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紅戦記  作者: 竜堂 酔仙
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一応これで一区切りつけます。

気が向いたら続きとか書くかもしれません。

それより先に荒いところの修正だなぁ...

 さて、その他にお嬢様の偉業をお話しするとなると... “ベヒーモス”退治があげられましょうかな。

 あれは、召喚から三年ほど経った頃にございました。今から一年ほど前のお話です。

 折も悪く、全能の王率いる勇者パーティーが遠征に出払っておるときにございました。

 悪魔王“アマイモン”が、暇潰しに、自らのペットであるベヒーモスを解き放ったのでございます。

 悪魔のペットであるベヒーモスは、ひとつの館ほどの大きさの体躯を持つ巨大な猪となり、シュメールの都を蹴散らさんと迫ってきたのでございました。

 当然城内は騒然といたします。

 この国の最大戦力である勇者パーティーが不在のところに、未曾有の災害となりうる悪魔のペットが向かってくるのでございますから、いたしかたのないことでございましょう。

 そんなときに立ち上がったのがお嬢様の率いる生産パーティーでございました。

 戦闘よりも生産に向いた召喚者が集まり、戦闘力の向上のためにパーティーを作っていたのが、このパーティーでございます。

 城内の武官たちは、お嬢様をお止めになりました。

 死ににいくようなものである、と。

 しかしお嬢様は、はっきりとした声で、言い返しなさったのでございます。

「じゃああたしたちに指をくわえて死ぬのを待っていろっていうの?」

 その言葉は、私たちの目を醒ますのに十分な力を持っておりました。

 知らず知らず、私たちは勇者に頼り、自らの力を退化させていたのでございます。

 その言葉は、武官たちの心をも揺さぶったようでございました。

「総員配置につけっ! 相手は悪魔のペットである! 何が起こるかわからん! 最大級の警戒を以て事に当たれっ!!」

「「「「はっっ!!!」」」」

 兵士たちの声が城内に響き渡り、活気が城の中を支配してゆきます。

 お嬢様の言葉ひとつで、兵士たちのモチベーションは振り切ってしまったのでございます。

 今思い出しても、鳥肌の立つカリスマでございました。

 こうして、ベヒーモスを迎え撃つ戦力を整え、万全の状態で、ベヒーモスと対峙することとなったのでございます。

 さて、ベヒーモスの偉容は、1km先からでも見ることができました。

 ベヒーモスの体躯は、それほど大きなものだったのでございます。

「う~ん... どうしたら勝てるかなぁ......」

 お嬢様は、ベヒーモス撃退の策を、色々と考えておるようでございました。

「大丈夫かよ?」

 軽い雰囲気を漂わせながら、この一件で『魔術王』に封ぜられることとなる風祭司様がお嬢様に話しかけます。

「なかなか勝ちの目は薄そうだなぁ? まぁ、でっかい化けモンはそれだけで驚異になりうるからなぁ」

 金髪を日の光で輝かせながら、司様の細い目がベヒーモスを射抜きます。

「この距離じゃいくら私が射てもたいしたダメージは与えられないよ?」

 生産パーティーの弓使いであり、弓の達者である野沢藤伊様がおっしゃいます。

 どうやら距離が大きい上に相手の毛皮が厚いため、どう頑張ってもダメージを与えることは難しいようでございます。

「う~ん...」

 刻一刻と驚異が迫ってくるなか、お嬢様は必死で考えを巡らせておりました。

「あらら~、めっちゃんこ大変そうなのが来てんじゃァないのよ。な~んでまたあんな化けモンがこんなところへ」

 緊張感のない声が、重苦しい雰囲気を突き抜けて伝わってまいりました。

 声の主は狩野竜雅様。『智慧の王』様にございます。

「たつくん!」

 突破口を見つけたようすで、お嬢様の雰囲気が明るくなりました。

「たつくんのリアクターって他人にも装備させること出来たよね!」

「あぁ~? うーん、本人が耐えられるなら、付けることも可能だけっども?」

「あたしと司、燐、それからたつくん自身にかけて!」

「うーん... まいいか、オッケーわかった。そうだな、五分... いや三分堪えろ。したら戦争用のリアクター準備してやる」

「期待してるよ!」

 そのような会話が、繰り広げられたのでございます。

 ただいまの会話のリアクターとは、竜雅様が開発した魔力増幅術式のことでございまして、確かにこの状況ならリアクターを用いた大火力攻撃で一気に殲滅するのが、もっとも有用な戦術のように思われます。

