表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter4:奇想天外!! 摩訶不思議!! 魔術学院ライフStart!!
275/644

膨張! 恐怖の白ワカメまんじゅう

フィーファン撒糧記念祭さんりょうきねんさいは異様な熱気に包まれていた。


「やーやー皆のもの!! 盛り上がってるかな~!?」


オーディエンス達の大きな声援が聞こえる。


中には「ミーアスアスちゃ~ん!!」と司会アイドルの名を叫ぶものも居た。


「はいは~い。ありがと~。でも今日の主役はあたしじゃなくてみんなだかんね!!」


彼女はニッコリと微笑むとピースサインを出した。


「おっとぉ。食休みは無いって言ったよね!? 早速、次にいくよ~!! お次のお題は~~~~……みんなご存知!! 甘味処、素逸庵すいつあん特製の白ワカメまんじゅうでーす!!」


会場がどっと湧いた。


「皆、甘いものを一杯食べたいって思うよね!? でも食べ過ぎるとブクブク太っちゃう!! そんなアナタにはこの白ワカメまんじゅう!! あんは白ワカメとアズキを練り合わせたものでと~っても甘いの!! あんの色はほぼ真っ白!! 皮の色はアズキ色をしているよ!!」


ミーアスアスは白ワカメまんじゅうを手にとった。


彼女の手のひらは思いっきり開かれていて、女性が片手で持つにはやや大きい程度のサイズだ。


「結構おっきいでしょ~? で、どうして太るのを気にする人向けかと言うとね、この白ワカメの成分で水分を取るとあんが膨らむという効果があるのです!! 本来は少しずつ水を飲みながら食べるから少量でも満腹感が得られるんだ。でも、今回の大会ではその特性が仇になっちゃうんだなこれが。おまんじゅうだから割とパサパサしてますコレ……」


ミーアスアスは小豆あずき色の大きなまんじゅうを口に含んだ。


「むぐむぐ……。う~ん! 滅茶苦茶甘いです!! 甘党も大満足な甘さ!! しかもアンコだから嫌味がない!! 上品でまろやかな甘さです!!」


彼女は白ワカメまんじゅうを置くとマギ・マイク片手に司会を続けた。


「とっても美味しいんだけど、これはさっきのゴボウ虫フライより滅茶苦茶お腹にたまるよ!! だって、決勝参加人数は8人しか残らないんだからこれくらいキツくしないとね~!!」


