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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter6:魔術謳歌
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クラス対抗戦 猛者達の祭典

大変な一年だったが、ようやく1学期の終わりがやってきた。


いや、まだ終わりではない。ここからなのだ。


というのも、このシーズンになると学院はクラス対抗のバトルの祭典「カーニバラー・バトレーエ」で盛り上がる。


盛り上がると言うか熱狂するという表現が近い。


それもそのはず、この大会は学院公認でけが行われているのだ。


もちろん、倍率の高い裏ルートのけも存在していてそれらが学院生達の心をより高ぶらせている。


リジャントブイルは1学年10クラスで1クラスあたり25人の生徒が所属している。


その250人の中からトップチームを決めようというのだ。


うでっぷしが物を言う学院では非常に栄誉えいよあるステータスとなる。


ちなみにかつてファイセルはリーリンカ、ザティス、アイネ、ラーシェのチームで総合2位まで上り詰めている。


ちなみにその時の担任はバレン先生だった。


彼からもクラスメイトからももみくちゃになるほど称賛しょうさんされ、ファイセルたちは未だにその活躍は語り草となっている。


バレン教授はやや厳しめの指導方針だったが、やはりスパルタ教育のほうが確実に結果を出す傾向にある。


スヴェイン教授みたいな人が担任だとそこまで到達できず、はなっから勝負をあきらめているクラスもいくつかある。


この大会に大穴が当たるというのはほとんど無く、辛い思いをした者だけが頂点に立てるとも言われている。


その点、ナッガンはバリバリ教え子をしごきまくっているので、今回のカーニバラー・バトレーエでも期待されていた。


予想候補では上位に上がり、ナッガンクラスに金銭をけた者も多い。


出場するのはクラス内の模擬戦で決定されたカークス……いや、ジオの率いるチームである。


ジオ、ニュル、田吾作、キーモ、はっぱちゃんの5名だ。


激戦をくぐり抜けてなんと準決勝までたどり着いてきた。


彼女らのクラスメイトはドキドキしながら観客席から開始前の戦場をながめていた。


アナウンサーの声がマギ・マイクを通じて入る。


「え~、ドガ先輩がのどつぶしてしまったので司会兼、解説は私、オートンがしま~す」


ちょっとコロシアムには合わないゆるふわ系だが、人気はあるらしい。


「え~とですねぇ。資料によりますとナッガン教授のチームはジオ、ニュル、田吾作、キーモ、はっぱちゃん選手。キルレーテ教授のチームはヴァレリィ、アーニィ、ノモス、ハンク・フォンク、そしてクールーン選手となりまぁす。予想通りスパルタ教師チーム同士のぶつかり合いとなりましたぁ。えっと、けのオッズは……2.8:3.1。ほぼ互角と言っていいですねぇ」


