表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter7:終わる凪(なぎ)来る禍(まが)
520/644

あたしを信頼してほしいし

フラリアーノが様子をうかがっていると何と空のゴーレムが体からジェット噴射のように大気を吹き出し始めた。


そして徐々に浮上していく。あれだけ大きいのに飛ぼうというのだ。


かなりの高度まで上昇すると空気砲を地上へ向けて発射しだした。


これは非常に強力で大地をえぐった。進行方向にはダッザニアがある。


「くっ!! 予想はしていましたが、想像以上の完成度ですね!!」


彼はキュッとネクタイを締め直した。


レイシェルハウト達が無力化したはずの陸のゴーレムはそれで終わらなかった。


右手をペタペタとくっつけたのである。どうやら粘土質な一面も持っているらしい。


そして器用に左腕の木のトゲのようなカンザシを引き抜いて束縛そくばくを解いた


こうなると切断はあまり有効でないように思えた。


木っ端微塵ぱみじんにでもしない限りは再び立ち上がるだろう。


今度は体の向きを変えて頭を探し出した。


だが、パルフィーは速かった。


「させるかよ!! こんにゃろ!!」


彼女は走り出した後、強烈なキックで陸の頭をシュートした。


決して小さくも軽くもなかったが、パルフィーの馬鹿力ならなんとかなった。


「空の奴に当ててやる!! おっっちろ~~~~!!!!!!」


渾身こんしんのシュートは移動を始めた空のゴーレムに直撃した。


ゴイ~ンと鈍い音が響いた。同時に陸の頭は空の体にひっついた。


「くっそ~!! 手応えなしか!!」


別の場所でフラリアーノは彼女をめた。


「いえ、攻撃が止まりました!! 上出来です!! プランティング・グリ―ン!! サモン・メレオーレ!!」


教授の右腕をカメレオンタイプの幻魔がつつむ。


「射出ッ!!」


するとその幻魔は舌を伸ばして空のゴーレムにピタッっとくっついた。


「巻取りッ!!」


すると物凄い勢いでフラリアーノはAirエアとの距離を詰めた。


「フラリアーノ先生――――――ッ!!!!」


「さぁ、ここからどうするおつもりでして!?」


アシェリィもレイシェルハウトも息をんだ。


敵にぶら下がった教授は暴風にあおられていた。


Airエアの構成要素の中にはガスが多く含まれている。ゆえに全力で可燃性の幻魔をぶつければ爆散させることが可能!! しかし、全力で打ち込まねばならないために防御や回避は不可能!! こちらも全くの無傷というわけにはいきませんね。しかしこのままではダッザニアが!! バレン先生は死を覚悟しておられた。皆にああ言いつつ、私もいよいよその時が来たのかもしれませんね)


そうこうしているうちに空のゴーレムはダッザニアの街へ空気砲を打ち出しながら接近していく。


フラリアーノは空いている方の左手を上に突き出して炎の幻魔をんだ。


「今です!! イービル・ローゼン・レッド!! サモン!! ブレーズ・テンタクラァ!!」


無数の真っ赤な触覚が燃える炎のようにAirエアあぶった。


それから間もなくして、空のゴーレムは大爆発を起こした。


「チュドーーーーーーーーーム!!!!!」


ギリギリでダッザニアには被害が及ばなかった。


だが、あまりの炎と衝撃でフラリアーノの生存は絶望視された。


「先生!! 先生!! 答えてくださいよ!! 先生――――ッ!!!!!」


アシェリィが通信ジェムに叫んだが反応はなかった。


「ハーヴィー先輩!! どうして……どうしてこんな事をするんですか!! 私達が戦う理由なんてあるんですか!?」


どこに居るともわからない彼女にアシェリィは問いかけた。


辺りに響くようにハーヴィーの声がする。


「とんだアマちゃんね。あなたみたいな能天気のうてんきのガキ共にはわからないでしょう。血縁者が氷漬こおりづけにされてもてあそばばれている気持ちを。そしてそのかたきが目の前にいるというのよ!! アシェリィ、ラヴィーゼ、リコット。たとえあなた達でもウルラディールをかばうなら躊躇ちゅうちょなく殺すわ。逃げるなら今のうちよ」


必死に少女は訴えかけた。


「先輩!! 冗談ですよね!? 冗談だって言ってくださいよーーー!!!!」


その直後、地面からゲル状の拳が出てきてアシェリィをつかんだ。


「ええい!! うるさいッ!! やかましいお前は真っ先に死ねッ!!」


にぎつぶされるかと思ったときだった。


命の危機に反射的に氷のフォルム、アイシクルールが発動した。


彼女をつかんでいた拳は冷気でひるんだ。


「アシェリィ!! 急ぐし!! 雷の幻魔を!!」


リコットがそう叫んだ。


波立つ白髪のアシェリィはサモナーズ・ブックをノックした。


「サモン!! エレキトリカル・ライトイエロー!! サモン!! フェンルゥ!!」


熱帯魚のような姿をして電撃を放つ幻魔げんまが現れた。


「いくし!! 妖憑(フェアリー・ポゼッション!!) フェンルゥ!!」


リコットはアシェリィの幻魔を憑依ひょういさせた。


すると髪の毛が黄色に変化してバチバチとさかだった。


「海……つまり水のゴーレムなら雷も効くはずだし!! 地下にもぐったなら地面めがけてブチ込んでやるし!! 最大出力なら地面ごと通電するし!! く~ら~え~~~~!!!!!!!」


