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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter6:魔術謳歌
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サモニング・ガールズ・トリオ

アシェリィ、ラヴィーゼ、リコットはフラリアーノが差し出してきた幻魔げんまの生成薬ヒエルーンⅡ式を飲んだ。


飲み終わると今までの周囲の熱気がウソのようにスーッと引いていった。


回復薬としての効果もあるのか、上陸してからの疲労がすっかりとれた。


「まったく、ニコニコしながらホントに先生は人が悪いよ」


キツめの憎まれ口をラヴィーゼが叩いた。


「はは……。たまに言われます。繰り返しになりますが、この薬で軽減できるのは熱気のみです。炎やマグマが直撃すると普通にヤケドしますので慎重しんちょうに行動してください。特にむやみにモンスターに向かっていくのは危険ですからね」


両目に泣きぼくろのある教授はいつもニコニコしているように見えたが、ただの細目なだけだった。


3人は体力、気力ともに回復してまた活火山を登り始めた。


相変わらずあちこちに溶岩で構成されるマントラー・ゴーレムがひそんでいたが流石にそう何度も踏みつけずに進んだ。


ようやく噴火島ふんかとうガルガンドゥの中腹ちゅうふくにたどり着いた頃だった。


「グルルルルルルル…………」


周囲からけものうなり声のような音が聞こえる。


まるでマグマが吹き出すように狼の魔物が地面から吹き出した。


「あっ!! あれはもしやウォルフ・プロミネンシー!?」


フラリアーノはアシェリィの叫びに満足気まんぞくげに答えた。


「よく知っていますね。そう、あれはウォルフ・プロネミンシーです。見ての通り、マグマのような性質を持ったおおかみです。私は見守っていますので撃破してください」


溶岩の獣は4体くらいでこちらを囲んでいる。


地面から飛び出してはもぐり、飛び出してはもぐるを繰り返していて、全くスキがない。


ピンク色のリコットのすぐわきをウォルフが駆け抜けていき、彼女は軽くあぶられた。


「うわー!! あっちぃし!! ホントにあの薬、火山の熱さにしか効かないじゃんよ~!!」


引率の教授は頬を軽くいた。


「いや、だからそう言ったじゃないですか。あくまであれは探索用なんです。なんとかして自力でここを突破してください」


その時、ラヴィーゼが一歩前に出て歌いだした。


「ラヴィーゼの~ちょっといいとこ見てみたい~♪」

「ハイ!! ハイ!! ハイハイ!!」

「え~……ここでもそれやるの~?」


アシェリィを置いてけぼりにしつつ、勝手にラヴィーゼとリコットで盛り上がっている。


「いくぜ!! アッズーロ・コーティング・スケルトン・トリオ!!」


真っ青に美しく光る骸骨がいこつが3体、黒い地面からい出してきた。


骨の剣と盾で武装している。存在しない関節は魔力で補われていた。


ウォルフ・プロミネンシーが突撃してきたが、アッズーロ・スケルトンはひるむことがなかった。


「確かに不死者アンデッドは炎には弱い。でも他の属性を練り込めば弱点の克服は可能なんだよ。まぁ変わり種を呼び出すと精神汚染のリスクがあるから滅多にゃあやらないんだけどな。今回は特別だぜ」


