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奴隷以下な俺の人生

「まぁ、空から人が降るなんてこと珍しくもないのかもしれないな」

 そう独りごとを漏らすなろう太郎。雲の上からカイアス王国の王とカイアスに降りたなろう太郎。

「日本と季節同じなんだな」

 声に出す。聞く人はいないが。

 夏だからか暑い。だが――

「でも暑いけど大したことないな。日本39度が真夏の気温として当たり前でそれで湿度が高いからな……。アレは地獄だ。それでスーツ着ろだもんな。

 でも会社の60代の先輩に聞いたら、日本の夏って先輩が若かったころは元々30度くらいで過ごしやすかったらしいんだよな。誰かが星をエアコンで暖めてるのか?

 超有名漫画家の代表作じゃない宇宙を人間、ロボット、まめだぬきの3人で冒険してる作品で、太陽に偽装させたエアコンで星の気候好き勝手に操ってる回あったもんな。

 それに比べたら楽だ。周りの人は暑そうにしてるが。これ30度ジャストくらいじゃないの?

 ご機嫌斜め30度どころか、機嫌いいぜこのくらいなら。日本の夏って蒸し暑い地獄で苦しんでいた社畜をなめんじゃねーよ!

 アスファルトの照り返しもない土の地面と石の道路だし、楽ちん楽ちん。

 でも西洋の中世だな見た感じ。地球に比べたらすっげー原始時代っぽーい」

 と、ビナーからテレパスでなろう太郎に連絡が来た。

「まずは、魔導携帯端末を買いに行くといいわよー。で、その次奴隷ね魔導携帯端末を手に入れたらマップアプリで奴隷市場で検索すれば奴隷買える所分かるから」

「え、スマホあるんですか? でも電力ないですよね? 電柱ないし。どうやって動かしてるんですか?」

「魔力よ。電力に変わるもの――魔力。だからこの星では電力会社は存在しないわよ。儲からないから。値段あげようが下げようがこの星では電力なんて買ってまで使う酔狂なのはいないの。

 そして魔力があるものは自分が電源となれる! だから使い放題よ! 魔導エアコンも電気代気にしなくていい! 自分の魔力が電源だから!

 太郎君はティファレトから魔力を分け与えられたから、魔導PCも魔導携帯端末も使い放題よ!

 まあ、そういうわけで、当たり前だけど魔法使いの社会的地位は高いわね。

 だから、ティファレトの魔力で魔法使える太郎くんも一目置かれた存在として見られるはずよ。もうあなたは平社員じゃないの! 一目置かれた魔法使いなの!」

「あっ!」

「どうしたの?」

 気楽にビナーが聞いてくる。

「地球のPC破壊するの忘れた!」

「なんで壊さないといけないのよ」

 ビナーが気楽に聞く。

「だって、エロ画像やエロ動画見られるかもしれない!」

 なろう太郎は怯えた。自分の性癖が他人に知られる事を。

「いいじゃない、そんなの」

「いや、よくないよ……あとさゆちゃんの抱き枕も他人に見られちゃうし」

「さゆ…………あいつならそこらへん飛んで」

「え?」

「いやいや、なんでもないわ! とにかく、余計なことは気にしないで魔導携帯端末かいに魔道具屋さんへレッツゴーよ! それに地球ついさっき滅んだし、あのにっくき魔王ミハエルの手によってね!」

「ええっ、地球が……? それ本当なんですか」

 なろう太郎はあまり驚かない。

「ええ。怖いわよね~。ひどいわよね~。だからあなたには魔王ミハエルをやっつけて欲しいの!」

「ん、別に……地球に良い思い出ないし。親父は

『俺はそんな風に育てた覚えはない!』

『俺だって親の務めは果たしてきた! 金払っただろう! 親の務めだよ!』

『それを俺の立場も考えずに! バカ息子が! 俺は子どもが欲しかったわけじゃない! 女に中出ししたかっただけだ! お前なんて何の価値もない! なんで生まれてきたんだ!』

 子供の言い分を全く聞かずに! あの馬鹿野郎のクソオヤジ!

