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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter4:奇想天外!! 摩訶不思議!! 魔術学院ライフStart!!
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覚悟せざるをえないのに?

前回も後方で様子をうかがっていたアシェリィは気づいた。


この直後、夢喰魚ゆめくいうおが猛烈に回転して切り裂く旋風を巻き起こすことを。


明らかに見たことある挙動なのだ。これにはほぼ確信が持てた。


これだけ攻めが上手く行っているのに撤退指示を出すのはどうかとも思えた。


だが、このままでは間違いなく前回と同じ二の舞を演ずるだけだ。アシェリィは力を込めて叫んだ。


「全員、旋風攻撃につき撤退!! 前衛も一旦退いて!!」


突然の撤退命令に戸惑うものも少なくなかったが、ここはひとまずと全員が化物の側から距離をとった。


その直後だった。巨大な身体をビュンビュンと回して青い旋風があたりに広がった。


何とか撤退指示は間に合い、スララ以外は竜巻旋風を避けきった。


悪魔憑きの少女はというと尻尾に喰らいついたまま派手に振り回されている。


あの段階まで飲み込むともはや簡単に切り離すことが出来ないようだった。


「スララは気にするな!! 問題はあの旋風をどうするかだ!! ちょっとやそっとの攻撃じゃあれを破ることは難しい。正直、この人数で攻めるのは無謀だ!! しかも、こういうときに限って砂瘴さしょうが来る!! 吹きとばせそうな人は警戒してくれ!!」


どんどん夢喰魚の嵐の範囲は広がっていってやがて後衛の控えるドクのラインまで広がっていった。


「くそっ、これじゃ手も出せない!! おっ!? さらに撃ってくる!?」


なんと、旋風をまとった青い魔導生物はその状態を維持したまま体中の砂吐き器官から熱い砂を吹き出してきたのである。


今度は小さな弾だけではなく、大砲弾のような巨大なものまで飛んできた。


スララ以外は限界まで後ろへ下がっていたが、ちらほらこちらまで弾が飛んでくる。


被弾して打撲したり、やけどしたりするものもちらほら居た。


夢喰魚ゆめくいうおの勢いが衰える気配はまったくない。


これならまだなにかの能力や力を隠していてもおかしくはなかった。


開始一週間、思ったより早く終わるかもしれないという期待が儚く消えた瞬間だった。


「くぅ!! ギリギリ一枚!! カバードサンドイェロー!! サンドリス!」!


アシェリィは残った力で一枚サンドリスをび出してそれにもたれかかるように座り込んだ。


くらむ視界で前を見ると残ったのはフォリオ、イクセント、クラティス、ポーゼ、ドクだった。


ずいぶんと戦力が減ってしまったものである。自分とフォリオを抜いてスララを入れると五人しか残っていない。


「はぁ……はぁ……私はもう意識と盾を保つので限界。もう動けないよ……。指揮権はクラティスさんに……」


息を荒らしながらアシェリィは手を指しだすとクラティスと力なくハイタッチした。


「しっかし、どうするかねぇ。人数も激減してるし、正攻法じゃ勝てないぞ。となるとスララ頼みになるわけだが、丸のみに出来なかったんだろ?」


そうチアガールの少女がイクセントに尋ねると彼は目をつむり、首を左右に振った。


「はぁ~。だよな~。幸い、守りは万全なんだけどな。突進でもされない限りはこの砂の板は破壊されそうにない。まぁこんなとこで引きこもってると今度はタックルしてくるだろうけど。現状じゃこうやってポーゼが焼くしか出来ないし」


大きなマナライトを盾の陰から構えてポーゼは強力な光線を照射していた。


手応えはそれなりにあるが、戦況をひっくり返す強力なダメージソースとまではいかなかった。


ドクはあくまで傷や怪我、毒などの治癒で、マナを回復することは出来ないため、アシェリィに対しては何もしてやることができなかった。


こうなるとスララを信じてクラティスとイクセントで突っ込んでいくしかもう手はなかった。


「覚悟は?」


「せざるをえないのに聞くのか?」


「あいわかった愚問な」


盾の陰かかイクセントが飛び出した。結局、夢喰魚ゆめくいうおの気をひきつけてスララに飲み込んでもらう戦法をとった。


「わるいけど、あたしはあんたみたいに器用に回避できないから囮はたのんだよ」


「フン……」


少年剣士は飛んでくる砂鉄砲と旋風をステップしてを避けつつ、相手の懐に入り込んだ。


「ヒュ~やる~。どうやったらああなるんだ?」


「おしとやかさが足りませんねェ……」


ポツリと言ったドクの頭をゲンコツが襲った。


魔導生物の意識を引きつけることに集中したからか、化物は猛回転をやめた。


それと同時に切り裂く旋風も止んだ。同時にクラティスも盾から飛び出して攻撃を加え始めた。


「なんだよ、こんなんならはじめっからイクセントに突っ込んでもらえばよかったじゃんよ」


そうは言うものの、なかなか危険のど真ん中に突っ込んでくれとも言えないわけで難しいなとクラティスは頭を軽く掻いた。


飲み込めないとは言っている割に、スララは夢喰魚ゆめくいうおの尻尾を飲み込みつつあった。


これが結構効いているらしく、ターゲットは苦しげに宙でもがいた。


「あいつらホントに化物に劣らず化物やってんなぁ。あたしも負けてらんないかな?」


クラティスは砂を蹴って高く飛び、またもや応援旗のホックを外してクルクルと回して滞空した。


そして、背中に着地してイクセントを狙う器官を連続突きで黙らせた。


本来、二十五人で当たるところを四~五人で当たっているのである。


無理が生じないわけはなかったが、それなりに上手く回っていると言えば回っていた。


疲労したり、怪我を負ったら盾まで逃げてドクの治療を受け、再び攻撃を仕掛ける。


腕利きの集まりでないと出来ない戦い方だったが、現時点では上出来と言えば上出来だった。


だが、戦っているメンバーたちは薄々と更に別の攻撃が来ることを悟っていた。


まるで徐々に相手を鍛え上げていくかのように段階的にこの夢喰魚ゆめくいうおはパワーアップしたり、行動のパターンを変えてくる。


そろそろ、また何らかの新たなる攻撃を仕掛けてくる頃だった。


「来るッ!!」


イクセントは大きく後方へとステップした。すると彼の足元から化物の角が飛び出した。


立て続けに角が突き出していく。夢喰魚ゆめくいうおは身体から突き出した角を砂に突き立てていた。


どうやらそれがこちらにむけて飛び出してきているらしい。


後方で砂の盾が吹き飛ぶ音がした。例の角にやられたのだ。


振り向くとアシェリィ達、生き残りが無残にも宙に吹き飛ばされていた。


これで残るはスララ、イクセント、クラティスとなってしまった。


おまけに全員が相当疲弊していた。


「ここま……でか……」


応援旗の少女は角の一撃をモロに喰らってダウンしてしまった。


「くっ……」


イクセントもマナのスタミナが切れて立膝を立てているところを狙われた。


スララも踏ん張ったが、内から外から角の猛攻を受けて耐えきれずに尻尾を振られ、その勢いのまま、遠く彼方へと吹き飛ばされてしまった。


だんだん粘れる時間も戦略も固まってきたが、まだ彼らの詰めは甘いと言えた。



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