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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter1:群青の群像
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お食事、ご宴会のご用命は八ツ釜亭まで!

ファイセルは大衆食堂、八ツ釜亭やつがまていに到着した。


ここはルーネス通りが出来たころから存在していたといわれる飲食店だ。


創業時から続く秘伝のスープやダシを8つの巨大な釜で常に煮ているところから名前がついた。


学院に近い場所にあり、料理もお手軽な値段である。


だから学院生御用達の飲食店で、打ち上げや宴会に使われることも多い。


椅子イスの席だけでなく床張りの部屋もいくつか完備している二階建ての非常に大きな店だ。


今日は休暇入りたてという事もあり、ここも学生たちで盛り上がっていた。


ハつ釜亭かまていの入り口には既にチームメイト3人が集まっていたが、これで全員ではない。


「お~い、ファイセル君、ここここ!!」


手を降って金髪のポニーテールを揺らして元気に声をかけてきたのはラーシェ。


天真爛漫てんしんらんまんを地で行く性格でチームのムードメイカーだ。


正義感が強く、女子には珍しい熱血な性格で悪は黙って見過ごさないが座右のめいらしい。


やや血の気が濃いけど女子らしいところは女子らしく、スタイルもいい。


だから男女問わずクラス内の誰にもしたわれるタイプだ。。


そのため、ファイセルは未だに優柔不断気味な自分より、ラーシェのほうがリーダーに向いているのではないかとしばしば思っていた。


専攻は肉体強化フィジカル・エンチャントで、魔術で自身を強化した肉弾戦を得意とする。


パワーと俊敏性しゅんびんせいには定評があり、特に素手での白刃取しらはどりからの武器破壊が得意だ。


手加減を知らず、何本もの武器を壊しているので、裏では小悪魔として恐れられている。


正直、小悪魔どころではないとリーダーは思っている。


けど試合後に必ず「ゴメンね!」と笑顔でフォローを入れられると壊された側も何も言えなくなるとのこと。


武器の使い手からは歓迎されていないが、武器を修復したりする専攻の生徒からは『ラーシェに折られない武器』を作るのは1つの目標とされている。


「よう、珍しくちょっと遅かったじゃねぇか」


ガシッと肩をつかまれて振り返るとチーム内もう一人の男子のザティスが来ていた。


背が高く180cm越えの長身でダークブラウンの髪色をしている。


服装は着古きふるした魔法使いのローブを荒っぽく着こなしていた。


やや顔立ちが濃く、のっぽでひょろっとしていてアウトローな雰囲気を持つ青年だ。


3年留年しており、同級生と言うよりは兄貴分である。


中~遠距離の魔術に憧れて学院に入ったのだが接近戦しか使いこなせずにそのまま意地を張って3留したという苦労人だ。


かつては酒にハマり飲んでは酒場でケンカを売り売られるという荒んだ毎日を送っていた。


最初は負けてばかりでボコボコにされ、有り金を巻き上げられるなどのひどい目にあっていたという。


だけど、ケンカを繰り返していくうちに自分に適した戦い方を悟ったらしい。


そして学科を変えてそれ以来、ストリートファイトでは負け知らずで留年もしていない。


今は闘技場コロシアムに活躍の場を移している。


そして次に合流したのが午前中に一緒にビンを買うのを手伝ってくれたリーリンカ。

 

スタイルにほとんど凹凸おうとつがなく、クラスの男子には見向きもされないタイプである。


でも噂によるとその瓶底眼鏡びんぞこめがねを外すと素顔はとても美人らしい。


ファイセルとしては眉唾まゆつばモノではないかと思っている。


美しい青色の長髪の持ち主で、後ろ姿を見ただけでリーリンカとわかるほどだ。


チームの女子の中ではもっとも髪が長い。


女子らしくない可愛げのない喋り方で、一見して無愛想ぶあいそうに見える。


でも話してみると中々人懐っこく、チームメイトからは可愛がられている。


女子の中では性別を意識することなく気軽に話しかけられる親友であり、チーム内で男子と女子とのけ橋になっている一面もある。


彼女はなんだかんだで色々とファイセルに押しつけてくるので、それなりに頼りにされているようではある。


専攻は魔法薬学で固形薬物もある程度は生成できる。


でも、主に液状の薬に魔力を込めて魔法薬を生成するのが得意だ。


マヒや毒などを引き起こす奇襲攻撃から、飲み薬や塗り薬として使い、傷を癒したりマナを回復できたりする便利な技術である。


チーム内では唯一、貧しい東部の出身で学費などはほとんど奨学金に頼っている。


もっとも特待生に選ばれているから、払わねばいけない金額はあまり高くないようだが。


学院は貧しくとも、留学生であっても、亜人であっても受け入れるというふところの深いところだ。


だから、国内外から受験生が大挙し、倍率の高騰に拍車をかけている。


「またアイネは遅刻か~。本当にマイペースなんだから……」


 ラーシェはやれやれといった感じで肩をすくめた。


まだ残り1人のメンバーが到着していない。


しばらく待っていると人の波にもまれるようにしながら、グラマーなスタイルスタイルの女性がこちらにやってきた。


「皆さんこんばんは~」


この遅刻しても何食わぬ顔をしているマイペースな女性はアイネ。


セミロングで毛先のウェーブがかった明るい栗色の髪をしている。


おしとやかで優しく、俗にいう癒し系で彼女も男子に人気がある。


ラーシェに比べるとだいぶ落ち着いた印象があり、大して年齢差は無いのだがずいぶん大人びて見える。


でも、おっとりというか少し天然ボケな節があってほっておけない印象もある。


専攻は治癒術ヒーラーで傷を癒したり、病気の治療や毒の治療などができる。


かなり大けがをしたりした状態でも時間をかければ回復させることが可能だ。


回復だけでなく、アンデッド(不死者)への対策もいくつかあって、不死者アンデッドを相手にするときにも活躍できる。


生まれたときにに平和、協調と慈愛を尊ぶルーンティア教の洗礼を受けた敬虔けいけんなルーンティア教徒である。


だから不死者アンデッドに対する対処法は教会で幼い頃から学んでいるというわけだ。


しぶといアンデッドをあっさり無力化できるのは貴重な能力で、専門の呪文をもっている生徒はクラスでも数えるほどしかいない。


このラーシェとアイネはクラスでも5本の指に入る美少女で、男子の間ではこの二人の魅力が語られて派閥はばつができている。


この二人のおかげで我がチームの男子はチーム結成から4年経ってもクラス中の男子から羨望せんぼう眼差まなざしを向けられて、軽くやっかまれている。


そんな気はないのに……とファイセルは参っていた。


一緒にチーム活動しているといいとこ悪いとこが見えてくるので過度な憧れには賛同しかねるのだが。


これでもしチーム内恋愛にでも発展していれば血を見る事になるだろう。


2人が別チームの誰々に告白されたという話はしばしば聞くが、彼氏ができたという話を聞かないので、断っているんだろう。


5人揃ったのを確認して彼らは八ツ釜亭かまていへ入った。

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