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性悪貴族?なにそれおいしいの?  作者: ぽて
ヒューイ君と愉快な仲間たち編

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閑話 魔王は○○○


「そういえば、ノーチェは人化もできるんだったな」


 ノーチェ−−魔王に名前が無いと色々と差し支えるので、ヒューイが名付けた−−の猫の姿しか知らないアルが、ふとそんな言葉をこぼした。


「人化というより……ワガハイ、むしろそっちが真の姿なのだが」

「そういえばそうだったねー」


 もはや猫姿で接したの時間の方が長いため、ヒューイの中では忘却の彼方である。


「……へぇ、どんな姿なのか興味あるな」

「ほうほう、そんなにワガハイの真の姿を拝みたいか。ならば−−とくと拝むがいい!」


 ぼわんと煙が立ち上り、猫の姿から、ローブを羽織った人の姿になるノーチェ。


「へー、しっかりしたもんだ。……しっかしなんでそんなゴツイローブ羽織ってんだ?」

「こうした方が、みすてりあす度がアップして恐ろしいだろう?」

「ミステリアスというよりは……怪しさ大爆発な気もするが」


 見た目は完全に悪の魔術師か、邪教の信者である。魔術師はともかく、邪教の信者に関しては、比較的宗教には寛容な国なので、本当にいるかわからないが。


「そういえば、ノーチェの素顔って見た事無いんだけど、どんな感じなの?」

「ワガハイの素顔、か……?」


 今までフードで隠れて見えなかったが故の疑問である。激しい戦闘を経てもなお、捲れすらしないという別の意味で恐ろしい衣装だった。

 まぁ良いだろう。と、ノーチェはローブを脱ぎ始めた。そして姿を現したのは−−


 年代的にはヒューイ達と同じくらいに見えた。艶やかで長い黒髪。キリッと吊り上がった目は気の強さを感じさせる。年頃の女の子らしい丸みを帯びたラインに、意外と膨らんだ胸。出るとこは出て、引っ込むべきところは引っ込んでいる。その身を包むのは必要最低限の布のみ。正に、ザ・野生児。

 特徴的だったのは頭に生えた猫耳と、臀部から生えた尻尾。


「…………お、んな?」

「え、ノーチェって女の子だったの?」


 アルが恐れおののき、ヒューイは今更の様に気が付いた。


「ん? いかにも。ワガハイ、メスだがそれがどうした」

「ちょおおおおっ、年頃の女の子がそんな刺激的な格好しちゃいけません!!」

「は?」


 アル突然の変貌にノーチェの目が点になる。


「……きょーかんがオカンに!?」


「アステルーっ、アステルはいないのかぁぁぁッ!」

「アステルちゃん、今日はクラブ活動の日ですがー」

「うむ。今日はクッキーの日なのニャ」


 唯一頼れるマトモ女子の不在に、アルは膝から崩れ落ちそうになるが、すんでのところで堪える。


「取り敢えず服! コイツにまともな服を着せるんだぁぁぁっ!!」


「ここにあるマトモそうな服というと、制服……とか?」

「女子用制服をストックしてる男教官とか、それなんて変態だ!? 捕まるだろ、普通に!」

「別に男子用でもいいのでは?」

「駄目だ。こんないい素材に半端な服を着せる訳にはいかねぇ!」


 男子用など論外だ。と強硬な姿勢を崩さないアル。


「お前はノーチェを狼の群れに放り込む気か!?」

「ノーチェなら、狼ぐらいは普通に返り討ちかとー」


 それこそ新たな魔王か勇者くらい連れてこないと無理では? とのヒューイの問いにも、


「このまま放っておくと、別の意味で無謀な勇者共が量産されるのは目に見えてんだよ!」


 この場合の勇者とは『魔王討伐者』ではなく、『勇気ある者』である。もっと詳しく言うなら、カノジョいない男子生徒諸君である。


 いっそ手の届かない高嶺の花と思わせるぐらいのインパクトが必要なんだ! とアルは力説する。


「意味がわからんニャ。すべて返り討ちにすれば済む事ではないか」


 流石は魔王。見た目は魔性の女だというのに本人全くの無自覚だ。


「可哀想過ぎるだろ……それは。あとな、お前と一般生徒じゃ実力の格差がありすぎて、最悪再起不能になっちまう」


 要するに、本人は火の粉を払うつもりだったとしても、過剰防衛になってしまう事をアルは憂いていた。


「勇者相手に手加減する魔王とかないニャー」

「『勇者』ってのはあくまで比喩だ、比喩! 間違っても一般生徒に怪我とかさせんなよ?」


 俺にも庇ってやれる限度って物があるんだ。と、ため息をつくアル。


「まあ、現状でもけっこー危ない橋渡ってますもんねー僕ら」


 何せ、今は無害とはいえ魔王を匿っている−−実質野放しにしている−−のだ。問題を起こされて、詳しく調べられでもすればかなりの大事になる。


「そうか。まーがんばれニャ」

「「お前(キミ)の所為だからな(ね)!?」」

「お、おう」


 あくまでも軽い調子のノーチェにアルは不安を抑えきれない。


「……なんつーかこの際、人化させたまま学校に編入させて常識とか学ばせるのもアリかもしれねぇな」

「でも、猫耳と尻尾がネックになるんじゃあ……?」

「なんでだ?」


 ヒューイの言葉に、一瞬疑問符を浮かべたアルだったが、「ああ」と、ある事に思い至った。


「そういやお前も変なトコで常識が欠けてたっけか」


 流石のヒューイも事実だけに返す言葉が無い。


「うちの国じゃ珍しいが、他の国だとノーチェみたいな見た目の『獣人』ってのが結構いてな? そんなに珍しくねーんだよ」


 まあノーチェは厳密には獣人じゃなくて魔物だが。と、補足する。


「つまり、田舎から出てきた獣人さんとして編入するってことです?」

「ま、そんな所だ」

「ほうほう。つまりワガハイに学徒になれということか!」


 良いこと思いついたぜ! とドヤ顔のアルに、割と乗り気なノーチェ。だが、ヒューイはこの案にある一つの穴に気づいていた。


「学費とかはどーするんですか?」


 −−重い沈黙。


「……考えてなかった」

「あと、別に人化しなくても猫のままで授業聞いてれば良いような……」

「それ、するんならノーチェをお前の使い魔として登録しとくが……」


 ちらっとノーチェを見るアル。以前、使い魔の話が出た際は思いっきり拒否っていたと記憶していたが。


「あれ? 僕、魔術師じゃないから登録出来ないんじゃあ……?」

「お前、使えなくても一応素養はあるからなー。無理ってわけじゃない。問題はノーチェがオーケーするかどうかだ」

「……むぅ。ワガハイと其奴はあくまでも対等。上下をつけるのは気が進まん。進まんのだが……」


 チラチラとヒューイを見るノーチェ。脈ありのご様子。


「お前がどうしてもと言うのであれば、ワガハイ折れてやっても良いニャ」

「−−じゃあ、『どうしても』」



 結局、編入生ノーチェさんは実現せず、学内では人化しないという所で落ち着いたのだった。



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