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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter4:奇想天外!! 摩訶不思議!! 魔術学院ライフStart!!
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挑め! フィーファン撒糧記念祭!

いよいよ裏赤山猫の月の28日になり、撒糧さんりょうのフィーファン記念祭の当日になった。


開始時間が10時だったので、アシェリィはのんびりと食事を済ますと外出した。


シーカル広場はミナレート最大の公園で郊外に位置している。


ここも常に春の気候に調整されたエリアで市民の憩いの場となっている。


その広さを活用して大規模なイベントなどが開かれたりする場所だ。


アシェリィはミナレートを散策した時に寄ったことのある場所だ。


寮から出て、ウォルナッツ大橋を渡ってルーネス通りを真っ直ぐに行くという簡単なルートだ。


15分くらいあるくとシーカル広場が見えてきた。


広場の入口に差し掛かるとそこには異様な光景が広がっていた。


おびただしい数の人が広場を埋め尽くしていたのだ。学院の生徒らしき人もかなり居た。


どこまでが観客で、参加者なのがサッパリわからない。


入り口そばのポストの前にアシェリィのクラスメイトは集合することになっていた。


参加者はもちろんのこと、ほとんどの生徒が応援にかけつけてきていた。


(皆来てるけどイクセント君は……やっぱいないか)


「おはよう。皆、調子はどう?」


肝心の参加者達は青ざめていた。


アシェリィが首をかしげるとカルネが重い口を開いた。


「知らなかったアル……知らなかったアルよ!! このお祭りがそんな大規模なものなんて!! 精々参加者は50人くらいだと思ってたアル!! それが何と281名らしいアル!!」


「に、281人!?」


どうやら広場に集まる人の多くが大食いコンテスト参加者らしい。


「おう。諸君!! 臆してはいけない!! 思い出すんだ。苦しかった遠足の日々のことを!! 私達クラスのスピリッツで何としても優勝を勝ち取るまで!!」


前に出たクラティスは凛々しい学ラン姿をしていた。


その気迫に生気を失いかけていたクラスの参加者達は活気を取り戻した。


さすが応援団員インビゴレイターなだけはある。


「ええい!! もうヤケクソアル!! 喰って喰って喰いまくるアルよッ!!」


カルネはぐっと拳を握った。


「俺の胃袋はファンタジー……」


無精髭を蓄えたレールレールは首をコキコキとならした。


「おっしゃ!! やってやるぜ!!」


ガンはパンパンと顔を叩いて気合を入れた。


「愛しのノワレ……みててくんろ……」


田吾作は下心丸出しで遠い目をした。


「おうよ!! タコの根性、みせてやるぜ!!」


ニュルは口をチューチューさせた。これなら結構飲み込めそうである。


「よーし!! あたしもお腹いっぱいたべる~」


カークスは呑気だった。最初はカルネのほうがお気楽だったが今は彼女のほうがお気楽なのではないだろうか。


「ま、見てなって。どこまでいけるかはわかんないけどサ」


リーチェは長く、美しい髪をなびかせた。


バチンバチン!!


最後に締めるようにガリッツが真っ赤なハサミを打ち鳴らした。


「リジャントブイル学院一年ナッガンクラス、出・陣!!」


クラティスが中心となって円陣を組むと戦士たちは試合会場へと発っていった。


祭り会場の方から大音量の音が聞こえてきた。


「はーい!! 司会、進行のミーアスアスちゃんでーす。皆、お腹が減ってるかな!?」


マナ・マイクを参加者に向けると大きな返事が帰ってきた。


「いい返事だーッ!! じゃあ、ルールを説明するよ。大食いコンテストって聞くと食べる量を競うのかと思うけど、大食いのお店では制限時間が決まってることが多いよね。ダラダラ食べてたら脱落ってコト。ただ、早食いコンテストにはならないように最終決着は量を競うことになりまーす」