 魔術師と大砲、弓兵を用いた時間稼ぎが始まりました。

 お嬢様などの強力な攻撃を放てるものは魔力の消費を押さえ、リアクター実装後の攻撃のイメージを固めてゆきます。

 その他の遠距離攻撃手段を持つものは、足止めを目的として、総出でベヒーモスを狙いました。

 火の槍や雷の矢、黒い魔力の円盤などが宙を舞い、次々とベヒーモスの体を切り裂いてゆきます。

 しかしベヒーモスは、速度を緩めこそすれ、止まることや引き返すことをいたしませんでした。

 焦る城兵。

 魔法の勢いがさらに強くなります。

 しかしとうとう、ベヒーモスとの距離が、あと500mを切ってしまいました。

 もはや魔法では対処しきれません。掃射をやめ、地上の兵士たちが槍を突き込み始めました。

 『焔術師』の異名を持つ生産パーティーの黒木燐様が、焔の魔術を併用して身の丈ほどもの大きさを持つ青竜刀でベヒーモスの前足を切りつけます。反対の足元では『魔術王』司様が、大剣を用いて同じことをなさっておりました。

 しかしベヒーモスは止まりません。

 もうダメだ

 誰もがそう思ったその時でございました。

「“往ぬるが良い、邪悪なる悪魔の獣よ。勇士は神に救いを求める。とくとく願いを叶え給へ!”」

 力強い詠唱が、響き渡りました。

 ベヒーモスの正面、城壁の上で、お嬢様が、見てわかるほど濃密な淡桜色のオーラを纏って、詠唱をしていたのでございます。

「“邪悪なる獣は民草を蹂躙しようと駆け回る。勇士は刀を折られたりけり”」

 その隣には、蒼白いオーラを纏った竜雅様が、両手に自身の作った“自動拳銃”という魔具(オーパーツ)を構えておりました。

「“しかし勇士の心は折れず。その覚悟を刃と為し、邪悪なる獣を屠ることを望む!”」

 次の瞬間、その銃口から魔力の塊が打ち出され、過たず前線の風祭様、黒木様を撃ち抜きます。

 あっと思った瞬間、黒木様からは深紅のオーラが、風祭様からは黄色のオーラが、それぞれ吹き出しました。

 あの魔力の塊こそが、リアクターの引き金であったようでございました。

「“とくとく勇士の願いを聞き届けよ! 汝が民の願いなりけり!”」

 そこからは逆転したワンサイドゲームでございました。

 魔力で強化された斬撃がベヒーモスの足を切り裂き、銃口から放たれる魔力の塊がベヒーモスの魔力をガリガリと削ってゆきます。

 そして止めは、周到に用意をしたお嬢様の魔法でございました。

「“FOREST MAGIC.Second form.《向敵葵(Himawari)》”」

 人の顔よりも大きな向日葵の花が城壁からいくつも現れ、竜雅様のオーパーツである“機関銃マシンガン”よろしくその種が一斉掃射されました。

 ものすごい音があたりにこだまし、ベヒーモスの体を粉塵が覆ってゆきます。

 一斉掃射が終わって粉塵が晴れると、ベヒーモスは、自慢の毛皮をボロボロにして、静かにこと切れておりました。

「「「うおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」」」

 勝鬨があたりに響き渡りました。

「勝った! 勝ったぞ!!」

「ベヒーモスを退けた!!」

 勝つ見込みさえなかった相手に勝てたのですから、兵士たちの喜びもひとしおでしたでしょう。

 後の世に伝説と語り継がれるベヒーモス討伐は、このような顛末であったのでございます。

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