会場は静まり返った。参加者、観覧者ともに8名まで絞るとは思っていなかったからだ。


「ん~? びっくりした~? 決勝に参加する権利は更に選ばれたものの上に存在するのだ!! ホレ、アガってアガって!!」


彼女の掛け声の直後、シーカル広場は焼け石を放り込んだようにヒートアップした。


「はいはいよしよし皆の者!! では早速はじめよっか。準備位置についてくださーい!!」


1ラウンドを突破したレールレール、ガリッツ、ニュル、クラティス、リーチェは気合を入れ直した。


ナッガンクラスの生徒達は各々のお腹と相談していた。


レールレールは無精髭を指でなぞりながらつぶやいた。


「甘い物は……クライシス……」


ガリッツは赤いハサミをクロスさせて堂々のポーズをとった。


ニュルは4本足で立ち、残り6本の足で力こぶを作って力強さをアピールした。


「そこそこ腹は一杯だが、まだ諦めるにゃあ早すぎるッ!! 根性見せるぜぇ!!」


クラティスはお腹を擦りながら片目をつむって軽く顔を歪めた。


「やっば。あとちょっとしか食べられそうにないんだよなぁ。こりゃガッツでどうにかなるレベルの話じゃないし……」


リーチェは自慢の真っ赤な髪を髪をとかしながらつぶやいた。


「う~ん……腹八分目ってとこ? そろそろ”アレ”をやるときが来たか!!」


それぞれが各々の腹具合をはかりながら2ラウンド開始まで待機していた。


「ほんじゃま、食休みはおしまい。第2ラウンド、いっくぞ~!!」


ミーアスアスはホイッスルを取り出して思いっきり吹いた。


「ピピーーーーーーーーッッッ!!!」


大音量の笛の音がシーカル広場にこだました。


一斉に食戦士達は白ワカメまんじゅうにかじりつき始めた。


司会の言うとおり、まんじゅうを2つ3つ水を飲みながら食べるだけで猛烈な速さで満腹感が襲ってきた。


「うわ~!! 速ぇ~!! 化物だぁ!! 2分半でトップ選手が抜けたー!! だからこれ早食いじゃないから!!」


彼女は大きく叫び、目をパチクリさせて驚愕した。


他の人の事を気にしている余裕など無かったのでどんな食べっぷりだったのか選手にはわからなかった。


アシェリィ達はマギ・スクリーンから様子を見ていた。


だが、またもや大人数での競い合いなのでクラスメイト一人一人の詳しい状況はわからない。


大きい雪男のような亜人が一番抜けしていた。


水も飲まずほぼ、白ワカメまんじゅうを丸呑みである。


確かにそういう作戦もありなのかもしれないが、口が大きくないと出来ない芸当である。


それでも彼は涼しい顔をしていた。その姿に会場中が唖然とした。


「さーて!! まだまだこれからだよ~!! 皆頑張って!!」


ニュルは7本の足を有効活用して水片手にまんじゅうをがっついていた。


「まだまだ!!」


ガリッツも好調で、ハサミでまんじゅうを掴みながらポンポン放り込んでいく。


水は全く飲んでいないようだった。


クラティスは2つまんじゅうを食べ終えていたが、もう満腹感は拭えずにだましだまし食べていた。


「う~。そろそろギブかな~。無念~」


レールレールは食べるペースが非常に遅くなっていた。


彼は甘いものが苦手で、これだけ量を食べるというのはいかに工夫されていても厳しいものがあった。


「くっ!! だが、食はネバーエンド……」


リーチェはほぼお腹いっぱいでギブアップ寸前だった。


「今だ!!」


すると彼女の髪の毛が輝き出した。


するとニョキニョキと髪の毛が伸びていくではないか。


思わずマギ・スクリーンは彼女を捉えた。


「おーっと!! これはどうしたことでしょうか!? あの娘の髪の毛伸びてるよ!!」


紅い髪を伸ばしながら彼女は食べるペースを一気にあげた。


(実はあたし、髪を伸ばす度にお腹が減るんだよね。早く髪を伸ばせば伸ばすほどお腹がすく。今は腹半分だけど、このペースで伸ばせば空腹状態にもっていけるんだなコレが)


