その23
「アシュリーよ、宿屋に部屋を取っておいてくれたのはありがたいんじゃが、なんで一つしか部屋を取っておらんのじゃ?」
いや、孫と大して歳の変わらないアシュリーに変な気を起こす事は無いのだがそれにしても年頃の娘としてどうなの?
「あ、すみません。師匠は一人部屋の方がよかったですか?」
「いや、ワシじゃなくてアシュリーがじゃな……まあよいわ」
本人が気にしていないようだし良しとするか。
アルベージュで夕食を終え、宿に入り寝るまでの少しの時間この世界の事をもっと知っておこうと思いアシュリーに質問攻めをすることにした。
「ところでアシュリーよ、この世界に勇者という者はおらんのか?」
異世界で冒険者となればやっぱり定番の勇者だろう。
「勇者というとあのお伽話の勇者ですか?」
おや、この世界に勇者はいないのか?
「勇者はお伽話にしか出てこぬのか?」
「いえ、詳しい文献などには記述はあるようですが一般に語られている勇者というのはお伽話の勇者の事ですね」
勇者はいたが遠い昔にいただけというところか?
「そもそも勇者というのは世界各国の王や指導者よりも高い地位の者の事なので今ではそういう立場を認めて勇者となることが難しいのです」
王様よりも勇者の方が偉いとはこの世界の勇者すげー!
「ですので勇者を勝手に名乗ると死罪となります」
え、勇者名乗ると死罪なの? まあ王様よりも偉いって言ってるという事だからなくもないか……
「では、魔王はどうじゃ?」
人類の宿命の敵、言うところのラスボスだ。
「魔王も勇者と同じように基本的にお伽話の中の存在ですね。ただ、勇者と同じように昔の文献には記述があると聞いたことはあります」
まあそうですよね、勇者がいないなら魔王もいないというのは予想できた答えだ。
「ただ、今各地に点在しているダンジョンは魔王討伐後に一斉に出現したと言われてはいますね」
「なんと、ダンジョンがあるのか! 是非行ってみたいものじゃな」
ダンジョン来たー! 冒険者なら是が非でもダンジョンには行かないといけない。
「一番古いと言われているのがアデムダンジョンと呼ばれていて、ここは魔王討伐以前からあったと言われています。しかも今でも新たな階層が発生しているようでダンジョンが生き物だと言われる所以ですね」
アデムダンジョンか、ここはいつか行く場所として覚えておこう。しかし、いくら記憶が無いとは言えこんなジジイがお伽話やダンジョンの存在を知らないとか変に思われたりしないのか? アシュリーの師匠補正は一体どうなってるんだ?
「ここから一番近いダンジョンはどこにあるんじゃ?」
「ここからでしたら……そうですねアシリアという街に有りますね」
街の中に有るのか、それは行くしかないだろう。
「よし、ではオスローに寄ってからそのアシリアに行くとしようかの」
「はい、こうして師匠と旅ができるのはとても楽しいです。どこまでもお供します」
アシュリーは終始楽しそうに、そして何も疑問に感じていないように質問に答えてくれた。本当になんかすみません。
そしてアシュリーから一通り聞き終えると明日に備え眠りについた。




