ、と女王は席を立った。ヒューイもそれにならう。


「じゃ、抜け道まで案内するよ」

「抜け道かぁ。なんか年甲斐も無くワクワクしちゃうねー。『境界』も久々だしさ」

「なーに年寄りくさい事言ってるんだか。ヒュー君まだ未成年じゃん」

「精神年齢はそれなりデスヨ?」

「精神年齢の自己申告ほどあてにならないものはないよネ」

「シィってたまに僕への当たり強いよね……」


 そんなヒューイのぼやきも、「だってヒュー君だもの」理論で即座に切って捨てられた。


「…………あ。そういえば僕、あっちのお金持ってないや」


 通貨が違うのを普通に忘れていた。


「質屋とか行ってみれば何とかなんないかな?」


 退魔師時代、手に入った用途のわからない呪具的な物をよく退魔師御用達の質屋に売っぱらっていた事を思い出した女王が提案したのだが……。


「それ紹介状とか無いから無理。……そもそも売れそうな物とか持ってきてないし」


 お金になりそうな物といえば、武器として携帯している籠手ぐらいだが、両親が無茶をしてまで用意してくれた逸品を質屋に流すのは、流石にはばかられる。


「うーん。……ちょっと待ってて」


 ごそごそと空間を漁る女王。女王程になると空間収納の魔術を使いこなすなど容易いのだ。


「−−お、あったー。昔、よっしーから貰ったお小遣いの五千円!」

「うーわー。物持ち良いとかそういうレベル超えてるね。てか、使えるの? その五千円札」


 貰ってから何年経っているのかイマイチ判らないのが不安要素であった。少なくとも十七年以上昔の物である。ヒューイの覚えている限りでは、電子マネーへの移行も始まっていた気もするので、完全移行していたらアウトだ。その場合、骨董品としての価値はあるかもしれないが……。


「まー、それは使えなかった時に考えようよ。……あ、着いたよ!」


 あそこだよと女王が指差したのは、人が一人通れそうなバラのアーチ。


「じゃあ行ってみるね」


 ゴクリと唾を飲んで一歩踏み出したのだが−−バチバチッと弾かれるヒューイ。見えないが、そこには壁が存在しているようだった。


「あれ、ヒュー君は人間なのに何で?」

「識別方式的に何か引っかかる要素でもあったのかなぁ……?」


 念のため女王も試してみたが結果は同じ。二人の共通点を考えてみる。……魔力量とか? 女王はもちろん、現在のヒューイの魔力量も相当なものである。人類のトップレベルぐらいはある。


 理由:もしかして→魔力量過多?


 他にも、大物の代表格である魔王ノーチェとの契約が結界に作用している可能性が大いにあった。


「ああーっ! もうっ、あのバカネコっ。こんな時まで邪魔するなんてぇぇ!!」

「ノーチェとシィって何故か仲悪いよね」

「『何故か』じゃないよ! 必然だよ!!」

「お、おう」


 女王的には、再会時にちゃっかりヒューイと契約していた魔王が許せないらしい。一種のヤキモチみたいなものだ。彼は当然気付いてもいないが。


「これじゃあ、私たちの優雅な和菓子生活が暗礁に乗り上げちゃうよぉー!」

「最初っから前途多難だった件」

「そんなことないもんっ!」


 一度成功を確信してしまっていたが故に諦めきれない女王は頑なに現実を受け入れられない様子。何か他の手は無いものかと頭をひねるヒューイ。そういえば……と、閃いた事があった。


「あっちとこっちを行き来できる妖精さんの知り合いは?」

「そ……」

「そ?」

「それだぁぁっ!!」



 −−その後。

 妖精郷は和菓子のメッカとして別の意味で有名になるのだが、それはまた別の話である。




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