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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter7:終わる凪(なぎ)来る禍(まが)
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ラストチャンス!! 恋の季節がやってくる!!

フォリオは特にいつもと変わりなくナッガンクラスのドアを開いた。


すると、いきなりクラッカーの雨に降られた。


「え……あ……。これ……は?」


どうやらクラスメイトたちが大会での優勝を祝福してくれているらしい。


ナッガン教授まで拍手はくしゅを送っているではないか。


これには思わず恥ずかしくなってフォリオは後頭部をいた。


「えへ……えへへ。みんな、ありがとうございます」


その直後、気色の悪い吸盤きゅうばんが首にまとわりついてきた。


この感触はタコの亜人であるニュルしかいない。


「俺よぉ!! もう感動しちまってしちまってよぉ!! 涙がとまんねぇんだ!!」


それを見ていたクラティスがあきれたように声をかけた。


「おい、ニュル。なんであんたが泣いてんだよ……」


フォリオはクラスをながめながらクラスメイトのことをぼんやりと考えた。


ナッガンクラスは良くも悪くも4年前と変わらない。


ああ、でもちょっとクサいけどきずなふかまったかもしれないな。


他にも細かな変化とかはあったりもするけど、みんな相変わらずって感じ。


まずは僕らの班。やっぱり異性として気になってしまうリーダーのアシェリィ。


18歳になった彼女はちょっと大人の魅力みたいなものが出てきた気がする。


男連中はペチャパイとか言うけどスラッっと伸びたスタイル自体はいいし、顔も美人なのはみんなが認めるところだ。


転婆てんばも多少、鳴りををひそめて安定感というか、落ち着いた感が出てきたと思う。


それでも冒険はやめられないらしい。個人的には無茶してほしくないんだけどなぁ。


肝心の彼氏はいないって女子筋から聞いてる。もし居たりしたら悶絶もんぜつモノだ。


次にノワレさん。特に理由があるわけでもないけど、未だに彼女には頭が上がらない。


いや、でも声をかけてくれるようになっただけいくらかマシになったのかもしれないけど。


だから今回、素直にお祝いしてくれたことにはかなり驚いてる。


う~ん、シャルノワーレさんの中での僕の扱いがよくわからないよ。


彼女も美人さんだからクラスの男子に人気だね。でも美しい華にはトゲがあるっていうし。


それに体型はアシェリィと似てるから胸は……。


おっといけない。失礼だな。でもこればかりは男子のさがというか。


彼女にも彼氏は居ないらしい。最初の頃の高飛車たかびしゃな印象が強すぎるんだと思う。


僕が思うに前ほどキツくはないと思うんだけど。


次はイクセントくん。入学したときとは大して僕と背丈が変わらなかったはずなんだけど。


今はこんなにも僕のほうが高くなっちゃった。


しかも彼は声変わりもしてない。14歳組の早生まれだったとしても16歳にはなってるはずなんだけど。


う~ん、まだ成長期じゃないのかもしれないね。浮いた話も全く聞かないし。


彼に関してはノワレさん以上に接しにくい。


必要最低限のことしかしゃべらないから、彼が何を考えているのかまったくわからないんだよね。


これは別に僕だけじゃなくてクラスメイト、リーダーのアシェリィにさえほとんど話しかけないんだ。


仲良くなれるものならなってみたい気もするけど……やっぱ威圧感あるよ。


そして我がクラスの兄貴分のジュリス先輩。


先輩は本当にいい人で、僕をはげまし続けてくれたうちの1人だ。


彼なくして今日の僕は無いと言えるくらいかな。


カブトムシザリガニに変形していた時の年齢換算ねんれいかんさん曖昧あいまいだけど、とりあえず初等科エレメンタリィ解散と同時に教員課程に進むらしい。


今は23歳とかそれくらいなんじゃないかな? そう考えるとほとんど遅れはないことになるけど。


まぁ先輩のことだから年齢くらいであれこれ迷わないとは思うけどね。


セミメンターでお世話になったラーシェさんとお付き合いしているらしい。


大人のカップルって感じで少しあこがれたりもするかな。


2班のリーダーの百虎丸びゃっこまるさん。年齢は25歳で最年長だね。


でもその可愛らしいネコ顔にウサギ耳から子供っぽい扱いを受けていることがしばしばあるかな。


特に女子につっつかれてると本当に小動物みたいだけど、本人は貫禄かんろくの無さを気にしてるみたい。


女子に囲まれてるからうらやましがられると思いきや、つっつかれてるだけだからそーでもないみたい。


それはそれで気の毒だなぁ……。でも僕からするといい大人って感じがして頼りがいがあるんだけどなぁ。


やっぱ見た目があれだとね~。モフモフで可愛いとしか思えないよ。


恋愛対象にもなってないみたい。


同じ班のミラニャンさん。


彼女はずっと体型のことを気にしているけど、結局、4年間の間に体型がちょいぽちゃから変わることがなかった。


太る太るって本人はいっつも気にしてたけど、むしろ彼女の作るスイーツで他のクラスメイトを太らせてきたと思う。