登場した選手を見てアシェリィは少し驚いた。


「あれ!? クールーン君、代表に選ばれてたんだ!!」


クールーンはフラリアーノの召喚サモニングクラスで一緒に学んでいる。


風の幻魔を得意としアトモスフィアラーの別名を持つ。


非常にイケメンだが、プライドが高いのが玉にキズだ。


互いに選手が並んで5人同士で見合った。


ほぼ初対面であるが、相手の魔術に関してはだいたい把握はあくしていた。


早い段階でその選手の能力は特定、研究、分析されて情報戦になる。


ときに選手の情報が外野に現金で取引されることもある。


それを元にして勝つ方を当てようというのだ。


もっとも、こういったことは普段の闘技場コロシアムでも珍しくない。


ただ、いくら情報がそろっていても、それが勝敗の当たり外れにに直結するわけでは無いのは言うまでもないことだが。


もう魔術が知れている前提でオートンはアナウンスしていく。


「まずはナッガンチームのリーダ!! 花火暴発暴走娘!! カークス・ジオちゃん~~~!!」


割れんばかりの声援があがる。


「歩く武器庫タコ!! 赤いハゲとは言わないで!! ニュル・ル・ドゥルル・ニュルくん~~~!!」


遠目からでもキレているのがわかった。


「素朴な見た目で意外とやり手!! 野菜エンハンサーの田吾作たごさくくん~~~!!」


団子だんごぱなで麦わら帽子の青年は恥ずかしげだ。


「見た目はキモヲタ!! ハートはピュアボーイ!! お菓子スナイパー!! キーモ・ウォタくん~~~!!」


彼も恥ずかしかったのか無造作に頭をかいた。


「なんにも言わないけど縁の下の力持ち!! はっぱちゃん~~~!!」


「………………………………………………」


彼女は反応するかのようにサラサラと葉っぱを揺らした。


「え~、対するはキルレートクラスの紹介で~す。リ^ダーは攻防一体のバリアを展開するヴァレリィ!!」


彼女は自信ありげにスタンドに手を振った。


猪突猛進ちょとつもうしん!! 一度くっついたら離れない~~~。ノモスくんです~~~!!」


筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の生徒は力ゴブを作ってみせた。


「往復ビンタでは右にでる者は居ない~~~!! ドMキラーのアーニィちゃんで~す!!」


彼女からは見てくれからして強気で勝ち気な感じがした。


「その歳23歳!! 勉強をやり直したくてやってきたハンク・フォンクくん!! 投げ縄が得意だそうで~す!!」


落ち着いた雰囲気で彼はカウボーイハットをかぶり直した。


「そして~。女子に大人気!! 召喚術サモニングの名手でアトモスフィアラーとも称されるクールーンくんで~~~す!!!」


彼は美しい銀髪をサラリとかきあげた。黄色い声援があがる。


「以上、5vs5で準決勝を始めま~す。戦闘要員が居なくなるまで試合は続きますん。当然、先に倒されたチームの負けで~す。逆に言うと手加減とか逃げ回ったりしても試合は終わらないので覚悟をきめてくださ~い。ただ、瀕死ひんしにはならないよう、致命傷ちめいしょうになりそうな場合はテレポートで退避させるOKKOオーバーキル・ノックアウト制を採用していま~す。遠慮なくやっちゃってね~」


どんどん会場の熱気は盛り上がっていくのでオートンは頃合いを見て試合を開始した。


「ステージは戦闘開始直後に発表します。も~、みんなヒートアップしすぎだよぉ。らしてないで早速さっそく開始にするね。じゃあいくよ~。レディ~~~~……ファイッ!!」


次の瞬間、ステージには大きな氷山がせり出した。


気温も一気にさがり、戦場は極寒の地と化した。


「あ~~~~。今回の試合のステージは氷山ですねぇ。低気温と足場の悪さが厄介でねす~~」


先にキルレートクラスのヴァレリィが動いた。


「みんな、退いて!! 私のバリアーなら冷気をシャットダウンできる!! まずは体勢を整えるよ!!」


彼女は迅速じんそくなな判断を下した。


一方のナッガンクラスのジオは実戦では使ったことのない方法をとった。


「みんな、密着して!! 至近距離で花火弾を打って、皆に炎属性を付与アタッチして冷気への耐性を作る!! そうすれば体がポカポカの状態で活動できる……はず」


思わずニュルはツッコミを入れた。


「おいおい。花火弾で属性付与エレメンタル・アタッチができるなんてきいてねーぞ? 大丈夫なんだろうな? こんな近くでおめぇの爆発を喰らったら全員OKKOオーバーキル・ノックアウトだぞ?」


だがもう田吾作もキーモもはっぱちゃんも腹をくくっていたようで、ここまでチームを勝利に導いてきたジオを信頼していた。


「ニュルもみんなも。大丈夫だって。実は試してみたことがあるんだよ。あたしが攻撃バカじゃないところ、見せてあげる」


それを聞いたニュルは1本の足で頭をいた。


「なんだよ。これじゃ俺だけジオを信用してねぇみてぇじゃねぇか。そんなこたねぇよ。いいから撃ち込んでこい。お前の花火、受け止めてやるよ」


ジオは笑いながら首を縦に振った。


すぐに手に魔力をチャージすると拳が赤く光りだした。


これには相手チームは少し戸惑とまどった。


「先手必勝の攻撃か? 全員、攻撃に備えて!!」


ヴァレリィが味方に声をかけて黄色いバリアーを展開した。


「ハート・ビート・ショット!! アゲンスト・フロスト!!」


術者の拳から5筋の小さな打ち上げ花火が発射された。


ジオ自身にも火球は飛んでいき、それぞれがターゲットの心臓に触れた。


すると不思議とジオたちは寒さを感じなくなっていた。


それどころか、暑くて戦いの闘志とうしいてきていた。


「おおおお!!!! こりゃすげぇ!!」

「体が燃えるように熱いでござる!!」

「おんら、なんかやる気出てきたど!!」

「…………………………………………」


一気にジオチームは臨戦態勢に入った。だが、うかつに突っ込んでいくのはリスクが高すぎる。


リーダーは気合の入った味方をなだめた。


「みんな!! チームワークチームワーク!! あたし達は決してそこまで強い術者の集まりじゃないんだから。足並みをそろえて対抗していこう!! じゃないと本来出るはずだった他の班に顔向けが立たないよ!!」


面々はチーム一丸いちがんとなることを再確認した。


一方の相手チームも寒さにこごえる一方ではなかった。


クールーンが名乗り出たのである。


「ここはボクが!! ブレッシング・テンパチャー!! サモン・スカイスーツ!! コルコ!!」


羽の生えた大きな妖精ようせいが現れて、羽ばたきの風を彼らに与えて消えていった。


するとヴァレリィがバリアを解除しても誰もダウンしなかった。


おそらく保温機能のある幻魔げんまだったのだろう。


「ヴァレリィ、ボクはキミの後ろについて援護する。常時バリアーを張っておいてくれ」


ハンク・フォルクも似たような事を言った。


「……俺も奴らの射程外から狙わせてもらう。バリアー、頼んだからな」


それを聞いていたヴァレリィは勝算ありげに了解した。


「わかった。いつものフォーメーションで行こう。ノモスは前衛、アーニィは中衛、私とハンクとクールーンは後衛!! さあ、私のご自慢じまんのバリアー相手にどこまでやれるかな? 花火弾で吹っ飛ばせるかな?」


結構いろいろな面で不利な感があるが、それでもジオチームには作戦立案の柔軟さがある。


戦いの勝敗は互いのリーダーで決まる。そんな予感がした。


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