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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter4:奇想天外!! 摩訶不思議!! 魔術学院ライフStart!!
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年長者って何歳なの?

全部の班が揃ったのはいいが、クラスメイト達の攻撃はバラバラ、ちくはぐだった。


味方同士の攻撃が当たりそうだったり、班ごとに別々に動いているのだ。無理もない。


そこで、百虎丸びゃっこまるが大声で叫んだ。


「全員でこやつに当たる際のリーダーを決めたいと思う!! 迎撃組は現状維持でこやつをひきつけておいてくれ!! 各班の班長は尻尾の後方にて集合!! たのむでござるよ!!」


それを聞いて班長達は夢喰魚ゆめくいうおの視線をかいくぐって後ろへ回り込んだ。


アシェリィ、百虎丸びゃっこまる、スララ、カークス、アンジェナというメンバーが揃った。


班長達に声をかけたウサギ耳の亜人は手短に提案した。


「こういった場合は多数決が早くてよろしい。遅くなってしまったが、この中から一人、遠足における総合の班長を決めようと思うでござる。一人一票、この中の誰かに入れて決めるのが妥当かと思うでござるよ。ではさっそく……拙者はスララ殿がいいと思うでござる」


指名された少女は訝しげな表情で自分を指さした。


「え”……アたシ?」


「わたしもスララさんがいいと思います」

「俺も同意見だ」


アシェリィとアンジェナもスララを推した。


アシェリィとしてはやはりその戦闘力、そして単身で突っ込んでいったりと緊急時にも動じない肝っ玉を評価してのものだった。


きっと百虎丸もアンジェナも同じ気持ちで彼女を推薦したのだろう。


「して、カークス殿は?」


そう問われた彼女は頬に人差し指を当てて考えた。


「そーだなー。皆がスララを推薦するならあたしもそれでいいや」


スララ以外の四人はコクリと頷きあった。だが、当の本人は反対意見を述べた。


「こクり。じャなイでシょ~!! わタしノエ・Gはセいギょガきカないトきガあルのシっテるデしョ!! リーだーニふカくテいヨうソがアっテはナらナいデしょ。ハい。やリなオし。わタしは”トらチゃン”ヲおスわ」


「ふ~む。そう言われてしまうとたしかにスララ殿にリーダーを任せるのは不適切……。ならば、残りの四人でもう一度、班長を決める……」


ウサ耳の亜人は視線を感じた。アシェリィ、カークス、アンジェナはじっと彼を見つめていたからだ。


「はぁ……わかったでござるよ。これでも一応年長者……。拙者の助力でなんとかなるならやってみようではござらんか」


年長者と聞いてアシェリィは彼が一体何歳なのかとても気になった。


空気を読んでここでは聞かなかったが、このフサフサケモケモの可愛げのある少年のような亜人が年長者とはにわかに信じがたい。


ギャップ萌えというやつだろうか。緊急時だというのにぼんやりとそんな事を考えた。


「拙者やスララ殿は前線に出なくてはならんでござる。故に視野が狭くなりがち。よって中・後衛への指揮や緊急時の指示はアンジェナ殿にお願い申す。アシェリィ殿とカークス殿は自分の能力を発揮する事を第一にして欲しいでござる。では、いくでござるよ!!」


