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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter6:魔術謳歌
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校長はオゴるけど、お酒は飲めません

今日は久しぶりにリジャントブイルの教師陣で飲み会が開かれていた。


会場はおなじみの大衆食堂から酒場も兼ねる釜亭がまていである。


ぞろぞろと教授たちが店に入っていく。


店の一角の席に10人ほどの先生たちが腰掛こしかけた。


この中では一番、えらくて学院の重鎮じゅうちんである炎焔えんえんのファネリ教授。


白くて長いヒゲと眉毛まゆげが特徴的で物腰柔らかな老人だ。


しばしばこうやって教授たちを飲み会に誘い、太っ腹で全員分をオゴったりする。


もっとも彼ほどの地位になればお金などいて捨てるほどあるのだが。


それを鼻にかけることもなく、こうやって彼は後輩連中を酒の席に誘うのだ。


ちなみに学内でも数少ないノットラント内戦の真実を知る”ナレッジ”である。


次にアシェリィ達の担任でスパルタのナッガン教授。


昔はM.D.T.F(魔術局タスクフォース)で地獄教官と呼ばれていたらしい。


彼は見た目に似合わずスタッフィー・プレイヤーと呼ばれる可愛らしいぬいぐるみ使いでもある。


また、あらゆる武器を使いこなし、罪人を狩る狩咎しゅきゅうの二つ名も持つ。


その実戦経験と知識から教え子たちに厳しくも適切な指導、アドバイスをしている。


次に生物やモンスターを飼いならすテイミングのエキスパート、従魔じゅうまのケンレン教授。


整ったヒゲが自慢のダンディな中年だ。筋肉もあり、結構がっしりしている。


牧場の主のような深青いツナギが勝負着らしい。


テイミングのときに赤ちゃん言葉を使ったりするちょっと変わった一面も持つ。


若くして数少ないナレッジの1人である。そのため、ファネリとの仲は深い。


もちろんサーテンブルカン校長の正体も知っている。


ちなみにその校長はというと酒の席には一切顔を出さない。


その正体は幼女であるからして酒類は飲めない。おまけに酒には興味が無いのだ。


そんなものより甘いものが良いに決まってるというのは彼女の談だ。


そのかわり、飲みの代金はファネリと同じく全額出したりもする。


教授連中は校長の参加を望んでいるが、事情はそう簡単ではないのだ。


ファネリやバレンはそこらへんの事は知っているが、他の大多数の教授は何も知らない。


その隣のフラリアーノもまた若くして才能を発揮している実力派の教授だ。


今は二つ名こそ無いものの、それに匹敵している。


近い内に二つ名がつくのではないかと言われるほどだ。


いつもニコニコしているように見えるが、細目なだけで決して笑っているとは限らない。


両目の下の泣きぼくろがチャーミングポイントだ。


常に黒いスーツを着てオシャレなネクタイをつけている。


今日は葉っぱ柄の緑のネクタイをしていた。


女子生徒だけでなく、女性教授からも人気があり水面下で争奪戦が進んでいるらしい。


次に希少生物保護官きしょうどうぶつほごかんと教授業を兼業しているBビーORCAオルカ。通称ボルカ先生だ。


そこそこいい歳いってるらしいが、見てくれが非常に若い。というか幼い。


そのため、学生たちからは頼れるお姉さん的な存在で通っている。


男女問わず生徒からの評判は良く、多くの生徒にしたわれている。


希少生物の保護から生物学、魔法生物学のレポートの作成など、非常に精力的に多忙な毎日を送っている。


本人としては最近、お肌のコンディションが気になってしょうがないらしい。


次に格闘術全般を担当するバレン教授。


デカイ黒髪のアフロ頭に色黒の肌、たらこくちびるの非常に濃い見た目をしている。


格闘術専攻だけあって筋肉ムキムキで脳みそまで筋肉で出来ていそうである。


だが、人は見た目にはよらないもので、彼は古代言語学の専攻もしている。意外とインテリなのだ。


かつてコロシアムでかかってきたザティスを容赦ようしゃなくコテンパンにしたこともある。


ちなみに今のラーシェの担任教授は彼だ。


古代文明の知識と腕っぷしの強さを買われ、30代にも関わらず”ナレッジ”の1人である。


次にクッキングクラス担当の女性教授であるバハンナ先生。


彼女は男勝りな性格でサバサバしている。


教育方針は割と厳しいほうで、教えを受けているミラニャンなどはかなりキツい思いをしているらしい。


食に対する探究心は人一倍で、なんでも料理に出来ないかと常日頃つねひごろ、考えている。


動植物や虫で満足すればいいが、しまいには砂や鉱物まで調理しようとする。


それでもバハンナ先生の砂かけご飯はとても美味しいという。


包丁さばきも一流で様々な種類の包丁を使った戦闘も得意としている。


中年でふくよかな体型をしている女性はキュンテー教授だ。


飼いならしの専門がケンレン教授、希少生物専門がボルカ教授。


それに対して彼女は生物環境学のエキスパートである。


その生物が棲息せいそく、分布する環境を含めての立ち回りを教えている。


例えば、踏んづけるとマグマを吐くヨウガン・カエルの回避法などを仮想空間かそうくうかんを用いて解説したりする。


