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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter6:魔術謳歌
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あなたと私の連携魔術

ジュリスとカークスは順調にジャングルを進んでいた。


上級生がおとりになって後輩が花火弾とスパーク弾をきたえる形で密林を歩んでいく。


「ふむ。悪くねぇな。俺の裏テクもあってか、威力も安定性も上がってきている。いまんとこ問題なく倒せてる感じだしな」


長いこと自信を失っていた少女はだんだんとコンディションを上げてきていた。


「だが、ここで油断するなよ。こっからは微妙な差で勝敗が来まるからな。あとくれぐれも俺に期待しないこと。ナッガン先生に手出ししすぎるなって口をっぱくして言われてるからな」


それを聞くとにっこりわらってカークスは微笑ほほえんだ。


「あ~……お前、笑ったな? 手伝ってやんね~ぞ?」


急にカークスはあたふたしだした。


「あ~、わ~、ごめんなさ~い。もうわらいませんから~~~」


ほのぼのムードで進んでいくとジュリスがピタッっと立ち止まった。


「ふ~ん。上手く隠れてるじゃねぇか。よっ!!」


彼が頭上に向けて小石を投げるとかすかに葉が揺れる音がした。


ガサガサッ!!


「一人はノワレだろ? あと一人は……。この感じ、サモナーズ・ブックか? アシェリィだろ。降りてこいよ」


ジュリスの言い当ては見事に当たってノワレとアシェリィが樹の上から飛び降りてきた。


カークスは2人の気配に全く気づくことが出来なかった。


「えっへへ……やっぱジュリス先輩にはかなわないね……」

「全くですわ。こちらから声をかけようと思ってましたのに……」


紅蓮色ぐれんいろの制服の上級生は頭を軽くいた。


「あのなぁ……お前ら小生意気こなまいきに俺らをつけてやがったろ? 研究生エルダーをナメてもらっちゃこまるぜ。下級生の小手先こてさきが通用するかよ。それよりお前ら、もう気づいてるな?」


ジュリスは特に動じていない様子だったが、カークス、ノワレ、アシェリィはブルブルと身震みぶるいした。


「うわ~……ゾワッとする……」

「はわわ~~……気持ち悪~~~っ……」

「わ、わたくしも……寒気が……これは……!!」


先輩は真剣な顔をして首を縦に振った。


「あぁ、そうだよ。こいつが青白いぞう、ファントムズ・ヘイツだ。もう狙われてるぞ。臨戦態勢りんせいたんせいに入れ!!」


ピュン、ピュン、ピュン!!!!!


白いレーザーが森の奥へと跳弾ちょうだんしながら飛んでいく。


当たったかどうか目視できなかったが、長い鼻がジュリスに襲撃をかけてきた。


「よっ、ほっ、はっと!!」


彼は側転、バク転と避けてから前宙返まえちゅうがえりりして青白いぞうの鼻にしがみついた。


まるで曲芸師きょくげいしのようなその挙動きょどうに残りの3人は見とれた。


「ほれ!! ボサッとしてんなよ!! どうやったら3人でコイツを撃破できるか考えるんだよ!! 俺が居なきゃもうこの時点で1人やられてんぞ!!」


長く伸びた鼻の上に乗った青年は鼻にぐるりと腕を回すと、ぐるんぐるんと大車輪のようにゆさぶった。


その結果、ファントムズ・ヘイツの溶解液ようかいえきの狙いを妨害ぼうがいすることに成功した。


そのまま、彼は勢いをつけてぞうの鼻にひねりをくわえて地面に叩きつけた。


衝撃は本体にも伝わっていって、巨体がひっくり返ってドシンと大地に打ち付けられていた。


「あ、やっべ。やりすぎたか? まだ加減がわかんねぇな……」


ジュリスが様子をうかがっていると青白いぞうは立ち上がった。


「あぶね~。一発KOしちまったかと思ったぜ。手加減手加減。これ以上やりすぎるとマジで更に単位がもらえなくなるっての!!」


女子3人組は互いに背中を合わせてスキを減らしつつ、策を練った。


「ジュリス先輩が攻撃を引きつけていてくれていますわ。私達わたくしたちは全員攻撃に回りましてよ。わたくしは樹上を中心にアイツの死角を突いていきますわ!!」


ノワレは素早く大弓を抜くと矢をつつから引き抜いて引きしぼった。


「私はサモナーズ・ブックで密林の気配にまぎれつつ、死角から攻撃を仕掛しかけていくよ!!」


腰についていた本を取り外すとアシェリィはブックを構えた。


「じゃあ~、わたしは~……正面から一気に攻撃します!! ジュリス先輩との戦いには慣れてるから、当てずに高火力な呪文を当てていけると思うから!!」


3人は同時にOKサインを視線で送りながら散開していった。


(うわぁ……カークスのやつ、また遠慮なしにぶっぱなす気だな。俺じゃなきゃ直撃なんだぞあれは。またお説教しねぇとならんのか……。まぁ手のかかる弟子はなんとかっていうしな。別に弟子じゃねぇけどさ……)


ジュリスは反復横跳はんぷくよことびのように素早すばやくサイドステップを踏んだ。


背後から飛んでくる電流のかたまりであるスパーク弾を背中越せなかごしに危なげなく回避していく。


ジィジィ!! ハリバリバリバリ!!!!!


