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楽土創世のグリモア  作者: しらたぬき
Chapter4:奇想天外!! 摩訶不思議!! 魔術学院ライフStart!!
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Five Brilliant Stars

タレ目でおっとりしていて、不思議ちゃんのオーラを強く放っている。


前にあったときもだったが、喋り方に強いクセがあって、それが気になった。


「おツぎは”とラ”ちャんネ。うフふ……」


スララは手のひらを振って横の亜人に自己紹介を振った。


「拙者、百虎丸と申す。百の虎をも退けるというのが名前の由来でござる」


赤茶色の毛並みにうさぎのような長い耳、ヒゲに顔の左右のタテガミが目立つ。


名前に反して見た目はファンシーでぬいぐるみのようだ。


”とらちゃん”と可愛がられて呼ばれるのも無理はなかった。



彼はかなり小さく、ジパの大人が振るう刀を一本背負っていた。


「拙者、恥ずかしながらこの身長。故にこの刀、”飯倉西蔵”を大太刀のようにして剣術を使っているでござる」


そう言うとウサギ耳の亜人は背中に背負った鞘から軽く抜刀して見せた。


きらりと刀身が輝いた。思わず剣から魂を感じさせる感もある。


ネコのような肉球ハンドを両方使って構えたり、振ったりするようだ。


今度はそのとなりにいる、またもや亜人が自分を指さした。


だが、彼の指というか足には吸盤がついて、しかもウネウネしていた。


頭は丸く、人間とタコを混ぜたような姿をしている。


デビルフィッシュタイプの亜人に分類されそうだが、彼らに嫌悪感、というか恐怖の念を抱く人も多い。


それは世間一般の話で、亜人が多く在籍するリジャントブイルではそんな事を言っていられない。


だから学院生達は亜人への差別をほとんどしなかった。


「あ~チクショー!!! 見てくれよ俺のこの自慢の10本足がよ~!!!! 四本も、もってかれちまったじゃねーか!!!! あのクソアマはよぉ!!!! 俺ぁ、勝手に元に戻るから問題ねーけど、もし人間だったら滅茶苦茶痛ぇし、状況が悪きゃ手も足ももどっちゃこね~んだぞ!!! あぁ!?」


確かに観察すると足が何本が切断されている。だがあまり痛がっている風にも見えないし、さして切断されても問題も無いようだ。


「第一な、あの花火ガキはリーダーとして全く機能してねーんだよ。バトル・ロイヤルを力だけでねじ伏せたんだからどうしょもねぇよ!!!! やれ敵に会えばところかまわずぶっ放しやがる。巻き込まれるこっちの身にもなれつってんだよ!!! 俺ら、何回爆撃すりゃ気が済むんだ!!! そのくせして本人は滅茶苦茶打たれ弱いしよぉ!!! 初日で何回全滅したかわかりゃしねーぞ!!!! いい加減にしろつってんだよ!!!!」


タコイカ星人は理不尽な班長に対して怒りをぶちまけた。


残った手には剣や槍、盾、斧など多種多様な武器が握られている。


見ただけであらゆる武器の熟練度が高いのが見て取れた。


「ハーーーーッ!!!! 愚痴ちまってわるかったな。これが初の別班との出会いだったから聞いてもらってすっきりしたぜ!! 俺は”ニュル・ニュ・ヌル”だ。よろしく頼むぜ」


怒りっぽいのかなとその場のメンバーは思っていたが、どうやらそうでもないらしい。


最後にイクセントに視線が集中した。彼はポケットに手を突っ込みながらハキハキとしない態度で答えた。


「僕は……イクセント。見ての通り剣を使う。ただ、百虎丸とはまた剣技の流派も違うし、僕はどちらかといえば剣技と魔法を組み合わせて戦う”グリモアルフェンサー”だ……。あとは戦いを見ればわかるだろ」


