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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter4:奇想天外!! 摩訶不思議!! 魔術学院ライフStart!!
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彼のメモリー、星達のメモリー

星詠ほしよみの青年は昼間にもかかわらず”夜空”を見上げていた。


今回は仰向けになって手を握ったり、開いたりしている。


まるで蝶々とでも戯れるような仕草で青年は星をんだ。


「散り散りになった星たちと俺達が出会うことになるだろう。だがとてつもなく大きな困難に襲われることになる。俺達が星たちとの接触を避けることも出来る。が、今回は下手に逃げ出すとかえって痛い目を見そうだ。これが我が班はじめての他の班との再会になるな……」


いままで予言によって他班との合流を避けていた班員達はこの結果に沸いた。


「やったぜ!!」

「やっと他の班と合流できるのね……」

「心細くなかったかと言えば嘘になるな」

「あっしらもいよいよ大物との対決ってことですな」


一同は互いの顔を見合って頷きあった。そしてアンジェナは言った。


「星を追えば彼らに会えるはずだ。さ、行こうか」


彼を先頭にして五班は行動を開始した。


一方、シャルノワーレ、クラティス、ドクのドタバタ三人組は順調に砂漠を探索していた。


「ふっ!! ふっ!!」


鋭いメスをモンスターに投げつけてノワレが撃破した。


「お~、すげ=」

「フフフ……マジ……ですか……。私より上手いのでは……?」


ドクが武器にしているのメスや手術器具に対してノワレが”WEPウェップメトリーー”してその武器の記憶を読み出して戦ったのである。


武器とは言っても”武器として使用されているもの”ならなんでもメモリーを読み取ることが可能だ。


WEPメトリーをするたびに使い主の記憶が脳内に流れ込んでくる。


―――ウィンサー!! 死ぬな!! 死ぬんじゃない!! 今助けてやるからな!!! 出血がかなり多い……脈が……脈も無い!! ウソだろ!? 血は止まった。なら心臓マッサージを!! いや、電流を流すッ!! ドンッ!! ドンッ!!ドンッ!! ……くそぉ……くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっっっ!!!!―――


―――今度は死なせない!! ウィンサーの分も君が生き延びるんだ!! そんな……ウソだろ……!? この反応……樹化じゅかの病じゃないか……。水解症すいかいしょうと同じく、現代医学ではどうしようもないと……。ふざけるな!! 俺は……俺はそれに抗ってやる!! え? はは……冗談だろ? さっきまで喋ってたじゃないか……。なんで、なんで喋らないんだ。はは、冗談だって言ってくれよ。じょ、冗談だって……うわああああああああああああああああああああああぁぁぁぁっっっ!!!!! ―――


シャルノワーレは吐き気を催す程のメモリーを読み取った。


思わず目眩がしてよろけた。そこをクラティスが抱きかかえた。


「おっと、大丈夫か?」


「フフフフ……ふ~む、顔色が悪いですな。エルフは暑さに弱いと言いますからね……フフフフフ……」


ニコニコしながら不気味に笑う彼だが、そうでもない時期があったらしい。


ノワレのポリシーとしてはWEPウェップメトリーで読み取った内容は口外しないというものがあった。


そもそも他人からするとどこまでメモリーを読み取っているのかわからない。


自分のプライベートや過去まで知られるとなると良い気はしないだろうという彼女なりの配慮だった。


彼女はそういう変なところで気が利くのだった。


「いえ、わたくしは大丈夫ですわ。さぁ、探索の続きをいたしましょう。わたくしの班は気に食わない連中ばかりでこちらのほうがまだマシだと思いますわ」


エルフの少女は水色の長髪をかきあげてそういった。


「ひえ~、マシとか言っちゃうかな」

「フフフフ……否定されないだけマシなのでは? フフフフ……」


そんなやり取りをしていると三人は視線を感じた。


振り向くと砂丘の上に五人の影が見えた。


「あっ!!」

「おっ!?」

「フフフフ……」


その五人はすぐにこちらに歩み寄ってきた。


「俺達は五班のメンバー。そして俺がリーダーのアンジャナ・アルバトリオンだ。君たちは……? 見たところ別の班が混じっているようだが……?」


そう問われるとクラティスが代表して自分たちの状況を説明した。


「なるほど、分隊か。考えたな。誰もそれは禁止していないし、ルールにも引っかからないからな。ただし、腕に相当自信がないとやってのけられない芸当だ。感心するね」


「フフフフ……どういたしまして」


ドクはペコリとお辞儀をした。


「出会ってすぐで申し訳ないんだが、すぐに熱砂クジラが来る。我々の班は他の班の合流を援護するためにターゲットを引きつける陽動作戦に出るつもりでいる。よければ力を貸してはくれないだろうか?」


