その11
森に入ってからはフィルの先導で戦闘を避けながら進んでいった。
フィルはなかなか優秀なようで一度の戦闘もなく進んで行く。先日のワイルドボアの件でだいぶ懲りたようだ。
前を進むフィルが立ち止まり手をかざして後ろを進むワシ達に止まるよう合図を送ってきた、どうやらゴブリンの巣に着いたようだ。
ケインがゆっくりとフィルのところまで進み様子を確認し、フィルと共に戻ってきた。
「着きました、この先がゴブリンの巣です。作戦の打ち合わせを確認しておきましょう」
ゴブリンの巣は自然にできた洞窟のようだ。ケイン達の前回の調査でゴブリンの出入りや入り口付近の足跡を調べた結果、ゴブリンは十体ぐらいだろうという事だった。
「洞窟の中までは確認できていないので慎重に行きましょう。遭遇したゴブリンは全て倒して行きます」
ケインの言葉に各自頷いて洞窟へと入って行く。
洞窟の中は思ったより広く人二人が横並びに進んで行けるだけの幅があった。先頭にフィル、そのすぐ後ろにケインが続いて歩いていく。
少し進んだところでフィルとケインが位置を変える、ゴブリンの登場のようだ。
息を殺し待っていると一体のゴブリンがやってきた。ゴブリンが視界に入りとすぐさまケインが切りつけ一撃のもと仕留める、ケインもなかなかやるようだ。
倒したゴブリンの耳をフィルが片方切り取り腰に下げた袋にしまう。どうやらそれがゴブリン討伐の証のようだ、覚えておこう。
再びフィルが先頭に戻りさらに奥へと進んで行くと先の方から声の様なものが聞こえてくる。
「どうやら奥に何体かゴブリンがいるようです。十兵衛さんよろしくお願いします」
「承知した、任せておけ」
慎重に進んで行くと先の方はホールのように開けた場所になっているようで五体のゴブリンが見て取れた。
「ダートの魔法を合図に斬り込みましょう」
ケイン達はなかなかに戦闘経験があるようで指示が的確だ、ワシも負けてられないな。
「ファイヤーボール!」
ダートの魔法がホールにいた一体のゴブリン目掛けて放たれた。すぐさま右に駆けだすケインを確認しワシは左へと向かう。
魔法の直撃を受けたゴブリンはその場で転がり悶えている、魔法すげー!
初めての魔法に感動しつつ、慌てた様子のゴブリンを横薙ぎに一体斬りつける。反対側に視線を移すとケインも一体仕留めたようだ。
続けざまにまだ慌てたままの別のゴブリンを一足に捉え、首筋に一閃斬り上げる。
「ファイヤーボール!」
ダートの二発目の魔法が最後のゴブリンに命中しその場で転げまわる。ケインとフィルが魔法を受けたゴブリンにとどめを刺しホールを制圧する。
「ふう、ここからは残りのゴブリンも気づいているはずなんで気を付けましょう。それにしてもやっぱり十兵衛さんさすがですね、一緒に来てもらえて良かった」
「役に立ててるなら何よりじゃ。本格的な戦闘は初めてじゃから油断せぬようにせんとな」
そしてさらに奥へと進み、最終的に十二体を倒し、ゴブリンの巣の掃討が完了した。
「十兵衛さんに声かけて正解でした、あの数で前衛が俺一人だとちょっとしんどかったはずです」
ゴブリンを掃討し報告のためアルカンの街に戻る道すがらケインが話しかけてきた。
「いや、ワシもいい経験が出来た。三人ともなかなかいい冒険者のようじゃの」
「ある程度は経験を積んだんでようやく様になってきたかなって感じです」
この少年たちは謙虚で驕ることなく経験を積んできたのだろう、立派なものだ。
「そういえばケインは両手剣なのじゃな。前衛を安定させたいなら盾と片手剣でもいいのじゃないかの?」
「盾持ちの片手剣ですか、考えた事なかったな」
「今回みたいな依頼なら臨時で前衛を入れればいいじゃろうし、普段三人で動くなら戦闘が安定するのではないか?」
「確かにそうですね、やってみます!」
素直に人からの意見も柔軟に受け入れる姿勢は本当に好感が持てる。
そんなやり取りをしながら歩き、アルカンの街まで戻ってきた。
そして例のマンガ肉を堪能した食堂、アルページュを過ぎた辺りで声をかけられた。
「師匠!、ウォルター師匠!」
振り返るとそこには腰に剣を携え、身なりの整った妙齢な女が立っていた。




