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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter4:奇想天外!! 摩訶不思議!! 魔術学院ライフStart!!
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阿鼻叫喚の砂の海

百虎丸びゃっこまる夢喰魚ゆめくいうおの側面へと爪を立てて体表を頭に向けて駆け抜けた。


そして頭部に差し掛かると刀を引き抜き、全身に反動をつけてグルグルと縦回転しながら斬りつけた。


かつ!!・流回旋るかいせん!!」


確かな手応えを刀に感じた。そのまま顔の正面まで回り込んで目に斬撃をお見舞いした。


「シューーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!」


これには流石に化物も怯んだのか、身体をよじってもがいた。


だがすぐに体勢を立て直して、百虎丸びゃっこまるを飲み込もうと口をポッカリと開いた。


人間灯台のポーゼはそのタイミングを見逃さなかった。つぶらな瞳めがけて光線を照射する。


またもや視界を妨害され、魔導生物は激しく暴れまわった。



飲み込まれるのは回避できたが、お返しに手痛い尻尾攻撃が来た。


トゲトゲの尻尾にくっついたスララまでも加わって、前衛数名が巻き込まれた。


鋭い角で叩きつけたり、殴りつけられたりしたのでかなり深手を負ったものも居た。


悪魔憑きの少女はなんとかこらえたが、百虎丸びゃっこまるはかなりのダメージを受けて夢喰魚の下に転がり込んで回避行動をとった。


「班長変更!! アンジェナ殿の指示に従うでござる!!」


その言葉を最後に彼の声は途絶えた。腹の下のタコ男がうまい具合に百虎丸を拾い上げていたのである。


「おっしゃ、一気に投げるぜ。傷に響くかもしれんが歯をくいしばりな!!」


そう言いながらニュルは腕の数本を投げる用に割いて思いっきり百虎丸を滑るように投げつけた。


手荒な軌道だったが、彼の位置からすると救護班までは届かない。


ウサギ耳の亜人は砂を転げるように吹っ飛んだ。着地した地点にすぐ治療班が集まってきて回復を始めた。


「くっ、班長だというのに情けない。あとはアンジェナ殿に任せるでござる。前線の状況は!? 痛つつつ……」


「フフフフ……動くと傷によろしくないですよ。ここは私が……といいたいところですが、私の治癒には副作用がありますからね。使うのは緊急時です。ハイリスクハイリターンというところでしょうか……」


