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紅戦記  作者: 竜堂 酔仙
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 ご協力いただけることになったその日から、勇者様がたの訓練は開始されることとなりました。

 何よりもご本人たちから、訓練の開始は早いうちが良いだろうと提案があったのが決定的でございましたな。

 かくいう私は、その日から、勇者様がたに魔法を教える立場となりました。

 私が講堂へ入ると、約半数の召喚者の方々が椅子に座っておいででした。

 その中には、お嬢様や、竜雅様の姿もございました。

 私は訓練を開始する前に、自己紹介から始めることといたしました。

「皆様に魔法をお教えいたします、バルマーと申す執事でございます。よろしくお願いいたします」

 そうして私は、授業を開始いたしました。

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 やはり異世界人とはいえ、スーパーマンなどというわけではないようでございましたなぁ。

 普通の人間よりは習熟速度は早いですが、平均すればこの世界の天才と呼ばれる人々の方が、そのスピードは早いでしょう。

 しかし、習熟スピードが異常な方々もおりました。

 お嬢様や、竜雅様、そして、のちのち『風化の王』と呼ばれることとなる加藤麻里様でございます。

 狩野竜雅様、白河桜様、橘伊周様、加藤麻里様、そして野牛宗則様の五名は召喚者のなかでも別格で、召喚された時にシュメール女神様の加護で、神のみぞ行使できる魔法《概念(CONCEPT)魔法( MAGIC)》を与えられていたため、当然と言えば当然の結果にございましょう。

 伊周様と宗則様も、既に実戦訓練に身を投じているというのですから、全く驚いた話でございます。

 さてその頃、このようことがございました。

 お嬢様は、魔法の訓練をなさっておいででございました。

 《特殊(UNIQUE)魔法( MAGIC)樹林(FOREST)》をお持ちでありましたので、その能力を確認なさっていたのでございます。

 私が何とはなしにその手元を眺めていると、そこにちらりと、金色の光が閃いたのでございます。

 私は目を疑いました。

 金の光を放つ魔法など、そうそうこの世には存在いたしません。強いていうならば、女神が作った黄金の居城、あるいは天国の物質の召喚くらいでありましょうか。それにしても神代の時代ならいざ知らず、現代魔術では到底不可能な芸当でございます。

 しかし、お嬢様の手元には、ちらちらと金の光が瞬くのでございます。

 あのときの気分をどのような言葉に託したらよいのか、私にはとんと見当がつきません。

 恐怖というものではありませんでした。

 憧憬というのもまた違います。

 なんとも言えない感情が私を支配し、体を硬直させておりました。

 さらに見ていると、だんだんとひらめく光が大きくなり、だんだんととある形を持ち始めたのが見てとれます。

 そして直後、私は驚き、そしておののくこととなりました。

 なんとそれは、金色に輝く一房ひとふさの樹の枝であったのでございます。

「お嬢様っっっ!!」

 知らず、私は叫んでしまっておりました。

「あれ? じい? そんなに慌ててどうしたの?」

 枝をふりふり、お嬢様が私にお尋ねになります。

「それはなんでございますか?」

「あ~、これはねぇ、見えないんだけど、大気に枝を伸ばしてた大樹。想像もできないくらいおっきいよ~この樹」

 私はその言葉を聞いて、確信いたしました。

 お嬢様の《樹林(FOREST)魔法( MAGIC)》は、ただ植物を召喚し武器化するだけのものではなかったのでございます。

 植物に類するものを隷属させる、とてつもなく強力な魔法でございました。

 お嬢様がお持ちになっていた枝。あれは、《世界樹》の枝の一房だったのでございます。

 お嬢様の魔法は、この世界の外側にまで干渉する、とてつもなく強力なものでございました。

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