聴衆達はガヤガヤと互いに話し合ったりした。


「続けるよん♪ 思ったよりハングリィな皆が集まってくれたから、1ラウンド目の難易度をガッツリ上げました~。人によって食べた量が違うと大食いを競うのとはちょっと違っちゃうから予選では皆、同じ量の食べ物を食べてもらいまーす。完食すれば2ラウンド進出です。食べきれない、もしくは進出者が一定数に達した場合はそこで打ち切りです。進出者の数はその時その時で決めてくからよろしくね!!」


聞いている者たちがざわめく。1ラウンド目から波乱の予感がする。


「でぇ、3ラウンド目が決勝です。これはシンプルで残った人によるデスマッチです。ギブアップ、ゲr……コホン……リバースすると脱落で最後の一人が残るまで食べて食べて食べまくってもらいます!!」


参加者達はルール説明を聞いて勇ましく声を張り上げた。


この日のために断食してきている者もいるのではないかという程だ。


「じゃ、早速、一回戦いくよ~。気になる食べ物は~~~~」


一同はゴクリとツバを飲み込んだ。


「ジャ~ン!! ゴボウ虫のフライでーす!! ちょっと脂っぽいけど、お菓子感覚で食べられるんじゃないかな。ただ、パサパサしてるから水の飲み過ぎには注意だよ☆ なお、水のおかわりは自由でーす。こ~れ~を~、おっきめなバケツ一杯食べてもらおっかな♪」


広場の戦士たちに衝撃が走った。


ゴボウ虫はゴボウによく似た味と食感のする虫である。


そのフライはスナックやおつまみ感覚で愛用されている食品だが、大きいバケツ一杯と何しろ量が多すぎる。


いくら軽めとは言え、これだけの量を食べればあぶらとそして飲み込むための水で相当、お腹が膨れるはずだ。


司会のミーアスアスはフリフリの衣装を見せびらかすようにくるりと回った。


彼女はどうやら地元では有名なご当地アイドルらしい。


回り終えるとマナ・マイクを手に再び語りかけた。


「なお、出てくる料理は全部特製のもので、食べ飽きないように作られていまーす。嫌な思い出残して帰るんじゃあんまりだからね。フィーファン記念祭の趣旨としては無理せず美味しいまま帰って欲しいんだよね~。もちろんどこまでやるかは参加者の皆に任せるけど、ゲr……コホン。リバース沙汰は避けてギブアップすることを希望します。ミーアスアスとの約束だぞッ!!」


そう指を振った後、彼女はホイッスルを取り出した。


「ほんじゃ皆、準備はいいかな~? バケツは抱えたかな~!! いくよ~!!」


アシェリィ達は広場後方の観覧席で様子を見守っていた。


大きなマギ・スクリーンに参加者達の様子が映し出された。


あまりにも数が多く、クラスメイト達がどうなったかここからでは雰囲気しかわからない。


応援する生徒たちは彼らの健闘を祈った。


―――「ピピーーーーーーーーーーーッッッ!!!!


