その24.5
剣士の朝は早い。
日々の素振りは地味だがとても大事だ、と思う。多分きっと。
「師匠、この間の手合わせ再現をお願いしてもよろしいですか?」
お互いに素振りを終えるとアシュリーが話しかけてきた。
「この前のやつか、かまわんがどうしてじゃ?」
「はい、剣先が下がる癖というのがどの程度か確認しておきたくて。自分の中では矯正できていたと思ったのですがまだまだ研鑽が足りていなかったようです」
本当にアシュリーは剣に対して真摯に向き合っているようだ。
「ではやるとしようかの」
アシュリーとの手合わせを思い起こしこちらから撃ち込む。
「っ! もう一度お願いします」
ワシの打ち込みをうまくいなし切れずアシュリーからおかわりが来た。いやワシのじゃなくてアシュリーの再現だから自分の打ち込みが捌けなかったというべきか。
何度か再現して見せどうにか捌き切り例の剣先が下がるというのをやって見せる。
「え? あの師匠、今剣先下がりましたか?」
「うん? 下がっとるじゃろ、ほれ」
アシュリーの手合わせの時の動きを再現して見せるが当の本人は困惑しているようだ。
「も、もう一度お願いします」
そしてもう一度初めからやり直し剣先が下がるところまで行くがまたアシュリーはそこで手が止まる。
「師匠、すみません今剣先は下がったのでしょうか?」
いや、見たままを再現しているんだげどなぁ……
「ほれよく見ておれ」
そう言って剣先が下がるところだけをやって見せるがアシュリーは剣先を見つめたまま動かない。
「こうじゃ、ほれ下がったじゃろう。髪の毛一本分ぐらい」
ワシの言葉にアシュリーが呆然とし声を上げる。
「ま、参りました」
何に参ったのかよくわからん、ワシ何にもしてないのだが?
騎士の朝は早い、はず。
オスローで騎士隊の詰め所に行きルーベン隊長に事情を説明し、ちゃんと礼も言えた。そこまでは良かった、そこまでは。
アシュリーがワシを持ち上げすぎて詰め所がざわつきだすまでは。
「フランツ、私の冒険者ランクなんてどうでもいい事です、師匠の強さはそのような基準では測れる物ではありません。それよりも私が残しておいた訓練のメニューをしっかりこなしておく事です」
隊長の横に居た若い騎士はフランツと言うらしい。
「あ、あの訓練の内容続けてたらみんな死んじまうぞ」
「強くなるためには必要な事です。私にすら勝てないのですからやって当然の内容です」
もしやアシュリーには“辛辣”の二つ名でもあるのだろうか?
「いや、普通にAランク冒険者に勝てるやつなんてそうそういないよ!」
フランツがかなり悲壮感を漂わせ食い下がる。
「ここに私よりはるかに強い師匠がおられますが?」
アシュリーよ、それ以上ワシを持ち上げるんじゃない。
ぐうの音も出ずフランツが黙り込んでしまった、なんかすまん。
しかしアシュリーよ、いったいどんな訓練内容を残しているんだ。そもそもワシから教えられた事をそのままやっていると言ってなかったか? ウォルターよ、いったいアシュリーにどんな稽古をつけていたんだ……




