10 エピローグ
1章エピローグです。
「どうしたよ、お前ら。雁首揃えて」
珍しく教官室で仕事していたアルが怪訝な顔で尋ねる。長期休暇に入ったばかりだというのに学生がやってくるというシチュエーションに、少しばかり不吉な予感を覚えていた。
皆の表情が心なしか強張っているように見えるのもそれに拍車をかける。
「アルフレッド教官。少々、報告したい事がありまして」
真面目筆頭のエルンストが魔の森での出来事−−動機やキノコの件はぼかして−−をアルへと説明していった。
「…………魔の森で魔王発生。で、お前らはソレと交戦した、と」
コクリとうなづく一同。
「…………なんつーか。よく無事だったなお前ら」
アルは半眼だった。人間、何と言ったらいいかわからない状況になると、どんな表情をすればいいかわからなくなるらしい。
危ない橋を渡った事を叱るべきなのかもしれないが、肝心の魔王が逃がしてくれなかったとあれば仕方のない事とも思える。
「お前らが今ここにいるって事は勝ったって事なんだろうが……魔石とドロップは?」
答えは−−無い。
ちなみに魔王は魔物の一種なので、倒せばもちろん魔石と何らかの品をドロップする。脅威度は最高−−一般人では近づく事イコール死を意味する−−のS。そして魔石は基本的に最高品質、ドロップも魔王の姿形で多少変化はするが高値で売れるようなものが残る。
だからこそ魔王が出現した際、夢を見た者たちがこぞって殺到し犠牲になり、討伐者が称えられる訳だが。
「おーい、何でそこで黙り込むんだよ」
「…………倒せていません」
「…………………たお、せて、ない……?」
「はい、倒せていないです。俺たちでは決着を付けられなかった……!」
悔しそうに告げるエルンスト。
「じゃあ一体どうやって−−」
魔王から逃れられたのか−−と、問おうとして、ある可能性に思い至った。
「……ところで、そいつは?」
アルはヒューイの肩に乗っているソレをさして問う。数日前まではこんなものいなかった。猛烈に嫌な予感がしていたので触れないでおいたのだが、もう無理だった。そろそろ確認しないと精神衛生上よろしくない。
「えーっと、僕の使い魔さんです?」
ヒューイの言葉に、彼の肩に乗っていた黒猫−−魔王−−が不満そうな鳴き声をあげる。ついでに尻尾で顔をぺしぺし。
「いや、使い魔ってお前は魔術師じゃねぇだろうが。しかもなんか不機嫌そうな声だしてるし」
「それなら……ウチの子です!」
「寮は基本的にペット不可だぞ」
「……ウチの魔王くんです! ペットじゃないです!!」
「…………………魔王様が魔王飼うってどんな冗談だよ!?」
災厄の予感しかしねぇよ! つーか魔王が仲間入りってどーゆー展開だ!? と、叫んだアルを責められる者など何処にもいないのだった。