笛の音と共に一斉に大食い戦士達はゴボウ虫のフライを食べ始めた。


一本一本食べていたのでは間に合わない。


3本、4本と一度に掴んで口に押し込む。


ゴボウのような香りと甘じょっぱい旨味がある。


バケツを傾けて一気に飲み込む猛者も現れ始めた。


亜人の中でも口の形状が大食いに適している者も居る。


ニュルはそのタイプでフライをまるで掃除機のように吸っていった。


口の形はそれほど有利ではなかったが、ガリッツもかなりガツガツと早く食べている。


バケツをハサミでつかみ、流し込むようにゴボウ虫を食べていく。


亜人二人が派手に大食いするのを追うようにレールレールも大バケツを傾けて一気食いし始めた。


他のメンバーは地道に手づかみで食べていくしか無かった。


ほとんどの参加者がゴボウ虫フライのパサパサ感に苦しみ、多く水分をとっていた。


「おやおや~? あんまり水を飲みすぎると後々まずいよ~? コレ、大食いの鉄則!!なんてね!」


開始から5分程度で食べきる者が現れ始めた。


「早い!! 早い!! 繰り返すけど、これは早食い大会じゃないからね。早あがりしてもボーナスとかはありませ~ん。でもあんまりのんびり食べてるとヤバイヤバイ!!」


ミーアスアスはウインクしながらペロっと舌を出した。


食戦士たちは特製メニューで飽きることは無かったが、それでも満腹感は襲ってくる。


気づくと手がフライに伸びなくなっている。そんな選手がちらほら出始めた。


記念参加気分の者もある程度は居たようである。


「10分経過ッ!! 審判によると只今の突破人数は……32人!! 1ラウンド突破人数が決まったよ!! およそ80人が2ラウンド進出となります!! ほらほら気張って気張って!!」


ここが1ラウンドの正念場というところに差し掛かった。


「ぷはぁっ。酒のつまみに最適だ。……酒が欲しくなる」


10分のカウントの直後にレールレールが見事、バケツ一杯食べきって勝利の拳を掲げた。


それから2分後、ガリッツのバケツも空になった。彼もハサミを打ち鳴らす。


ガリッツに続いてニュルもクリアしてきていた。


「ガハハ!! まだまだこんくらいじゃ軽い軽い!!」


クラティスは苦戦しながらも自分を勇気づけた。


「ラーちゃんに、クラスの皆、応援団の皆も来てくれてるんだ!! ここで根性見せずにどこで見せんだよ!!  うおおおおお!!!!」


彼女はスパートをかけて15分のカウントを目前にフライを食べきった。


ここいらへんが勝負の分かれ目で、全体的に食べるペースがどんどん落ちていった。


司会は審判団と打ち合わせしながらナビを続けた。


「15分経過!! 今の突破人数は……66人!! あとちょっとで1ラウンド終わるよ~!! 皆頑張って~!!」


そのカウントから少ししてリーチェが完走した。


「結構胃にたまるなぁ……。抜けたけど、大丈夫かなこんなんで」


彼女はそう言ってこの先の自分に難色を示した。


カルナは冷や汗をかきながらちびちびとフライを食べていた。


「まっ、まさかいきなりあぶらっこいのが来るとは思って無かったアル……む、無念……」


彼女は負けを確信しておとなしくギブアップした。バケツの中身は半分残っていた。


カークスは満足そうにニッコリと笑顔を浮かべた。


「あ~。おいしいフライ、お腹いっぱい食べた食べた。あとは応援しよっと」


カルナが本来目指していたものを彼女は得たようである。


田吾作はすっかりお腹がいっぱいになっていた。


「あんりゃあ、こら確かにゴボウ味だんども、野菜ではねぇだぁ。おら、もうお腹いっぱいだぁよ」


ガンもレーネの気を引こうと懸命に喰らいついていたが、彼自身、あまり大食いでは無かった。


「うわ~……もう食えねぇっす……。レーネさんにいいとこ見せたかったっす……」


彼はガックリとうなだれた。


異性の気を引こうとした田吾作たごさくとガンは揃って敗退となった。


―――「ピピーーーーーーーーーッッッ!!!」


笛の音が大音量で祭り会場に響き渡った。


「はい!! そこまでッ!! 食べるのをやめてね。 1ラウンド突破人数は83人に確定です。食べきれなかった人、ギブアップした人は残念ながらここで終わりとなります。ゴボウ虫のフライには満足してもらえたかな? 気を悪くしないでまた来年もきてね~」


司会のアイドルはバイバイと手を振った。


ナッガンクラスの生徒達で1ラウンドを突破出来たのはレールレール、ガリッツ、ニュル、クラティス、リーチェ。


ギブアップと敗退はカルナ、カークス、ガン、田吾作となった。


異性の気を引こうとした二人は揃って脱落してしまった。


それでも五人突破とは割と順調な方ではないかとアシェリィ達には思えた。


「さ~て、食休みはないよ~!! ぶっ続けで2ラウンド、いってみよ~!! 2ラウンド83名に食べてもらうのは―――」


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