百虎丸が集まってくる面々に礼を言った。


「かたじけない。はぁ……はぁ……痛みが引いて心が安らいでくるでござるよ……。これがそこの樹木の亜人の方の力でござるな……」


アシェリィが”はっぱちゃん”と名付けた半樹半人の亜人は葉のついた両手を天に掲げるようにして日光浴していた。


本来なら枯れてしまうところだが、アシェリィの属性付与エレメンタル・アタッチで根っこの部分に水属性を宿していた。


故に砂漠でもそれなりに活動ができるようになった。決して得意とは言えないが。


他には百虎丸と同じ班のカルネがロウソクを灯して回復に当たっていた。


不思議な色の光と香りで傷がみるみる癒えていく。


「はいはい。しょうがないアル。これからこれからアル。リーダーだからといってむちゃするなアルヨ」


この不思議なロウソクはいつ当たっても安らぐものだなと百虎丸びゃっこまるは大きく深呼吸をした。


前衛で踏みとどまっているのはイクセントのみとなった。


そろそろサンドリスの外に出て仕掛けていかないとまとめうちされそうだった。


レール・レールがカタパルトのようなレールを何本か生成していた。


そこからまず飛び出したのはヴェーゼスである。胸元の大きく空いた服装で夢喰魚ゆめくいうおに立ち向かっていく。


「ウフッ♥」


ウィンクしながら投げキッスを放つと化物の様子がおかしい。


その場でふわふわと漂うだけになって攻撃がパタリと止んだ。


「魅惑呪文の効果は長くないわ!! 早く次の手を打って!!」


それを聞いてレーネがボミング・ストライカーという球を投げまくって攻撃を畳み掛けた。


ところどころ的はずれな方向へ投げたがそれも計算のうちだった。


「イクセントの旦那ァ~!!!! バケモンの進路方向から回避してくだせぇ!!!」


罠師のグスモは叫んだ。イクセントは耳をそばだたせると素早く進路から退いた。


するとレーネの投げた球が弾けて、ペタリペタリと夢喰魚ゆめくいうおに張り付いた。


ただ貼り付くだけでなく、そのヘドロのような塊は砂を吸ってどんどん大きくなっていった。


「やったでさぁ!!! 砂々達磨すななだるま!! 砂を吸い付ける罠ですぜ」


これでかなり魔導生物の動きは鈍くなった。


前衛ではイクセント、リッチェが残っていた。


もっとも、攻撃をそこまで回避できないリッチェはかなりダメージを受けていたが。


「ぐっ!! ヘアレ・メイサー!!」


髪の毛をグルグルっと練り上げて自分の身の丈より大きな鈍器状にして殴りかかる。


クラティスは魚の上で孤軍奮闘していた。ただ、砂の大砲を潰すのが精一杯で連射弾までかまっている余裕はなかった。


この連射弾がかなり脅威で、前衛を襲ったり、逃げながら戦う中・後衛の脅威となっていた。


サンドリスで防げなくはないが、大砲クラスが打ち込まれたら壁の向こうのメンバーは全滅である。


クラティスの負担もまたかなり大きいものだった。


そうしているうちに百虎丸びゃっこまるの治癒が終わった。


「あのままではリッチェ殿が危ない!! 拙者と交代するでござる!! 回復感謝致す!! いくでござるよ!!」


そう言うと彼は四足でサンドリスの陰から飛び出した。


そしてものすごい勢いで前衛に立つと彼女を下がらせてイクセントと二人で前衛を引き受け始めた。


その頃、アンジェナは考えていた。


「ふむ。もう相当消耗しきっているな。正攻法では勝つのは難しい。やはり無茶とはわかっていてもこれしか方法はないな」


彼の目には尻尾に食らいつく少女の姿が映っていた。


そして大声で聞こえるように指示を出した。


「もう正攻法では勝てない!! なら、スララのエ・Gに賭けようじゃないか。一度や二度で諦める悪魔じゃないはずだ。全員、夢喰魚ゆめくいうおの進行を妨害して遅くする行動をとってくれ!!」


スララは尻尾の7割くらいを口の中に収めていたが、それを聞いて頭を掻いた。


「えエ~、ま、マたァ~!? ちョっトきツいんダけドなコれ……」


クラスメイト達は必死に喰らいつくように夢喰魚ゆめくいうおに妨害を始めた。


ここまで戦力が削れてくるともう決定打となる大きなダメージを与えることが出来るのはスララくらいしかいない。


この頃になると遠足している者たちは気づいていた。本当に全員が全力で同時に当たらないと決してコイツに勝つことは出来ないという事に。


一人、また一人と砂の高速弾で倒れていく。


背中の上のクラティスも応援旗に寄りかかったままマナのスタミナ切れでとうとう両膝をついた。


サンドリスも砂の砲弾で破壊されて、生徒達は吹き飛んだ


最期まで百虎丸びゃっこまるとイクセントは戦い抜いたが、二人ともマナのスタミナ切れで強烈な一撃を受けてダウンしてしまった。


尻尾に食らいついていた悪魔憑きも邪魔者の居ない思いっきりのスイングで吹き飛ばされてしまった。


「ぴゅいっ」

「ぴゅいっ」

「ぴゅいっ」


まるで警笛のようにピ・ニャ・ズーの鳴き声が鳴り響いた。


夢喰魚ゆめくいうおは悠々と阿鼻叫喚の砂の海を泳いだ。その姿、全く敵う者なしといった様子だ。


確かにクラスメイト達の腕や、対策も練り上がって来ているがまだこれで終わるとは思えない。


おそらくまだ何らかの隠し種を仕込んでいるはずだ。


その後、遠足のメンバー達は揃って簡易キャンプで悪夢をみてうなされるのだった。


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