彼は若干スレては居たが、普段の所作などが丁寧であり、非常に礼儀正しかった。


それがたとえぶっきらぼうでも他人に好印象を抱かせる要因になっていた。


顔も整っている。それはまるで少女そのものといっていい程で、密かに女子の話題に上がることもあるくらいだ。


本人はその気は無いらしいが、どこかカリスマなようなものもある。


「さテ……」


互いの紹介が終わるとスララが口を開いた。


「もシかシて、こノよニんプらスあルふァナら、ネっさクじラにカてルカも……。


それを聞いて四人の顔色が変わった。


「なにか策でも思いつたでござるか?」


百虎丸のその問いに答えが帰ってきた。


「…………じツはワたシ、あクまヲかラだニきセいサせテいルの」


そういうと彼女は突如として自分の口の中に指を突っ込んだ。


そしてそのまま抉るように手を動かした。


「ぐッ、オ、おエえエえエえエっッっッーーーーーーーーー!!!!」


吐瀉物を吐く時の生々しくて嫌な音がした。その場の全員が気分が悪くなった。


その直後、真っ白な巨大な舌が彼女の口いっぱいから出現した。


彼女以外のその場の全員が驚いた。また出てきたベロも真っ白で巨大で気味が悪い。


「こノこハ”エ・G”。こノすナノくボみモこノこがタベタのよ」


空間を改めて見直すと結構広い。しかも、熱砂クジラの落下からほとんどかからずに砂を食べたということだろう。


「で、イちカばチか、くジらヲまルごトのミこンで、”エ・G”(エゲ)のナいゾウなイでおシつブしテみタらッて」


サラリと凄いことを提案し出した。これだけ巨大な物体を飲み込もうとしているのだ。


しかも、飲み込みさえすれば圧殺出来るというのだ。そんなことが出来るとするなら光明が指した。


ただ、どんな強力な魔術の使い手でもリスクや弱点と引き換えに長所を伸ばしている。


スララがこのパラジティズム・エヴィルに体を蝕まれているのは確実だった。


一体どれだけの負荷や障害が発生しているか他人からはわからない。


せっかく遠足を終えるチャンスが来たかもというのに他の三人は思わず黙ってしまった。


「ふフふフ……わタし、ミんナのソうイうカお……キらいヨ。さ、はヤく、カえりマしョ!!」


くぼみの中の小さな星達は互いの顔を見合わせて大きく頷いた。


頭の上の化物が花火爆撃でひるんでいるスキに策は練られた。


花火少女も少女でスタミナ底知らずといったところだ。


ターゲットを飲み込むにはまず、進行速度を遅くする必要があった。


今は花火で食い止めているが、この速度では”エ・G”で飲み込むことは出来ないらしい。


正面から妨害する役はイクセントが買って出た。あの猛烈な弾幕を回避しつつ邪魔できるのは彼以外に居なかった。


次に熱砂クジラは背中に砂を大量に噴きだす噴出孔がある。これを破壊しないと花火師が狙い撃ちされてしまう。


そこで、手足の爪で身体の表面を駆け上がれる百虎丸がこの担当になった。


そして、魔導生物には地面に潜るという能力もある。誰かが腹部を突き上げるように攻撃しなければ逃げられる可能性があった。


これは武器デパートのニュルがやることになった。


おまけに彼は吸盤で張り付けるため、振り落とされないし、弾力もあるので押しつぶしにも強く適任だ。


急仕立てながらも、なんとか作戦を立てた四人はコクリと頷き合うとミッションを開始した。


「じゃあいくぜ。覚悟はいいな?」


それぞれが戦闘態勢に入ったのを確認するとタコ野郎は武器の一つ、ドリルを頭上に構えた。


「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらああぁ!!!!!」


思いっきり下から腹部を突っつきあげて頭上のモンスターの腹部に強烈な一撃を加えた。


肉が抉れていくのが見て取れる。それに反応してクジラは浮上し始めた。


真っ暗なポケットが開くと、いつのまにか雲が晴れていた。


オレンジ色のティラレ月が暖かく砂漠を照らす。


戦うには十分な明るさで、とても都合が良かった。


百虎丸は着流しに袴の出で立ちで、わらじを履いていた。


そのわらじを脱いで、懐に入れると目の上の腹部に爪を立てて張り付いた。


そして勢いよくクジラの腹、横腹と猛スピードでかけあがっていった。


「ヒュ~。やる~。ところでイクセント、お前は?」


そう問われると無言のまま彼は口の方へ駆け出した。


すぐに化物の正面へと回った。口は非常に大きく、下手をすると噛みつかれたり飲み込まれそうだ。


相変わらず花火爆撃は続いており、またもや少年剣士はそれを避けた。


「チッ。鈍魔の錨爪!! クライミー・シュヴー・ロン!!!!」


詠唱が完了すると水色の大きなツメが5本、イクセントの指から伸びた。


彼がそれでクジラを思いっきりひっかくとツメがうまい具合にひっかかった。


すると急激に巨体のスピードがだいぶ遅くなった。


それもそのはず、クライミー・シュヴー・ロンは引っ掛けた相手に重力をかける呪文だからだ。


ダメージもそこそこなので優秀な魔法である。


小さな少年がぶらさがっただけなのに嘘のように重しがかかっていた。


しかもツメを引っ掛けたまま体表を移動しつつ、かつ花火も避けていた。


超人的と言っていい程の身のこなしである。


この活躍のおかげで、スララはうまい具合に飲み込み作業を開始出来ていた。


真っ白に赤い紋様のある”エ・G”のベロで左後方部にとりついた。


そしてそのまま大口を上げた。誰も見ている余裕が無かったが本体が現れ始めた。


少しずつ口は開いていく。スララ本体はまるで飾りのようにブランブランと揺さぶられるだけだった。


熱砂クジラの頭部に到着した百虎丸は驚いた。


「前回戦った時はわからなかったでござるが、まさかこの穴の数は!!!」


頭部から背中にかけて砂の射出口が見えた。


彼の経験からすると、熱砂クジラの砂吹きは基本的には対空迎撃に使われるが、狙撃も可能なことを確認している。


攻防一体のいやらしい部位だった。


おまけに自己修復器官までついている。これを潰すだけでも数人は必要だと思えた。


ウサ耳亜人は考えた。今、噴射口を破壊すべきではないと。


駆け回って花火娘へ攻撃がいかないようにするのが妥当だと思えた。


百の虎をも狩るファンシー剣術士は両手で背中の刀を抜いた。

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