スパーク弾はそれなりに効いているらしく、青白いぞうは前足を上げてのけぞった。


「ほぉ。ファントムズ・ヘイツ相手にあれだけの威力は嬉しい誤算ごさんだぜ。ただ、攻撃範囲が広いのは長所でもあって短所でもある。命中率は及第点きゅうだいてんだが、あの調子じゃ耐久力の高いヤツか、回避の出来るヤツと組まないとやってられんだろうな。もしくは前衛にこだわらず、カークス単身で突破するかだ。意外と後者も悪くねぇとは思うんだが……」


青年は器用に背後からの電撃弾を避けながらあれこれと考えた。


その頃、ノワレはぞうの頭上に到達していた。樹上に高くねる。


「いくら頑丈がんじょうけものでも流石さすがに後頭部をつらぬけばただでは済まないはずですわ!! 受けてみなさい!!」


特別に持ち込んでいた銀の矢を3発連続で発射した。


ストッ!! ストッ!! ストッ!!


本気で放ったつもりの矢は魔物の表皮ひょうひで受け止められてしまった。


「まぁ!! 後少しのはずですのに!! なんて硬いのかしら!! 小憎こにくらしいですわ!!」


ノワレは苛立いらだった様子で舌打ちした。


そのまま、空中で宙返りしながらまたもや射撃のチャンスを狙った。


今度は1発に全力を込めて矢を引きしぼる。


一弓入魂いっきゅうにゅうこん!! 一流星之瞬ひとながれのほしのまたたき!!」


(これは脳天のうてん射抜いぬきましたわ!!)


渾身こんしん一弓いっきゅうに勝利を確信たエルフだったが、ファントムズ・ヘイツの反応は恐ろしく早かった。


「オオオーーーーームッッッ!!!!」


長い鼻を振り回してその根本で矢を弾いたのである。


「なっ!?」


それと同時に魔物は鼻の先端を高く高く持ち上げた。


「うおわっ!!」


反動でジュリスが一気に高いところに持っていかれた。


「あら~、ジュリスさ~ん」

「ジュリス先輩!!」

「先輩ッ!!」


上級生は高所からぞうを見下ろした。


「さて……どーすっかな。このままひっつかんで本体ごと地面に叩きつけてもいいんだが……。それだと俺、一体何の使い手か? ってなるじゃん。それにそれは手を出しすぎな気もするし……。あー、面倒くせ~」



宙ぶらりんになった青年は足元に向けて声をかけた。


「俺は大丈夫だ。お前らだけでなんとかしてみろ。溶解液ようかいえきはこっちでなんとかしてやるから。これ、イージーモードだぞ」



矢が決まらなかったことに不満を抱えたノワレは再び樹の間を飛んだ。


そしてすれ違いざまに化物の片目を射抜いぬいた。


青白いぞうは鼻の先に集中していたので、これに対応することが出来なかった。


「今度こそッ!!」


直撃したのを目視して樹木にくっつくように張り付いたノワレを反撃の牙が襲う。


あわや跳ね飛ばされるかというところだったが、カークスがスパーク弾を放った。


バン!! バリバリバリ!!!! バリバリバリバリ!!!!!!


電撃弾は炸裂さくれつしてぞうしびれさせた。


一方で敵の後方に回っていたアシェリィのサモナーズ・ブックに反応があった。


「これは……フェンルゥ? う~ん……そうか!! カークスちゃんの使ってる術式と幻魔げんまのフェンルゥの属性が近いんだ!! これなら威力上乗せでフェンルゥを召喚できると思う!!」


召喚術師サモナーの少女はカークスに同調するように念じ始めた。


すぐにカークス側にも反応が現れ始めた。


「お……あ……なんだか力が強まる。特に魔法円にくわえてはいないは……って、うわぁ!!」


誰も陣に触れていないのに勝手に展開する術式に新たなシンボルが加えられていった。


「こ、これが本当の……フェンルゥの力!?」


アシェリィとカークスは距離も離れていたし、直前には一言も交わしていなかった。


それでも幻魔げんまを介して2人はシンクロした。


「いきます!! サモン・ブリリアントリィ・イェロゥ!! フェンルゥーーー!!!!」

「いくよーーー!!!! スパーキング・バレット!! フェンルゥーーー!!!!」


ジュリスは高く飛んで電撃の波からうまい具合に逃げ出すことに成功していた。


「ヒュー。即興そっきょうでの連携魔術メルト・ポットとはなかなかやるじゃねぇか。偶然の産物とは言え、上出来だな。だが、この魔術も味方を巻き込みがちだ。あとで指摘しといてやんねーとケガ人出るからな。まぁ威力は文句なしだぜ」


エルフも樹木から高く飛んで難を逃れていた。


「アシェリィとカークスの連携技かしら!? あそこまで威力が上がるものなのですわね……」


青白いぞうは焦げ臭い煙をあげてむくろと化した。


それを確認するとアシェリィとカークスはバテてしまい、同時にひざをついて前かがみになった。


ジュリスはカークスの元へ、ノワレはアシェリィの元へ向かった。


「よくやったな。お前はもう1人でも通用するよ」


カークスは笑いながら首を横に降った。


「いえ……わたしなんかまだまだです。まだ先輩にも教わりたいことありますし」


すぐに先輩は後輩にデコピンした。


「あだっ!!」

「甘えてんじゃねぇよ。自分でやれ自分で」


ジュリスは意地悪気に笑みをうかべた。


一方のノワレもアシェリィを気遣きづかっていた。


「アシェリィ、大丈夫でして?」


「ん、ああ。大丈夫だよノワレちゃん。でも連携魔術メルト・ポットは思ったより疲れるね~」


エルフの少女のは優しく手を差し出した。


「今度はわたくしともご一緒してくださる?」


緑髪の少女は熱気に髪をかき上げながら答えた。


「うん!! いいよ。どんな技にしよっか?」


そうこうしているうちにジュリスとカークスが向こうからやってきて4人パーティーが成立した。


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