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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter4:奇想天外!! 摩訶不思議!! 魔術学院ライフStart!!
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トリニティ・リンクス

今日は召喚術サモニングのサブクラスの班員達とお茶に来ていた。


「なんだって? アシェリィ、お前リーダーやってんの? ちょっとイメージわかないなぁ……ちゃんとやれてるのか?」


紫の長髪をいじりながらラヴィーゼが茶化した。


「んも~!! これでも一応はリーダーやってるんだから!! 一応は!!」


クリームサイダーを飲みながらリコットはぶくぶくと泡を立てた。


「リーダーの素質と実力って別だし~。わたしもアシェリィがリーダーに向いてるとは思えないな~」


二人にイマイチな評価をされてアシェリィはむくれた。


「そういう二人はどうなの?」


ラヴィーゼは後頭部に手を組んで無邪気にニカッっと笑った。


「やだよリーダーなんてめんどくさい。アタシはパスだね。バトルロイヤルなんてやってられないって。早いとこ脱落したね」


そう言うとラヴィーゼはアイスコーヒーを飲んだ。


「あ~!! わざと負けたってこと!? そんなのずるくない?」


聞いていたリコットもニタ~っとした笑みを浮かべた。


「それマヂ同意~。リーダーとかやってらんないよね~。わたしも似たようなもん~。痛いのはマヂありえなかったけど~」


三人の中で真面目にバトルロイヤルをしてリーダーになった、いや、なってしまったのはアシェリィだけだったというわけだ。


「え~、そんなのってないよ~!!」


抵抗しだした彼女をラヴィーゼはなだめた。


「まぁまぁ。大多数の連中は多分真面目にやってるって。わざと負けるなんて物好きかアタシたちぐらいだって。な?」


アシェリィは依然、不満そうな顔をしている。


もっとも、彼女の性格的にはわざと手を抜くなんてマネは出来るはずが無かったのだが。


「ふん。知らない」


彼女はそう言うとそっぽを向いた。


「わーったわかった。もっと面白い話をしようじゃないか。ほら、リコットも!!」


リコットは読んでいた本をパタリと閉じ、気だるそうな視線でこちらを見つめた。


「しょ~がないぽ~」


三人は向かい合って”面白い”話を始めた。


「そうだな。リジャントブイル七不思議なんてどうだ? 心霊現象も混ざってるぞ~。真夏だし、いやここいつも真夏だけど、面白いと思うんだけどどうだ?」


ラヴィーゼは目を輝かせながら話題を出したが他のアシェリィの反応は微妙だった。


「え~、死霊使い(ネクロマンサー)が怪談話するの? ラヴィーゼの召喚サモニングのほうがよっぽどホラーだよ」


これにはリコットも首を縦に振って頷いた。


「あんなエグいの使役しといて今更、心霊現象なんネコかぶりすぎ~」


死霊使い(ネクロマンサー)の少女はついていた頬杖がズレて軽くずっこけた。


「じゃあリコットなんかないのかよ~」


彼女は宙に視線をやって少し考えていたが、思いついたように話題を出した。


「あ、わたし、最近占いはじめた~。素人だからあたらないけど~」


ラヴィーゼは話題に乗った。


「おっ、試しに占ってみてくれよ」


アシェリィも気になったのか、リコットの方を見つめた。


リコットは分厚い本とサイコロを取り出して占いを始めた。


コロコロコロコロ…………チリンチリン


サイコロの目が出るとピンクの少女は結果を本と照らし合わせた。


「ふ~む。わたしたち三人の今日の運勢は……大凶……だってさ。ま、まぁ素人が占ったものだから~。きにすること~ ないぽ~……」


次の瞬間、ドスン、ドスンと何者かの足音みたいなものが聞こえた。


「な、なんだなんだ!?」


姉御肌の少女は思わず椅子から立ってあたりを見渡した。


「大変だ~~~~!!! サーカスから見世物のモンスターが逃げたぞ~~~!!! みんな逃げろ~~~!!!」


男性が叫びながら通りに声をかけて回っていた。


それと同時に急速な勢いで学院生たちが集合しつつあった。


「まだ学院生が集まりきるまで時間がかかる!! アシェリィ、リコット、食い止めるぞ!!」


アシェリィは頭に掌を当てて少し考え込んだ。


「う~ん、なんか前にもこんな事あった気がするんだけど、気のせいかな?」


三人が喫茶店から通りに飛び出ると大きな甲羅に四本脚、蛇の頭と無数の蛇のしっぽを持つ化物がゆっくりと歩いてきていた。


ズシン……ズシン……シューーーーーーーー


「タートネイクか。まずいな。ありゃ毒持ちだ。かみつかれないようにな」


すぐにリコットがアシェリィに声をかけた。


「アシェリィ、速攻!!」


「了解!! ボルティング・イェロゥ!! サモン・フェンルゥ!!」


ヒレの美しい雷の熱帯魚が出現した。今度はそれをリコットが乗り移らせた。


妖憑フェアリー・ポゼッション!!!」


妖憑フェアリー・ポゼッションに成功したリコットは全身に電撃を帯びていた。


髪の毛も黄色に染まり、バリバリにとんがっている。


「ヴォルテーク・ランス!!」


空中に雷の槍を生成するとそれをタートネイクめがけて投げつけた。


バリ、バリバリバリバリバリバリバリ!!!!!