お互いに声を掛け合うと班長達は散った。


そのままサーフィンするようにエ・Gの上に乗ったスララは後方から夢喰魚ゆめくいうおを猛追して、今回も尻尾にとりついた。


味方を爆撃しまくっていたカークスだが、なんだか別人のように穏やかになっていた。


無闇矢鱈に花火は撃たず、しっかり敵味方を識別するようになった。


おそらくこれは同じ班の亜人、通称はっぱちゃんの精神を潤す効果が強く出ているように思えた。


現に、あれだけ荒んでいたチームメイト達ともうまくやっているようである。


こういうところまで計算されて班員が構成されているのかと思うと、なんだか自分たちが徹底的に分析されているような気もしてあまりいい気分はしなかったが。


アシェリィはマナボードに乗って後方から横っ腹の位置へと遠足の指揮を百虎丸びゃっこまるが担当すると伝えながら移動した。


このままだとノワレなどの後衛が無防備なのでサンドリスを一枚召喚しておいた。


そして魚の上のクラティスと目があったので、効果抜群の連携技の構えをとった。


雷雲が空をみ、まるでコーヒーにクリームを垂らして混ぜるかのように応援旗で雷を撹拌かくはんする。


するとキラキラと旗が輝き出した。


「今だッ!!  天来てんらいッ!!」

「ドーナツー・ツー・リング・リング……」


「レイドヴォルト!!」

「レイドヴォルト!!」


二人は会ったばかりで大して言葉も交わしていなかったが、不思議と技の相性が良かった。


性格がどことなく似ているからだろうか。今回も小気味よく連携技を決めた。


バリバリバリと轟音を立てて旗に強烈な雷が落ちた。同時に夢喰魚ゆめくいうおが帯電する。


「な、なんだって!? もう抵抗が出来てるだって!?」


その様子を見ていた百虎丸びゃっこまるはヒゲをピクピクさせた。


「むっ!! 雷に抵抗あれど、怯んでいることに違いなし!! 攻撃出来る者は総員攻撃―――ッ!!!!」


「おっらぁ!!」


巨大な歯車”マッドネス・ギアー”のガンが一番乗りに体当たりをぶちかました。


無抵抗な状態で強烈な一撃を受けて化物はよろけた。


それを同じ班のファーリスとリッチェが援護する。


「ミリオン・パイク!!!!」


無数のトゲ状の髪の毛がターゲットを猛烈な勢いで突く。


「アクア・マクマ!!」


ピアスから空中にシャボン玉が漂う。パチンと指を鳴らすとそれが爆発した。


彼等は攻撃を与えると左右にはけていく。反撃をかわすのは囮役のイクセントの役目である。


アタッカーが仕掛けて、彼がかわす。このフォーメーションが固まってきつつあった。


一方、腹の下ではタコ人間が奮闘していた。


彼は最初の時と同じく、下からターゲットを突き上げる任務についていた。


なんども潜ろうとする化物に押しつぶされそうになったが、彼の軟体はそれに耐えた。


イクセントのように囮になる事も出来たが、張り付いたり、弾力で攻撃をかわすのは彼にしか出来ない。


よって彼は今回もこのポジションに居た。


「突き突き突き突きィーーー!!!!」


槍やドリルを突き立てまくって砂に潜るのを必死に妨害する。


中距離ではノワレと田吾作たごさくのコンビが活躍していた。


「うっし!! この種をたのむ!!」

「わたくしに指図なさらないでくださる!?」


エルフの手の内でポコポコと野菜が実っていく。


「うおおおおおおおおおお!!!!! かぼちゃ爆弾!!!! でりゃあああああ!!!!」


筋骨隆々な青年が大きなかぼちゃを投げつけると大爆発が起こった。


思わず上に登っているクラスメイト達が振り落とされるレベルである。


「もっと!! もっと投げるだよ!! はやくはやく!!」

「もうっ!! だからわたくしに指図なさらないでくださる!?」


またもやポコポコと実ったかぼちゃを次々と投げていく。


彼は野菜の無い環境ではてんでダメだったが、逆に野菜さえあれば鬼に金棒だった。


「次はゴンボウだ!! ゴンボウうぃっぷ!!!! でりゃあああああああ!!!!!!!」


両手にゴボウを持って振り回しつつ、恐れ知らずに突っ込んでいく。


そのさまは扱う武器とは裏腹にとても勇ましかった。


「土臭い野菜になんて負けていられませんわね。わたくしはこの優雅な弓で!!」


ノワレは軽やかにローリングしてアシェリィの出したサンドリスの陰に潜った。


中・後衛、治療班達はここを拠点にしていた。


ここならば砂鉄砲を喰らわずに済むからだ。


その隅でエルフの少女はガタガタと震える班員の姿を見た。


「ぼぼぼぼぼくは、たたたたたたかうために、にゅにゅにゅにゅうがくしししししたんじゃ、なななななないんだ……。ふふふふ、フライトクラブににゅうぶするために……すすすすすするために……」


ノワレはそれを見て頬に一発ビンタでもくれてやろうかと思った。


だが、こんな奴にビンタをくれるのさえ勿体無いと、まるで虫けらを見るような目で少年を見下した。


「いいご身分ですわね。そうやって怖がって現実逃避していればいつかは終わるのでしょう? 貴男、今までどうやって生きてきたんですの……? この”愚図ぐず”」


声をかけるのさえ無駄だと感じていたが思わず罵倒してしまった。軽く自己嫌悪に陥る。


「はぁ……最低ですわ。一生そうしてらっしゃい」


なんだか嫌な匂いがしたので隣を見るとガリッツがレーザー光線を放っていた。


(戦ってる分、幾分かマシですが、この臭いとビジュアルは本当に生理的に無理……無理ですわ……)


後衛が攻撃を仕掛けている間に、アシェリィが戻ってきた。


サンドリスの召喚とフェンルゥーの召喚で相当消耗しているようだった。


「お疲れ様~。ささ、これをどうぞ」


確かミラニャンと言っただろうか。貴重なマナ回復要員である。目につくのはぽっちゃりむっちり体型といったところだ。


(いいシェフは太っているといいますが、つまりそういうことなのかしら?)


ノワレは無意識のうちに彼女を侮辱した。


「はい。ココロン・チョコだよ~。おいしさのあまり。ベロが伸びるんだ~」


「え”……? ふむっ、ぐっ!!」


抵抗する前にアシェリィはチョコを口に押し込まれてしまった。


周囲の面々はまさかスイーツにまで副作用があるなんてと青ざめた。


「な~んてね。どっかのインイチお医者さんじゃないんだから安心してよ~」


「あ、ベロ、伸びてない……」


少女はベロをチロチロと動かした。


「フフフフ……いけませんねぇそういう冗談は……いけませんよ本当に……」


ドクの発言にその場の皆はなんだか呆れて気が抜けた。


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