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どんなスキルをも自分に付与できるスキルをくれ

「どんなスキルをも自分に付与できるスキルをくれ

 それがだめなら、なんでも願いが叶う力をくれ」

 なろう太郎は、そう願いを女神ビナーに告げた。

「何でも願いを叶える物で自分を何でも叶える物に作り変える、それがどんなロジック的破綻を引き起こすかわかんないの!?」

「さゆちゃ……!?」

 なろう太郎は振り向いた。けどそこにはさゆちゃんはいない。声が聞こえたと思ったのに。

 十二単のさゆちゃんが横からそう怒ってたしなめたような気が、なろう太郎にはした。

「ごめんなさい、それはわたしたちの力を超える願いなの。わたしにもティファレトにも無理だわ」

 女神ビナーが申し訳なさそうに告げる。

「じゃあ…………

(あのクソ上司みたいな奴はどの世界にもいそうだな。あいつ対策は欲しいな)

 自分に対して敵対的行動を起こさない、反乱を起こさないようにするスキルは?」

 クソオブクソな上司に対抗する手段としてなろう太郎はそれを言った。

「世界征服したいの? やっぱり男の子ね~、それに繋がるスキルなら、付与できるわよ。あ、でもわたしたちを操ろうとしても無理よ。先に言っておくわね」

「はい。別にそこまでは考えてなかったんで」

 そして、なろう太郎は正直に言う。

「これが本命だ。恋愛がうまくいくスキルをくれ!!」

「……………………」

 ビナーは黙っている。

「どうした。神ともあろうものがこれもできないのか!」

 なろう太郎は言葉に力を込めた。

「…………いや」

 ビナーはそこで言葉を止める。

「正直、驚いたんだよ。異世界転生しに来る人で、それを一番の願いにする人はいなくって。ここのところ、宇宙を支配したいだとか、人間種族を皆殺しにしたいとか、無茶な願いばかり来たから、君のようなまともな願いで逆にびっくりした。すまない」

 と、代わりにティファレトが申し訳なさそうに謝る。

「で、できるのかできないのか」

 なろう太郎はちょっと偉そうにたずねた。

「もちろん、できますよ」

 ティファレトはごまをする用に手をもみ、冷や汗を垂らしながら、答えた。

挿絵(By みてみん)

「なんで神や天使が低姿勢で人間である太郎くんが態度でかいんだろうね?」

 さゆちゃんが上目遣いでなろう太郎の顔を覗き込むようにして、また横やりを入れてくる。

「わからないよ、さゆちゃん……」

 と、今度は見えたさゆちゃんの姿が、うっすらと消えてゆく。

「さゆちゃん……」

 泣きそうになりながらさゆちゃんが消えるのを眺めたなろう太郎。

「で、今までので願いは2つOKよ

 自分に対して敵対的、反乱を起こさないようにする願い

 恋愛がうまくいくスキル

 あと一つは?」

「愛する人が死ぬまで俺が不老不死であることだ。

 不老不死は考えていたけど、愛する人が死んでしまった世界で生きていても無意味だから、限定条件付きの不老不死で」

「なあるほどー、わたくし、その気持ちは理解できますよ、なろう太郎さま」

 ビナーの口癖、「わたくし、その気持ちは理解できますよ」が出た。共感性を大事にする女なのだ。ビナーは。

「では

 〇自分に対して反乱を起こさないようにするスキル

 〇恋愛がうまくいくスキル

 〇愛する人が死ぬまで限定で不老不死

 これでファイナルアンサー?」

 ビナーが人差し指を立てて問う。

「え、そういうノリ? あ、アンサーです」

 なろう太郎はちょっとたじたじになる。

 ふわっ~とビナーが手をなろう太郎にかざすと、虹のオーロラがなろう太郎を包む。

「これねースマホ持ってるでしょ君ーもう地球の外だからそれ役に立たないけどー、スキルを人に加えるのって、スマホにアプリDLする感じなのよ。ちょうどね。スマホが異世界転生者で、アプリがスキル。イメージしやすいでしょ?」

「は、はい。なんとなく……」

 そしてスキル伝授は完了した。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「じゃあ、新しい世界へごあんなーい。新しい世界でも不快なことはあるかもしれないけど、スキルを駆使して切り抜けていってね」

「はい。ありがとうございます」

「あ。地図ね。

挿絵(By みてみん)

 この星は火明星ほあかりぼしていうんだけど――漢字が火星かせいに近いけど違うのよ――このカイアスって一番大きな大陸の王都カイアスにあなたを送ります。

 で、もしよかったら聞いて欲しいんだけどぉー。魔王を倒して欲しいの」

「いや、戦闘系スキル取ってないんですが」

「さっきのDLでルシフぁ――」

 とそこでティファレトがビナーを肘でつつく。

「えーごほん! さっきのスキルDLで基礎的な魔法力はDLされてるわ。おまけってところかしらね! 鍛えればもちろん成長するわよ魔力も! それに〇自分に対して反乱を起こさないようにするスキル で、強い人を支配するって手も使えるし」

「なるほど…………」

「じゃあ、魔王の名を言っておくわね。

挿絵(By みてみん)

 魔王ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒよ! ここの左下のヴァーレンスってところで、公爵のフリをしている魔王なの。またこいつがあなたには腹立つ感じなのよ……」

「え、オレに? なんでですか」

「嫁10人いる上に、さ・ら・に! 女から求婚されているくらい愛情受けまくりなの! 腹立つでしょう? 女を毒牙にかける下半身魔王よ! 現在進行形で毎日女をひーひー泣かせている魔王よ!」

「…………それは、許せませんね……俺なんか、彼女できたの人生で2週間だけなのに……」

 となろう太郎は握りこぶしを握る。

「魔王ミハエルは顔はわたしに似ているんだ。まったく、迷惑だね」

 とティファレトがのたまう。

「でも魔王の目は青い。わたしは赤ね」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「じゃあ、行ってらっしゃーい! 楽しい異世界ライフを~~~~」

 ビナーがハンカチを手に見送る。

「気をつけてね~」

 ティファレトがそう気楽に送り出す。

「……………………」

 静けさが増す。

「ビナー」

 ティファレトが沈黙を破った。

「うまく行きましたわね。あの男もムーンショット完了ですわ。悪魔の大魔王ルシファー。ルシファー=ティファレト」

「そうだな。地道だがあのミハエルを倒す道はできつつある。だがビビった。今のやつには」

「桜雪さゆの幻影が出てた事ですわね? わたくし、その気持ちは理解できますよ。木花咲耶姫このはなさくやひめの右腕で彼女自身もあなたより妖力上ですものね。でも偶然だったようですわね。

挿絵(By みてみん)

木花咲耶姫このはなさくやひめが何かアクション仕掛けたわけではないようです」

 ビナーが怪しく笑う。

「あぁ……ま、しばらくのんびりするか……」

 ルシファー=ティファレトはそう言ってワインを魔力で出しごくりと飲んだ。

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