 なんでって父さんと母さんの下半身がだらしないから俺が生まれたくもないのに生まれたに決まってんだろ!!

 俺は、親をやって欲しかっただけなんだ! 小さい頃、頭を撫でて欲しかっただけなんだ! それをなんだ! 金さえ与えておけば十分だろうって態度!

 あんなの親じゃない! あんなの……!」

 人の飛び交う往来で、涙を流して、なろう太郎は訴える。

「わ、わかったから。わかったから落ち着いて! ねえ……あなたがもらった力でこれから愛を得られるわ。だから落ち着いて」

 だがビナーの言葉は興奮したなろう太郎には届かない。

「いけないか! こんなこといっちゃあ! 子どもが! 父は愛人を作るのに夢中で家庭を放ったらかして、母は潔癖症で自分の体にアルコール除菌を振りかける事に熱中していた! 俺の顔にも不意打ちでアルコール除菌してきたよ! ばい菌かよ子どもが! 傷ついたわあれは! こんな機能不全の家庭! 愛情もなしに子供が放っておかれたら堪んないんだよ! わかってくれよ…………面接でも家庭の事聞かれたらストレスすごいし……オレの能力を聞けよ。家庭は関係ないだろ!

 悪いようにしない!

 話は聞く!

 これを言ってくるやつは信用ならない!!

 これを言うやつはいつも裏切ってきた。話聞いてるフリだけで我を通す!!

 父も母も裏切ったんだ! クリスマスも正月も実質俺一人だった! たとえ一緒の場にいても無視していないように扱って! めんどくさそうな顔で俺を見て!

 お年玉やクリスマスプレゼントくれよ!! カネじゃなく愛情ってプレゼントを!

 母さんあんたにゃあ世間体を保つための見栄しかない!

 愛情を与えるのを面倒だと思った母は、子供に向き合うのも面倒くさがって逃げたんだよ!

 それでアルコール除菌体中に吹きかけて!

 あっはっはっはっはっはっはっは!

 あはははははははははははははははははははははは!

 はーはっは、ははは、はは…………。

 俺は愛して欲しかったんだ!

 俺が叱って欲しさにいたずらしても無反応!! 母も!!

 自分を肯定してくれたり、励ましたり、叱ってくれたり、そんな家庭像を持つことがわがままなのかよ!

 おかげで愛を知らない大人になっちまった!!

 嫁の態度が変わっても!! それに気づかないのが!! 俺のパパだ!!

 そういう男と女の間に生まれた子どもが俺だ!!

 子どもが子どもを育ててんだよ!! 死ねよ!!

 社会人になっても、重税の日本よりローマの奴隷の方が裕福っていう奴隷以下な俺の人生! なんだこの俺ゴミクズな俺!

 そんな俺に自尊心なんて育つと思うか!? そりゃトラックに飛び込むわ!!

 あはははははははははははははははははははははは! ふうっぐっ…………」

 なろう太郎は20分ほど泣き続けた。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「落ち着いた?」

 カイアス王都のカイアス。その場にはいないビナーが優しい声でなろう太郎に囁きかける。テレパスで。

「すみません。かっこ悪い事見せちゃって」

「いいのよ。わたしたち神や天使はそんな辛い人生を送ってきたあなただから、手を差し伸べようと思い、力を与えたんだから」

(そういう沼にハマった子こそ我らの駒として優秀だから。あっはっは!!)

 ビナーは建前と本音で全然違う事を考えた。そして本音は隠して優しい言葉をかける。

「さ。落ち着いたら魔道具屋さんへ。そこの角を曲がった所にあるわ」

「あそこですか」

「うん、そう」

 そして降りる際にビナーからもらったこの星の通貨でなろう太郎は魔導携帯端末を買った。

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