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その22

「お見事でした師匠」

 アシュリーが感動を込めた真っ直ぐな視線を向けてくる。なんで感動? うん、魔物も倒せたし良しとするか。

「ケイン達は無事かの?」

 木の根元で座り込んでいる三人に目を向けるとぐったりはしているが大丈夫そうだ。

「持っていた上級ポーションを飲ませたの傷の方は大丈夫でしょう。それでも死に直面した後です、精神的な疲弊はやむを得ません」

 流石Aランク冒険者、上級ポーションなんて持っているのか。いくらするのだろう?

「ありがとうございました、十兵衛さん」

 疲労の残る顔に無理やり張り付けた様な笑顔でケインが話しかけてきた。

「もう少し休んでおれ、回復したら街まで一緒に戻ろう」

「すみませんそうさせてもらいます」

 精神的な疲労というものはそんなに簡単に回復するものでもないだろう、もう少し休んだ方が良い。

「先程の魔物、シャドーウルフでしたね。なぜここにいたのでしょうか?」

 横たわり動かなくなった魔物を見ながらアシュリーが呟く。さっきの狼はシャドーウルフというのか、カッコいい名前だな。

「シャドーウルフというのはこの辺りにいる魔物ではないのか?」

「はい、本来は洞窟やもっと深い森などの陽の当らないようなところにいる魔物です。しかも先程の個体は通常の物より大きく目も赤かった。おそらく異常個体ですね」

 顎に手を当てアシュリーが考え込んでいる。冒険者として経験を積んできたアシュリーが言うのだから間違いないのだろう。

「とりあえずはケイン達を街まで連れて帰り、あとは冒険者ギルドに報告というところかの?」

「そうですね、今回は何とかなりましたが犠牲者が出る前に対応しないといけませんね」

 アシュリーはそう言うと何かを思い出したように続ける。

「そういえば、師匠が倒したブラックベアーも異常個体だったとルーベン隊長が……」

 ブラックベアー? ルーベン隊長? さっぱりわからん。

「ブラックベアーもルーベン隊長とやらも良くわからんのだが?」

「ああ、それはですね……」

 アシュリーの説明を聞くところによると、ワシにアルカンの街を教えたのがルーベン隊長でアシュリーが剣術指南をやっていた騎士隊の隊長。そしてその騎士隊に襲い掛かってきたのがブラックベアーという魔物だという事だった。確かにその時斬ったのは熊の魔物だったがあれはブラックベアーというのか、名前は大体合ってたようだ。

「それほど離れていない地域で異常個体は続け様に出るというのも妙ですね」

 その両方にワシ関わってるんだけど? まあ両方斬ったし問題ないだろう。

「でも、そのおかげで師匠に会えました」

 そのルーベン隊長からワシの事を聞いてアルカンの街まで探しに来たらしい。なぜオスローで剣術指南をしているアシュリーがアルカンの街にいたのか不思議だったが納得がいった。

「なんにせよ後は冒険者ギルドに任せておけばいいじゃろう」

「そうですね」

 そしてしばらくケイン達の回復を待ちアルカンの街に戻ることにした。

 街に戻るとその足で冒険者ギルドに立ち寄り異常個体の魔物の事を報告しておいた。もちろん報告はアシュリーにすべて任せた、ほんとうにアシュリーが居てくれて助かった。

 ギルドへの報告が終わった後ケイン達を宿屋まで送り届けることにした。ケイン達と別れる時に改めて三人揃って頭を下げ礼を言ってくる、本当にいい子達だ。

「アシュリー、今日もアルベージュに行くぞ」

「師匠は今日もまんがにくですか?」

「もちろんじゃ!」

 ケイン達を宿屋まで送り届けた後、ワシとアシュリーはいつものアルベージュで夕食を取ることにした。


「師匠、明日からはどうされる予定ですか?」

 アルベージュで夕食を摂っているとアシュリーが訊ねてくる。

「そうじゃな、明日はオスローに行ってみようかと思っておる」

「オスローにですか?」

 アルカンも居心地は良かったが何せ異世界を堪能しようと思うと一所にずっといても仕方ない。そろそろ違う街に行こうと思っていたところだった。

「さっきアシュリーからルーベン隊長とやらの話を聞いたじゃろ、じゃから直接礼を言っておこうかと思ってな」

「ルーベン隊長にお礼ですか? 逆に助けてもらった隊長がお礼したいと言っていましたが?」

 アシュリーが不思議そうな顔で聞いてくる。

「何を言っとるんじゃ、その隊長のおかげでアシュリーと再会できたのだぞ」

「確かにその通りですね。私からもお礼を言わなければなりませんね」

 アシュリーは笑顔を浮かべそう答えるとワシと同じようにマンガ肉に齧り付いた。

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