密林での寄生虫から身を守る方法や、沼地のリザードマンをやり過ごすテクニック。


また、海で血の匂いを消して海獣から逃れたりするすべなどを教えている。


お説教と追加課題の量には定評があり、生徒たちからは非常に厄介な教授と恐れられている。


アシェリィとシャルノワーレがポヨパヨの卵を孵化ふかさせる事になったのは元はといえばこの教授のせいである。


実は可愛いものが好きでフラリアーノからもらったピ・ニャ・ズーのキーホルダーがお気に入りだ。


そろそろ年齢的にひとり身がキツくなってきているボルカとは気が合うらしい。


群青色のロングヘアにヘアバンドを額に巻いているのはスヴェイン教授だ。


彼はリジャントブイルには割と珍しいサポート系の呪文を得意とする。


その中でも特に得意なのがペンデュラムを使った索敵さくてき、マッピングやダウジング、位置情報の把握などだ。


彼の教え子たちは腕っぷしの強い集団の中でちょっと浮いていたりする。


だが、重要な役割ではあるのでパーティーに居るとなにかと重宝される。


ただ、対抗戦やコロシアムではどうしても分が悪い。


よりにもよってスヴェイン教授は神経質でプライドが高いので、これらの試合に勝ちたくてしょうがない。


そのため、教え子以外のツワモノをどこからか引き抜いてエキシビジョン・マッチなどに参加している。


決して嫌味な人物ではないのだが、どうしてもエキサイトすると大人気おとなげなくなってしまうタイプである。


ひ弱そうに見えるくらい線の細い男性はシュルム教授だ。


彼はサバイバル学の専攻で生徒に毒草やキノコを鑑定かんていさせたり、魔法生物のスライムを毒味させたりしている。


これだけ聞くとただのイヤな教授にしか聞こえないが、その指導力は確かだ。


その証拠にナッガンクラスは誰もジャングルで毒物を摂取せっしゅしなかったという実績がある。


もっとも、無茶なことをしばしばやるきらいはあるが、それくらいのほうがサバイバルにはちょうどいいのかも知れない。


それに、生徒に試させる前にまずは自分が食べたり触ったりして手本を見せるので生徒も文句は言えない。


そして暴力Drドクターとして有名なニルム教授だ。


ケンレンが手入れされたヒゲをしているのに、彼はだらしない無精髭ぶしょうひげだ。


凄腕すごうで治癒師ヒーラーとして学内で知らぬ者はいないが、非常にキレやすくなぐるは当たり前である。


別名、歩くリアクターとまで言われ、全力を出せば致命傷ちめいしょうの者も救えるとうわさされている。


なんでも愛弟子が死ぬまでは温厚だったらしいのだが、それを境にこんな性格になってしまったという。


今も何かが気に食わないのか絶えず貧乏びんぼうゆすりをしている。


無意識的に胸ポケットからタバコを取り出した。完全にジャンキーのそれである。


楽しいはずのうたげの席は苦言から始まった。


「おい。ニルム教授。タバコはやめてくれないか。味覚みかくが狂うんだよ。調理人としては大切な嗅覚きゅうかくもおかしくなる。吸うなら外でやってくれないか」


普段の青いコック服とは違い、大人のムードただよう黒いワンピースを着たバハンナ教授がそう声をかけたのだ。


普段は男っぽい彼女だが、プライベートでは割とレディをこなしている。


「チッ!! うっせーなぁ。わかったよ。まだ学院にゃ治療ちりょう待ちのガキどもが居るんだ。俺ぁこれで失礼するぜ」


席を立とうとするニルムをファネリが止めた。


「ほっほ。ニルム先生。今度、わしの部屋で一服いっぷくやらんか。結構イイやつ、あるんじゃよ。吸い放題じゃ。終わったら打ち合わせせんか。ほっほ」


ファネリは葉巻はまきをふかすジェスチャーをした。


立ち上がりかけた無精髭ぶしょうひげの中年男性はそれを聞くとおとなしく座り込んだ。


「チッ!! 物好きなじーさんだぜ」


気分が盛り下がりかけたのでファネリが仕切り直した。


「それじゃ、このテーブルのグループで乾杯かんぱいじゃ。かんぱ~い!!」


満更まんざらでもない様子で加わったニルムも含めて飲み会が始まった。


ケンレンがフラリアーノに声をかけた。


「フラリアーノ先生、そういえば先日の氷結窟ひょうけつくつはどうなりました? 当初の予定通り、我々は密漁団みつりょうだんだけを捕まえたのですが。あの調子ではかなり手強い盗掘団が残っていたはず……」


スーツ姿の教授は笑顔で返した。


「私の教え子3人で討伐しました。毒弾どっきゅうのキャルク・ナンテがひそんでいましたよ」


ケンレンは驚いた様子だ。


「キャルク・ナンテ!? どういった編成で撃破したのです?」


彼はクセのように整ったヒゲを触る。


初等科エレメンタリィ1年生3人組です。私は気を引いた程度で直接攻撃はしていません」


従魔じゅうまはなるほどなと首をたてに振った。


「ああ、道理どうりで。二つ名に対抗するために審査されたチームで行ったのですね。それにしても3人がかりとは言え、1年で二つ名を倒すとは……。誰かが非力ならばフラリアーノ先生が戦うことになったはずです。素晴らしいチームワークですな」


フラリアーノは満足そうにうなづいた。


「ええ。自慢のチームですから」


まだ宴会えんかいは始まったばかりだ。


教授は互いの近況を報告し合ったり、雑談を楽しみ始めた。


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