そう言ってアンジャナは深く頭を垂れた。


すぐに姉御肌の少女は答えを返した。


「おいおい。そういう水クサイのは無しだよ。さ、頭を上げて。どうせあたしらもそのうち自分の班と合流しなきゃならないんだ。ここらへんで玉砕覚悟で、結果リタイアしておくのも賢い選択さ」


それを聞いた鼻のとんがった青年は無言のまま頷いた。


その後、互いのメンバーの紹介が始まった。


シャルノワーレは人間を小馬鹿にしている節があるのでクラスメイトにほとんど興味がなかった。


改めてここで観察しておくことにした。


まずはリーダーのアンジャナ・アルバトリリオン。


とんがり帽をかぶり、茶髪で背が高くて落ち着いた大人の雰囲気を持つ青年だ。


星をむというよくわからない能力の持ち主だが、早い話が未来を占うことが出来るらしいということである。

にわかには信じがたいが、対して腕っぷしが強く無さそうな彼がバトルロイヤルに勝ちぬいた理由がそれ以外に見当たらない。


少し先の出来事の予言と危機を回避する事はハッキリとわかるが、将来の細かい予測までは一切出来ないという。


次に金髪で蒼い瞳をした見るからに熱血漢な男子だ。彼の名はガン・ビゼー。


ノワレは汗臭くて生理的に無理とぼんやり思った。


彼は”マッドネス・ギアー”という歯車のマジックアイテムの使い手だ。


普段は小さく、ポケットに収まるくらい歯車だが、戦闘時になると巨大化して暴れまわるという。


味方を巻き込みそうな能力だが、絶妙の操縦テクニックを持つらしく、うまい具合に敵だけを蹴散らすとのことだ。


次も男子だ。この班は男子が多めである。


背丈が小さいが、大きなリュックを背負った少年が居た。


ベージュの探検帽子を被っていて、酷く猫背だった。


彼は名をグスモ・レークと言った。


罠のスペシャリストらしく、その荷物の中にはありとあらゆる荷物が詰まっているらしい。


罠師という能力から前衛での戦いやスピード感のある戦いでは活躍しにくいが、罠を仕掛ける時間さえあれば強烈な攻撃や妨害が繰り出せるという。


メインディッシュにはなりにくいが、いぶし銀的な趣のある能力者である。


次は女子だ。勝ち気なイメージで燃えるような真っ赤な短めの髪の毛をしている。名前はリッチェ・ライハンネスだ。


彼女の特技はなんと髪の毛が伸び縮みするということである。


更に硬化することも出来るらしく、鈍器のように髪の毛を振り回して戦ったり、槍のように運用することもできるらしい。


自己紹介でその様を見せていたが、伸びた髪がニュルニュルと触手のように肩、腰と伸びていき、やがて足元まで真っ赤な毛で染まった。


ビジュアル的には結構気持ち悪いが、使い道は多そうで頼りになるだろうと思えた。


最後にプルシアンブルーの髪色でミステリアスな雰囲気を醸し出している女子だ。


彼女はファーリス・シルファ。オシャレなピアスが目を引くなと思っているとピアスを使う能力者らしい。


ピアスで相手を追尾したり、魔術的反応を起こして攻撃したりするという。


ビットのような使い方をすると彼女は説明していた。彼女の能力もかなり強力ではないだろうかと聞いただけで思えた。


なんでもピアスを付け替えることで性質や属性も変化できるという。


アンジェナ、ガン、グスモ、リッチェ、ファーリスで五班の面々は構成されていた。


それに続いてドタバタコンビも自己紹介を始めた。


互いの紹介をして理解が深まった頃、まるでそのタイミングを待ち受けていたかのように地響きがしだした。


これは間違いないヤツである。アンジェナが声をかけた。


「熱砂クジラか!! 俺は今のモードでは戦闘で役には立たない!! 一歩引いたところからフォーメーションなどの指示を出す!! 気に食わないこともあるだろうがご助力をお願いする!!」


彼の言葉にその場のほとんどが頷いた。


「フォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンン!!!!!」


地震のような揺れを伴って、怪物は姿を現した。


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