その9
昼食を済ませると薬草の採取場所に向かった。マンガ肉食べたかったな……
肩を落としながらしょぼくれて歩いているとフレアに聞いた採取場所へと着いた。
アルカンの街から一時間ほど行ったところにある森の西側、その森の前に群生地があるという事だった。
正式な依頼書と一緒に薬草の絵の描かれたものも渡されていたのでキョロキョロと辺りを見回してみる。
おっ、あれがそうじゃないか? 近づいて絵と見比べてみる。
同じだな、これで間違いないだろう。Fランクの初歩的な依頼だこんなもんだろうと思い更に周りを見渡し薬草を採取していく。
持ってきていた袋一杯に薬草を取り終え、一息ついた時に少し離れた森から何かが飛び出してきた。
子供? 恰好を見る感じだと冒険者、ワシと同じ新米冒険者ってところか。三人おるな。
必死で走るその三人の子供らの後ろからさらに何かが飛び出してくる、魔物だ。
薬草の入った袋を放り投げ駆け出す。あれは何とかボアだな、あいつは美味かった。前に倒したのより小さいが今日の晩飯にしよう。できればマンガ肉風で!
少し離れたところを横切っていく新米冒険者の後ろにいる何とかボアに照準を定め、走りながら刀を鞘から抜き側面から一気に振り下ろす。
惰性で少し進んだところで何とかボアはドサっと音を立てて横たえた。
「た、助かった……」
後ろを振り返りながら逃げていた冒険者たちは魔物が倒されたのを見るとそう言ってその場にへたり込んだ。
「お主らケガはないか?」
冒険者達にそう声をかけ刀を鞘に納める。
「ありがとうございます、助かりました」
三人は立ち上がり口々に礼を述べてくる。
「気にせんでいいわい、晩飯が捕れてこっちも助かる。今度こそマンガ肉じゃ」
「まんがにく?」
流石にマンガ肉は通じないみたいだな。
「あ、すいません。俺は冒険者のケインです。Eランクです」
「俺はフィルです、同じくEランクです」
「ぼ、僕はダート、Eランクです」
礼節をわきまえた良い子らだな。
「ワシは十兵衛、今日冒険者登録を済ませたばかりの新米冒険者じゃ。Fランクじゃの」
礼には礼をもって返さないとな。
「え、Fランクなんですか? でもワイルドボアをあっさりと……」
なるほど、さっきの魔物はワイルドボアというのか。
「さっきのワイルドボアはワシに気付いて居らなんだし、何せこやつがなかなかの業物での」
腰に差した刀をポンと軽く手で触れて見せる。
「確かに、すごい斬れ味でしたね」
ケインがそう言うとフィルとダートもコクコクと頷く。おそらくこのケインという少年がリーダー的な存在なのだろう。
「ところでちょっと相談なんじゃが、あのワイルドボアを街まで運ぶのを手伝ってはくれんか? 晩飯にしたいんじゃが」
「それぐらい全然かまいません、任せてください」
ケインの言葉にさっきと同じようにフィルとダートが頷いている。素直な良い少年達だな。
「そうだ、良ければいい店を紹介しますよ。街に入ってすぐのところにあるんですけど肉も買い取ってくれるし何より料理がおいしいんです」
「それはいいの、じゃあ街まで戻るとするか」
そして三人がワイルドボアを、ワシが薬草を詰めた袋を持って街まで戻ることにした。
街に戻り少し進んだところでケインが足を止め指さす。
「あの店です、俺達もよくあそこで飯食べてるんで店の主人とは顔見知りなんです」
ケインが指さした店は薬草採取の前に立ち寄った店だった。
「あそこか、ワシも昼をあそこで食べたんじゃ。なかなかうまかったの」
マンガ肉じゃなかったけど。
その後、店で肉を買い取ってもらい冒険者ギルドに薬草を持って行くことにした。ワイルドボアは解体し終わった後ギルドで買い取ってくれる素材を渡すという事だったので夜にまた来ると伝えておいた。
「俺達も依頼の報告があるので一緒に行きます」
ケインたちも依頼の方は達成していたようで冒険者ギルドまで連れ立って行くことにした。
「おかえりなさい、十兵衛さん」
受付ではフレアが対応してくれた。
「無事戻ったぞ、薬草の方を確認してくれるかの?」
採取してきた薬草を袋ごとフレアに渡す。
「はい、かしこまりました。では確認いたしますのでホールで少しお待ちください。確認できましたらお呼びいたしますね」
そう言うとフレアは薬草の入った袋を持ってカウンターの奥にある扉に入っていった。
確認が終わるまで待っていろという事だったので次の依頼は何にしようかと掲示板を見に行くことにした。
「十兵衛さん」
掲示板を眺めているとケイン達が声をかけてきた。
「ケインか、依頼は無事達成かの?」
「はい、最後は危なかったですけど十兵衛さんのおかげで無事達成です」
ほんとに素直な子達だな、冒険者って言うのはもっと荒くれ者ばっかりのイメージだったんだけどそうでもないみたいだ。
「ところで十兵衛さんは次の依頼ってもう決めてますか?」
「いや、今どれにしようかと見に来たところじゃよ」
そう言うとケインは目を輝かせて話しかけてきた。
「で、では次の依頼一緒に行ってもらえませんか?」
おー、パーティーへの招待か面白そうだな。
「こんなジジイで構わんなら喜んで引き受けよう」
「本当ですか、ありがとうございます!」
見た目がジジイなんで誰かとパーティーを組むというのは半ば諦めていたので素直に嬉しい、まあ中身もジジイだけど。
「では依頼の件で色々と話しておきたいんですけど」
「それならさっきワイルドボアを買い取ってもらった店で飯を食いながらでどうじゃ?」
「いいですね、では後ほどさっきの店で落ち合いましょう」
その後、薬草の確認も終わり依頼の報酬を受け取るとフレアから教えてもらった宿屋に部屋を取り近くの雑貨屋を見て回った後、約束の店へと向かった。
「十兵衛さーん」
店の前にはすでにケイン達が到着していてワシが来るのを待っていた。
「待たせたかの?」
「いえ大丈夫です、それより早く店に入りましょう。俺達腹ペコで」
申し訳なさそうに笑うケインに促され店に入ることにした。
「腹ペコなら依頼の話をするより先に飯じゃの」
そう言って料理を注文することにした。ワイルドボアの肉を買い取ってもらう時にあらかじめ店主にこの肉で一番うまい料理を出してもらうよう頼んでおいたので楽しみだ。
そしてそれほど待つこともなく運ばれてきた料理見て思わず叫びそうになる。
マンガ肉来たーー!!




