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その8

 手に持ったそれを暫くうっとりと見つめていた。

 “冒険者証”

 そう、正にこれこそが冒険者としての証。遂に冒険者となったのだ!

 冒険者証とは別にドックタグの様な物──冒険者タグとでも言っておこうか──を渡された。こっちは表にランク、裏に名前が記されている。今ワシが持っているのは表にFと記された物、つまりFランクだ。

 冒険者タグを首にかけ、冒険者証を懐へと収める。

 ギルドマスターの執務室に連れていかれた時はどうなる事かと思ったものだがどうにか乗り切れた。事と次第では冒険者になるという夢が潰えるところだった。

 しかーし、今は冒険者となった! 新米冒険者となったのだ、ジジイだけど。

 そしてギルドマスターことスタンツから少しばかりのお小言を受け、執務室から解放されたその足で早速冒険者ギルド内にある各種依頼が張り出されている掲示板の前に来ていた。

 やっぱりまずは初めは薬草採取だろうと思い掲示板から薬草採取の依頼書を取り、受付へと向かう。

「この依頼を受けたいのじゃが」

 カウンターに見知った娘、フレアが居たので声をかける。

「あ、十兵衛さん、無事冒険者登録できてよかったですね」

 相変わらずの人好きのする笑顔を浮かべ、フレアが対応してくれる。

「まったくどうなる事かと思ったわい」

 いやほんとに無事冒険者になれてよかった。

「薬草採取ですね、承りました。採取場所には魔物が出ることもありますので気を付けてください。あ、十兵衛さんなら大丈夫でしたね」

「いや何があるかわからん、気を付けて行ってくるとしよう。気遣い感謝する」

 受付で正式な依頼書と執務室でフランツに頼んでおいた森で仕留めた魔物の素材の買取りの代金も一緒に受け取った。

 では冒険者としての初依頼に向かうとするか。フレアに採取場所を確認して早速向かうことにした。

 冒険者ギルドを出ると外はすっかり陽が高く昇っていた。

 もう昼か、そう言えば今日はまだ何も食べてなかったなと思いこの街に来た時に冒険者ギルドの場所を教えてくれた店主のことを思い出す。

 やっぱり異世界だしマンガ肉とかあるのかと考えているうちに店の前に到着した。

 店に入ると昼時だったこともあり混雑している。

「いらっしゃいませー。お一人ですか? ではこちらにどうぞー」

 元気のいい声に案内されカウンター席に腰を下ろす。

「ご注文はお決まりですか?」

 給仕の娘の声にこたえる。

「骨付きの肉料理はあるかの?」

「骨付き肉ですね、かしこまりましたー」

 あるのか、マンガ肉! これは楽しみだ。期待に胸を高鳴らせているとカウンターの中にいた見覚えのある男と目が合った。

「おっ、朝の爺さんじゃないか。冒険者ギルドにはいけたかい?」

 朝と変わらず気さくに男は話しかけてきた。

「朝は世話になったの、無事目的達成じゃ」

 そう言って首から下げた冒険者タグを誇らしげに見せた。

「えっ、爺さん冒険者登録に行ったのか、てっきり依頼を出しに行くのかと思ったんだが」

 まあそういう反応になるわな、ジジイだし。

「昔から冒険者になりたかったんじゃよ、夢が叶ったわい」

「そうかい、それは良かったな。がんばりな」

 そう言うと店主はまた忙しそうに調理を始めた。そして料理が運ばれてくる。

「お待たせしましたー、骨付き肉です」

 来たかマンガ肉! カウンターに置かれた料理を期待を込めて見る。

 骨の付いた肉、フライドチキンでした……本当にありがとうございました!!

 かなりがっかりしながら昼食を済ませる。いや、美味いは美味いのだがマンガ肉が食べたかった……

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