そういう意味ではかなり罪づくりだよなぁ。


マナを回復できる魔術は割と珍しくてあちこちで引っ張りだこみたい。


確かに味方にいるとすごく心強い魔術と言えるね。


彼女はどちらかといえば可愛い系で通ってるかな。


いまのところ彼氏はいないみたいだけど、誰か告白しそうではあるね。


同じく百虎丸びゃっこまるさんの班のカルナさん。


彼女は特に恋愛面でのトラブルメーカーであちこちらであおって騒ぎ続けてきたはた迷惑な人だ。


ヴェーゼスさんが毎度ブレーキをかけてるんだけど、彼女が居なかったらどうなっていることやら。


そんなカルナさんなんだけど、いまさら自分が恋愛できてないことに気づいたらしくてあせっているらしい。


う~ん、こればっかりは自業自得じごうじとくというか。


自分はそっちのけで他の人にばかりちょっかい出してきたんだからしょうがないよね。


なんかテキトーに相手を見つけてテキトーに告白しそうだなぁ……。


いつもカルナとつるんでるのはヴェーゼスさん。好きでつるんでるわけじゃないみたいだけど。


僕は彼女も異性として大好き……じゃなくて、なくて!!


いつもうっかりしちゃうけど、彼女は魅惑魔法チャーム・スペルの使い手なんだった。


いつの間にか魅了みりょうされてしまうという恐ろしい魔術だよ。


女性も落としにかかってくるからたちが悪い。本人に悪気はないみたいだけどね。


でも恋愛の魔術を極めているだけあってその恋愛遍歴れんあいへんれきすさまじいらしい。


ってカルナさんは言うんだけど、ヴェーゼスさんは否定するんだよなぁ。


実際、どうなのかはわからないな。


そしてレールレールさん。


あまり口数は多くないけど、独特なしゃべり方だから印象に残るね。


確かトーベからの留学生でレールレールってのは鉱山で働いてたときにつけられたあだ名らしい。


クラスの中では苦労人の部類に入るんじゃないかな。


今も、出身の孤児院こじいんに寄付しているらしいし、ちょっと変わり者だけど人間のかがみだと思う。


孤児院を訪ねたキーモさんが言ってたけど、彼には許嫁いいなずけがいるって聞いたな。


でもレールさん本人は否定してるんだよ。これもよくわかんないんだよなぁ……。


3班のリーダーはスララさん。


彼女も美人でグラマーな感じなんだけど、悪魔憑あくまつきだけあって恋愛対象にはならないみたい。


いくらスララさんが好きだったとしてもセットでついてくる悪魔とお付き合いってのは厳しいものがあるからね。


不気味なしゃべり声以外は至って普通の女の子だし、人畜無害じんちくむがいなんだけど。


だから時々、口説かれたりもするんだけど口をパカッっと開くと”中身”が見えちゃうんだよね。


もちろん隠すことも出来るらしいけど……。


う~ん、彼女には幸せになってほしいなぁ。いや、僕は遠慮しとくけど。


同じく彼女の班のクラティスさん。


彼女は学ランを着て応援団長やってるだけあって男女問わずにモテるね。


この”恋の季節”で注目を浴びるうちの1人さ。


多分、男子より女子にモテるんじゃないかな。


どっちでもOKって聞いたことがあるから女の子でも気に入った娘がいれば告白に応じると思う。


でも積極的なクラティスのことだから、攻めに回る可能性も高いな。


もしかしてクラス内に意中の人が居たりして。


同じ班のドクさんはこれまた変わり者で……。


いっつもニコニコしていて、見た目は悪くないんだけどマッドサイエンティストっぽいというかなんというか……。


新しい薬を自分で注射してたりもするし。


いい人だし、嫌いじゃないんだけど、人から恋愛対象として見られるかって言うと厳しいものがあるというか。


ああ、上手く言えないけどドクさんごめんなさい……。


同じくスララさんの班のポーゼくん。


彼は僕と同じくちびっこだったんだけど、今は同じくらいの身長になりました。


声変わりもして立派な青年って感じだね。


彼は無口だけど男前なので隠れファンが多そう。恋の季節も期待できると思う。


1年の頃はほとんど話してくれなかったけど、心を開けばしゃべってくれるタイプかな。


無口というか人見知り気味なだけなのかもしれないね。クラスメイトとは普通にやりとりしてるし。


そして、今回のシーズンで一番といってもいいくらい注目を集めているのはレーネさんだ。


レーネさんがというより、彼女を好きなガンくんとの関係が注目されてる。


っていうか結局、ガンくんは4年間も彼女との関係を進展させられなかったことになる。


運良くレーネさんに彼氏ができていないからよかったものの、これで誰か彼氏ができたら目も当てられない。


男子連中からは根性なしとなじられ、しまいには女子にまでも愛想あいそをつかされつつある。


そんな彼に、いや、僕らに残されたラストチャンス……それが迫りつつあるんだ。


って、ガンくんのことだ。どうせまた無理だろうなぁ。


人の心配をしてる場合じゃないけど、この恋の行くすえは気になってしまうよ。


やっぱせまいクラスだと大抵の事情はわかってしまうもんなんだな。


僕はクラスメイトの半分くらいの恋愛事情を確認しつつ、残りの人に目をやった。


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