飛び込んできた獣を横っ飛びで回避した骸骨がいこつは骨の剣を振り抜いた。


これによってまずは1匹を撃破した。


「ラヴィーゼちゃんが頑張ってるならあたしだって!!」


アシェリィもサモナーズ・ブックに手をかざした。


「さっき、先生のセントピー・ドッグスの背中で感じた感覚を思い出すんだ……。サモン!! ウィンディ・グリーン・レイド!! シェルシィ!!」


彼女は行きで乗ってきたフラリアーノの幻魔げんまから何かを感じ取ったようだった。


少女が片手をかざすと犬の頭部が飛び出した。


そのまま緑色の渦を巻き、尾を引いた幻魔げんまが出現した。


「バウッ!!」


シェルシィは風属性だった。そのまま強烈な風圧で溶岩のおおかみをねじせる。


風前のともしびのように魔物はフッっとかき消えた。


この一撃でまたもや1匹の魔物を撃破することに成功した。


「よっと。もういっちょ!!」


ラヴィーゼのスケルトンが手堅てがたく3匹目を倒した。


だが、ウォルフ・プロミネンシーは仲間を呼んでいたらしい。


次々にワラワラと沸きだしてくる。


リコットは手のひらをかざして飛んでいったアシェリィの幻魔げんまを引っ張ってきてキャッチした。


そしてそれをそのまま憑依ポゼッションさせ、あたり一面に風圧を解き放った。


「アサルト・ビリジエン!! 我重なりて暴れよつむじの狂犬!! バースト・ソウル・シェルシィ!!」


器用に味方をよけて敵だけを風で吹き飛ばしていく。


数分としないうちに炎のおおかみは消滅していた。


「イエーイ!!」

「おい~す!!」

「ハァ……ハァ……うえ~い!!」


3人は駆け寄って勝利を喜びあった。


その様子は見ていて微笑ほほえましく、思わずフラリアーノもつられて笑った。


調子に乗った一行はどんどんとガルガンドゥを噴火口に向けて登っていった。


頂上が近くなると飛んでくる噴石やマグマの数はとても多くなっていった。


おまけに火山の振動で地震が頻発ひんぱつするようになった。


グラグラとあまりにも大きく揺れるので足はとられるし、不安感をあおられた。


思わず足元に目が行きがちだったが、空から何かの鳴き声を聞いて全員が空を見上げた


「ピエーーーーーーーーン!!!」


真っ赤な羽の大きな鳥が空を旋回せんかいしているのが見える。


「あ、あれもしかして不死鳥フェニクスじゃね?」


ラヴィーゼが目をまんまるにして炎のような鳥を指さした。


だが、フラリアーノは首を左右に振った。


「いえ、よく似ていますがあれは煉獄翼鳥れんごくよくちょうです。不死鳥フェニクスそっくりに擬態ぎたいすることで身を守っているんです。臆病おくびょうな性格ですから、襲ってはこないでしょう。ちなみにガルガンドゥでも不死鳥フェニクスの目撃情報はありますが、もう何百年も前のこととのことですよ。アテにならない情報ですね」


煉獄翼鳥れんごくよくちょうを眺めながら一行は火山のへりである地獄のふちに到達した。


覗き込むとマグマがグツグツと煮立っている。


時折ときおり、まるでつかんで飲み込まんとするような勢いで溶岩が吹き出した。


「さて、溶岩の浮島をジャンプして進みますよ。いざというときは足元を氷結させますが、しくじれは熱い思いをします。くれぐれも注意してください」


そういうと担任はぴょんぴょんと軽快にジャンプしてマグマに浮く足場を進んだ。


思わず女生徒3人は息をむ。


「えーい!!」


真っ先に飛び込んだのはやはりアシェリィだった。


「あらよっと!!」


次いでラヴィーゼが。


「うわ~。お前らちょっとはビビれし~」


最後にリコットが浮島にジャンプした。


「こういった浮島の先にあるほら穴にフラム・バジリスクは巣を作ります。本来はさほど凶暴な性格はしていませんが、卵を守る時期は気性きしょうが荒くなります。5mもの体長がありますので、狭い空間での戦闘を想定せねばなりません。なお、今回はターゲットの殺生せっしょうはNGです。うまいこと卵を数個だけ採取してきてください。希少な野生生物ですからね」


予想外の課題に思わず3人は顔を見合わせた。


極めて狭い空間でかつ凶暴なモンスターに対して手加減をするというのは明らかに難易度が高かったからだ。


いっそ戦って勝ったほうがどれだけ楽だっただろうかと思えるほどだ。


だが、ここまで来て尻込しりごんでいても仕方がない。


まずは手分けして目標の巣を探してみることにした。


3人が散開しようとした時だった。リコットが声を上げた


「こ、これは!! みんな息を止めるし!! 妖精フェアリーが火山性ガスに反応してるし!! このままでは強い毒性でやられてしまうし!! サモン・フェアリー!! アンチ・ヴォルケニクス・スモッグス!! ガハーマ!!」


のような羽をしたマスタード色の妖精が辺りをヒラヒラと飛び回って有害物質を中和した。


「何もあたしは妖憑フェアリー・ポゼッションだけじゃないんだし。そこんとこ誤解しないでほしいし」


自己主張する彼女の肩にラヴィーゼが腕をかけた。


「ハイハイ。わかってますよ。リコット先生のフェアリーは超一流ですからね」


わざとらしいリアクションにリコットはむくれた。


フラリアーノは首を縦に振った。


「よく対処しましたね。私が割って入ろうかというタイミングでしたが。繊細せんさいな感覚が無ければガスを感知するのは難しいですからね。よくやったと思いますよ」


それを聞くとピンクづくしの少女は親指を立ててニカッっとわらった。


「さて、召喚したはいいけどずっと召喚してると疲れるし。早いことフラム・バジリスクの巣を見つけて卵を頂いて火山口から抜けるし」


全員は顔を見合わせあってうなづきあった。


「お~い。こっち穴あったぞ~」

「こっちにも~」

「穴ボコだらけだし~」


手分けして巣を探すと無数のほら穴が見つかった。


どれを探索しようか3人が悩んでいた時だった。



「あ、そうだ。呼び出してるフェアリーで気配を探ればいいし」


意外と応用力の高い能力を持つ妖精にアシェリィ、ラヴィーゼ、フラリアーノは感心した。


まぁバトルに関してはお世辞せじにもそのままで活躍できるとは言いがたいのだが。


数体潜ひそんでいるけど、卵が一番多いのはこっちの穴だし」


リコットは先頭をきってマグマの浮島を飛んでポッカリと真っ黒な口を開ける穴の前に到達した。


「準備はいいかし? フォーメーションは?」


そう彼女が問うとラヴィーゼが名乗り出た。


「暗所での戦闘ならあたしが有利だな。先頭は任せとけ!!」


金髪の目立つラヴィーゼは自信ありげに笑ってみせた。


「じゃあ二番手は私かな。前衛、後衛どっちもサポートするよ!!」


それに次いでアシェリィも手を降った。


「じゃあ大将はあたしだし。じゃあ気合いれていってみるし!!」


フラリアーノが見守る中、3人娘はフラム・バジリスクの巣へと突入した。


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