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その18

「ところで師匠は今後どうなさるおつもりですか?」

 先ほどのごろつきの事など無かったかのようにアシュリーとの食事が続いていた。

「そうじゃな、せっかく冒険者になったからには冒険者としてあちこち見て回ろうかと思っておる」

 念願の異世界だからこれは転生者としての義務だろう。

「そうですか」

 少し声を落としアシュリーが何やら考え込んでいる。

「ところでアシュリーは今は何をしておるんじゃ?」

 Aランク冒険者とは聞いたがこの街はAランク冒険者が来るようなところではなさそうだしな。

「今は冒険者をやめてオスローで騎士隊の剣術指南をしています」

「剣術指南とな、それはすごいの」

 冒険者からそんな就職先のルートもあるんだな。

「師匠に教えてもらった事をそのままやっているだけです、すごいなんて事ありませんよ」

 本当に謙虚な子だな、もっと胸を張ってもいいだろうに。

「そんなに謙遜せんでいい、何かを成したのならそれは成した者自身の手柄じゃよ。経験をどう生かすかは己の裁量じゃろ」

「ありがとうございます、師匠」

 うんうんいい子だ、ウォルターが気にかけていたのも頷ける。

 その後もアシュリーとの他愛のない会話を楽しみ食事を終えた。

「師匠、明日はどうされているんですか?」

 そろそろ店を出ようかと思っているとアシュリーが訊ねてくる。

「明日? 明日もギルドに行って依頼を受けるつもりじゃよ。まだまだ駆け出しの冒険者じゃから依頼を受けんと飯も宿も取れんからの」

「そうですか、私は明日オスローに戻ります。剣術指南の方もありますので」

 名残惜しそうにアシュリーが言う。

「そうか、なら次に行く街はオスローにしようかの」

「オスローなら私が案内します、任せてください」

「それは楽しみじゃの」

 笑顔で答えるアシュリーを促し店を出て、その日は早めに宿に戻ることにした。


 翌日冒険者ギルドに行き、依頼を受けるべく受付カウンターにいたフレアに話しかける。

「今日はこの依頼を受けたいんじゃが」

 いつものように愛嬌のある笑顔でフレアが対応してくれる。

「おはようございます十兵衛さん、依頼ですねかしこまりました」

 依頼の内容を確認してきぱきと手続きをしてくれる。この娘は愛嬌だけじゃなく仕事もできる様だ。

「あ、そうだ十兵衛さん。マスターからランクの昇格を言付かってます」

「おお、ランクアップか!」

「はい、Eランクに昇格です。これで実質的に正式な冒険者ですね」

「む? 正式な冒険者とはなんじゃ?」

「それはですね、Fランクというのは冒険者見習いという位置づけでして単独での魔物討伐が受けられないんですよ。ですが十兵衛さんはEランクに昇格しましたので今後は単独での魔物の討伐依頼を受けられるんです」

「それはありがたい、やっと冒険者らしくなってきたではないか」

「はい。ただし、討伐対象の魔物はランクに応じたものになるので張り出している依頼書をよく確認してくださいね」

 それならばともう一度掲示板に向かう事にする。

「ちょっと待っておいてくれんか、薬草採取と一緒に討伐依頼も受けたい」

「それでしたらホーンラビットがいいですね。薬草の採取場所の近くにいますので」

 フレアの助言を受けホーンラビットの討伐依頼を持って再びカウンターに行き、手続きを終えると冒険者ギルドを後にする。

 外に出るとフレアから受け取った新しい冒険者タグをニヤニヤと眺めながらホーンラビットの討伐へと向かう。自分の成長がこうして目に見える形でわかるというのは嬉しいものだ。

 先に薬草を採取し終えると冒険者ギルドでフレアに聞いていたホーンラビットの生息地に向かった。

 

 ホーンラビット、名前そのままの頭に一本の角が生えたウサギだ。ウサギではあるが討伐依頼が出るだけあってなかなか攻撃的で近づくなり頭の角を突き立て突進してきた。

 真っ直ぐに突っ込んでくるホーンラビットを躱しざまに一薙ぎし仕留めていく。誰にでも出来る簡単なお仕事だった。それでも冒険者になったと実感できる瞬間が味わえるのは有難い。

「群れて数がいるというわけではないようじゃの」

 初心者冒険者の依頼というだけあってホーンラビットは単体でしか見当たらない。依頼は五体の討伐だったのでこれは探す方に時間がかかりそうである。

 森から少し離れた草原を歩き回り何とか五体のホーンラビットの討伐を終えアルカンの街へと戻ることにした。

 その日、いつもに比べ討伐の報酬が入ったのでアルベージュで久しぶりに酒を飲んだ。

 元の世界では下戸だったのだが、せっかくの異世界という事で定番のエールを注文してみたところ思いのほか美味かった。どうやらウォルターは結構いける口だったようだ。

 程よくいい気分になり宿に戻るとそのままその日は眠ってしまっていた。

 翌日目を覚ますと既に陽が高く昇っていた、どうやらもう昼前のようだ。

 幸い二日酔いにはなっていなかったので身支度を整え、冒険者ギルドへと向かう事にした。新米冒険者の癖に重役出勤である。

 冒険者ギルドに着くと早速依頼書を張り出している掲示板に向かいその日の依頼を何にしようかと物色する。

 依頼書を見比べながらどれを受けようかと考えていると不意に後ろから声をかけられた。

「師匠、お供します!」

 振り返るとそこには満面の笑みを浮かべたアシュリーが立っていた。

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