幻魔げんま憑依ひょういさせた少女の片腕はまばゆく輝いた。


「ジリジリ…バチバチバチッ」


直視できないほど電光がスパークしている。


そしてチャージを終えると右腕を地面に突っ込んだ。


かたきをうつのはあんただけじゃねーし!! これはフラリアーノ先生のかたき!! せやああぁ!!!!!」


彼女は攻撃を打ち込むと同時に泣いていた。


海のゴーレムはたまらなくなって地中から球体になってポーンと飛び出した。


ダメージを受けたからか、大きさが半分程度になっていた。


だが、すぐに首を大地につっこんで水を吸い始めた。見る見るサイズが元に戻っていく。


ラヴィーゼはなんとも言えない顔で不死者を召喚した。


「う~ん、まさかコイツがここで役に立つとは思わなかったなぁ。サモン!! ブラック・ロッテン!! ドザえもん!!」


ガリガリにやせ細ったゾンビがSEaの体内に出現した。


ゾンビはぐんぐんと水を吸い取って水死体のように変化していった。


「きもちわる~わる~」


リコットは嫌悪感をあらわにした。


だが、この幻魔げんまのおかげで巨大化を防ぐことが出来た。


「まだだね。コイツは吸い込んだ水分をエネルギーに変換できる!! 爆破!!」


ドザえもんはエネルギーを暴発させて海のゴーレムをふっとばした。


思ったよりこれが強烈で、SEaは原型をとどめられなくなって液体と化した。


だが、しぶとく相手は大地に染み込んで再生を試みはじめた。


兵器としての完成度が非常に高い。これならば際限さいげんなく水分がある海では手がつけられないだろう。


フラリアーノに並ぶ覚悟がないと撃破できそうになかった。


「しかたねぇし、あたしがやるし」


リコットがずいっと前に出た。


「アシェリィもラヴィも炎の幻魔が使えないし。するとあたししか残ってねーし。もう一回、なんとかして地中から引きずり出すし。そして液状になったら炎属性の幻魔で一気に蒸発させるし!!」


ラヴィーゼが怪訝けげんな顔をして声をかけた。


「おい!! リコット……お前もしかして敵もろとも……」


ピンク髪の少女は笑みを浮かべていた。


「アシェリィ、ラヴィ。あたしはあんたたちと過ごせて本当に楽しかったし。それまではずっと1人だったし。そんな中、こんなに仲良くしてもらって……。あんたらを生かすためならこの生命いのちしくはねーし!!」


アシェリィは腕を振り抜いた。


「ダメだよ!! そんなの許さない!! リコットが死んじゃったらわたし……私!!」


リコットは首を左右に振った。


「ただで済むとは思えないし。でも、実際のところやってみね~とわかんねぇし。だからあたしを信頼してほしいし。誰かが待っててくれるならきっと生きて帰ってこれる……そう思うし」


アシェリィは黙ったままフェンルゥを地面に潜り込ませた。


再び通電するとそれがたまらないらしく、SEaがまたもや地中から飛び出してきた。


ラヴィーゼが気合を入れる。


「行くぞ!! サモン・パープル・ワイト!! スケルトン百烈斬ひゃくれつぎり!!」


魔力を帯びた骸骨の剣士たちが大地から沸き上がってきた。


そして飛び出してきた球体のゴーレムをめった切りにした。


「今だし!! アシェリィ、ラヴィ、離れるし!! この生命いのち今こそかけるべし!! 炎天の魔神!! ヘルファイア・レッズ!! すべてを灰燼かいじんと化せーーーーッ!!!!」


リコットが召喚すると小さな太陽のような幻魔が現れた。


つぶらな目がついていてキョロキョロしている。


人畜無害じんちくむがいなのではと思われた直後だった。


それは周囲の大気を巻き上げて一気に大爆発を起こしたのである。


あまりにも激しい炎上に誰も近づけなかった。


「リコット!! リコットォーーーーーー!!!!」


助けに入ろうとするアシェリィをラヴィーゼが抱えて止めた。


「バッカ!! あんなのに近づいたらまっ黒焦くろこげだぞ!! リコットがどういういう気持ちであれをんだのかわかってやれ!!」


こうして海は跡形あとかたもなく蒸発した。残るは陸だけである。


一方のウルラディールは手慣れたものだった。


「パルフィーは衝撃や貫通するような攻撃を繰り返して!! 相手をアナボコだらけにするわ!! サユキはこまめに相手の動きを封じて妨害ぼうがい!! スキが出来れば私と連携して属性アタッチメントで攻撃!! 私も攻撃魔法でしかけるわ!! いきますわよ!!」


け声と同時にパルフィーがジャンプした。鳥よりも速い。


そのまま、Landに接近していって蹴りを放った。


「うらぁ!!」


ゴーレムの胸に風穴が空いた。


それを見ていたレイシェルハウトはある事を思い出した。


「たしか、術者はゴーレムの体内を自由に移動していると言っていたわね。しかし、肝心のゴーレムはもう1体しかいない。つまり、この陸のゴーレムをはちの巣にすれば中の術者は……」


すぐに彼女は抜刀してヴァッセの宝剣を突き出すように構えた。


「パルフィー!! かわしなさい!! 鉛海えんかい襲砂しゅうさ!! レッド・シー・パニックサンズ!!」


レイシェルハウトから無数の球体が発射された。


陸のゴーレムの逃げ場が無いくらいに全身にブチ込んでいく。


相手は沈黙したように見えた。


「やった!?」


アシェリィ達とウルウラディールの班達はLandを見上げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