リーチェは白いアンコを口の周りにつけてにんまりと笑った。


5分経過した時点で2ラウンド突破人数は4人となっていた。


「あーっと!! 運営の予想よりみんな食べるの速いよ~!! 残り枠あと4人だよ!!」


食戦士達は危機感に駆り立てられて焦り始めた。


無茶なペースで食べ始めるものも現れ、嘔吐する者も十数人は出た。


「うわぁ……ミーアスアスちゃん言ったぞ。無茶したらダメだって。ほら、見ろいわんこっちゃない。ゲロってんじゃ~ん」


下品な言葉を口にして彼女は思わず口元を手で塞いだ。


「おっといけね!! それはそうと、みんなお腹が膨れてるからかここからはスローの殴り合いに突入だァッ!!」


ミーアスアスはぐっと拳を握って白熱した実況をした。


7分ちょいのところでクラティスが手を上げた。


「ギ、ギブアップ。は~。お腹いっぱい。でも幸せ……」


大食いしたにも関わらず、彼女は恍惚とした表情を浮かべていた。


本当にここからは泥沼試合で、10分をカウントしても決勝進出者が現れなかった。


残ったナッガンクラスのメンバーたちはというと必死に白ワカメまんじゅうを喰らっていた。


一番速いのはガリッツだった。


ペースも落ちず、かなりのハイペースで貪っている。


アシェリィは彼に大食いが務まるのかと考えていたがそれは杞憂だった。


順調そうに見えたカブトムシザリガニだったが、ラストのまんじゅうを半分残したままピタリと止まってしまった。


本当にもうあと一口というその時であった。


彼は大量の胃の内容物を噴水のように大量に吹き出したのである。


真っ白なゲロが周辺に撒き散らされた。


この様子はすぐマギ・スクリーンに映し出された。


「うわ~!! これは大惨事!! 周囲の人は大パニックだぁ!!」


彼の周りの選手達は吐瀉物を体に浴びた。


また、もらいゲロで巻き添いをくらって何人かが強制リタイアとなった。


いい迷惑もいいとこで、もはや軽いバイオテロである。


アシェリィ達の班員は顔をしかめた。


「あちゃ~……もしかすると思ったんだけど……」


額に手のひらをあてた。


「……最悪ですわ」


ノワレは思わず目を背けた。


「ガガガガガガ、ガリッツ君、だだだだ、大丈夫かなぁ……」


フォリオは彼を心配した。


「うわ~……。き、気を取り直して!! 13分過ぎたよ!!」


ニュルの食べる速度はまるで亀の歩みのようだ。


いくら足が多くても同時に口に含める事のできる量が少なければあまり意味はない。


「くぅ~。腹いっぱいに近いぜ。まさかこんなに大食いの奴らがいるとは……」


レールレールは苦悶の表情を浮かべていた。


「甘さは……ディスライク」


食べるペースは遅めだったが、まだ胃のスペースには余裕がありそうだった。

 

そんな中、リーチェが腕を高く上げた。


「おあーっっとぉ!! ようやく5人目の突破が来ました!! よく頑張ったね!!」


リーチェはガッツポーズをとった。


「うっし!! 決勝進出~♪ これならまだまだいける!!」


彼女は立ち食いで食べている集団からぬけて運営席の方へ歩いていった。


タイマーは15分を経過していた。


その間に6人、7人とゆっくり決勝進出者が決まっていった。


「あーっと!! ラストあと一人!! 長期戦でキツい!!」


参加者たちは焦ったが、全員が限界に来ていたのでなかなか食べ終わるものは居なかった。


「23分が経ったよ!! 苦しい!! これは苦しいッ!!」


ミーアスアスは大食いしていないが苦しそうな顔をした。


25分ちょい過ぎた頃、ついに誰かが手を上げた。


「ピピーーーーーーーーッッッ!!」


笛の音が突如鳴った。


「はいッ!! そこまで!! 決勝戦参加者のファイナリスト8名が決定しました!! みんなおめでと~!! よく激戦を勝ち抜いたね!!」


シーカル広場は沸騰するように盛り上がる。


手を上げたのはレールレールだった。


「戦いに……スライディング……」


彼は190cm代の大男で見るからに大食漢だが、まさか亜人のガリッツやニュルを越えるとはクラスの誰も予想していなかった。


いわゆるダークホースというやつである。


ナッガンクラスで決勝に勝ち上がったのはレール・レールとリーチェの二名となった。


「は~い。例のごとく食休みは無いよ~。決勝戦は立ち食いじゃなくて、8人が顔を突き合わせる円卓でやります。特別ステージに上ってきてね」


ナッガンクラスの二人がステージに上っていく。


誰も決勝に残れないのではと思っていたクラスの面々はこの結果に狂喜した。


カルナのいうクラスのスピリッツを発揮していた。


こうして横一列に8名が並んだ。


「よぉし!! とうとう最後の決勝戦だよ!! どんな料理が出てくるんだろうね? すっごく豪華なものを用意してるから楽しみにしててね!!」


ミーアスアスはさわやかに歯を見せて笑った。


果たして次の料理とは? そしてレールレールとリーチェはどうなるのか?


メガトン級の最終大食い大決戦の火蓋ひぶたが切って落とされようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