槍は炸裂して確かな手応えがあった。


だが、殻にこもったモンスターには効果がいまひとつといったところだった。


「リコット!! まだ使い切るには早い。温存して戦ってくれ!!」


「りょ」


そう答えるとリコットは妖憑フェアリー・ポゼッションを解除した。


それと入れ替えにラヴィーゼの召喚サモニングが発動した。


「ナイツダークブルー・サモン!! ギティア!!」


青白い魔法円の中からおぞましい造形の幻魔があらわれた。


柱に無数の手足が生えているような見た目である。かなり大きく、タートネイクと高さは変わらない。


それを見る人達はみんな顔をしかめた。


「いけ!! 肉弾戦だ!! 死んでるから毒は怖くない!! 時間を稼げ!!」


ギティアは生えた足をバタパタと動かして走り出したそのまま相手にタックルをぶちかました。


敵はひるんで甲羅に入ったが、お構いなしに無数の手が本体を引きずり出しにかかった。


相当噛みつかれているようだったが、死霊は全く怯まない。


亀蛇の首を引きずり出すと柱状の体の本体から気味の悪い歯の生えた口が姿を現した。


そしてその歯で思い切りターゲットにかみついた。


シューーーーーーーーーーーーーッッッ!!!


今度はしっかりとした手応えがあった。


だが、モンスターは苦しみながら、毒液をあちこちに飛ばし始めた。


「まずい!! みんな、私の後ろに!! サンドコア・カーキ サモン・サンドリス!!」


地面から砂の盾が迫り出した。


ラヴィーゼばすばやく盾の陰に滑り込んだ。


「危ね!! でも今なら妖憑フェアリー・ポゼッションが通るはずだ!! アシェリィのマナがギリギリだが、さっきの技が最適だろう。負荷を下げるためにカウントダウン後、盾は消すんだ。じゃあいくぞ!!」


「3……2……1……GO!!」


アシェリィはサンドリスを引っ込めると再びフェンルゥを喚び出した。


そしてリコットは妖憑フェアリー・ポゼッションで雷の槍を打ち込んだ。


シューーーーーーーーーッッッ!!!!


今度は甲羅に隠れる前に攻撃が直撃してタートネイクはしびれた。


その直後、周りに集まった学院生たちが一斉攻撃を浴びせ、モンスターを袋叩きにした。


手加減なしに攻撃を加えたので怪物は息絶えた。


「まったく、制御も出来ないのにこんなん見世物小屋で飼うなっつーの」


ラヴィーゼは周りの人々にひかれているのに気づいて不死属性の幻魔を引っ込めた。


アシェリィとリコットはマナの枯渇のあまり、互いの背中に寄りかかりながら座り込んでいた。


「ハァ……ハァ……さすがにフルパワー二回はきっつ~」


「ハァ……ハァ……私もフェンルゥ二回とサンドリスはキツイよ」


二人は視線をかわすとギュッと握った拳をコツンとぶつけあった。


それに、ラヴィーゼも加わった。


「ハァ……ハァ……ラヴィーゼ、良い指揮だったよ。リーダー向いてるんじゃない? リーダーやればよかったのに……」


褒められたラヴィーゼは恥ずかしげに目線をそらした。


「ばっか。褒めても何もでないぞ。第一なぁ、私にリーダーなんて向いてないって言っただろ」


その後、三人で笑いあった。


休んでいると憲兵たちがやってきて聞き取りを始めていた。


「やべっ。めんどくせーことになるからずらかるぞ!!」


他の二人もそれに同意し、こっそりとその場から姿を消した。


「あ~、こんな暑いのに動くから汗でベタベタだよ。最悪だなぁ」


「はげど~」


「うん……気持ち悪いね」


とぼとぼと三人は真夏の街を歩いていた。


「そーだ!! 着替えを持ち寄って一緒にお風呂でもいこうぜ!!」


「悪くな~い」


「えっ?」


アシェリィは内心戸惑った。今まで他人と入浴した経験などなかったからだ。


友人とは言え、肌を晒すのには抵抗があった。


「なんだアシェリィ、気が乗らないって様子だな。ほんとわかりやすいやつだよお前は。平気だよ茶化したりしねーって。裸の付き合いっていうだろ。コミュニケーションの一環だって。コミュニケーション」


そう言われるとそこまで恥ずかしがる必要が無い気もしてアシェリィも別にいいかなと思い始めていた。


「んじゃ、着替え持ってまた集合な!!」


準備をして銭湯に行った三人はリラックスして楽しく語り合った。


裸の付き合いもたまには悪くはないなと思うアシェリィであった。


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