これでチャラにしてあげる
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
腹黒い彼との話。
これぐらいなら許せると思うんですよ。
彼女と食事に行った時の事、虚無的な目で此方を見据え、ただ淡々と質問した。
「貴方には最近お世話になっているから、何かして欲しい事はある?」
最近少し気落ちしている様だったから、寝る前に髪を撫でたり、何時も以上に寄り添う様にした。其れが支えになったのだろう。虚無は虚無でも今は少しだけマシになった。
私は目の前のパスタをクルクルとフォークに巻き付けながら、彼女を見返す。
はてさて、どうするか。別に恩を返そうとしなくても構わないのだが。だが根っこは割と損得勘定で生きている節がある為、借りを作るのが好きだった。
だからつい、自分の獣性の赴くままに、ほくそ笑んだ。
「貯めておくよ。その温情。返して欲しい時に、此方から願う」
「貴方らしい」
彼女は特に驚いた様子もなく、絡んだ具にフォークを突き立てる。声にも表情にも出さないけれども、雰囲気から感じるのは一種の焦燥、緊迫感。軽いプレッシャーになった様だった。
だから巻き付けたパスタを彼女の口元まで運び、静かに口を開けた。
「嫌そうだから、これでチャラにしてあげる」
彼女は眉を顰め、唇を僅かに開いて、また閉ざす。
知っている。人前でそういう事されるのを嫌がる事を。だからわざとそうしたんだ。
彼女は渋々口を開くと、私の温情を受け入れた。また虚無に戻った気がするが、今は目を瞑っておこう。
食事を終えた後、彼女は黙ったまま隣を歩く。時折此方の様子を観察するような視線を感じる。けれども此方が目を向けると、すぐに前を向いてしまう。
ふと、彼女が歩みを止める。此方も歩みを止めて振り返ると、絞り出す様に問い掛けた。
「……貯めたら、私の何と交換するつもりだったの?」
「そうだね。キザな言い方だけど、鬱と冷静さ。辛い事があったら“君から”縋り着いて欲しいし、抱き着いて欲しい。放り捨てた衣類を探して、顔を埋めて泣くんじゃなくてさ」
そう言って笑うと、そりゃもう嗤うと、酷く困惑した様な顔で俯いた。
これでチャラにする。なんて嘘である。何方も対価は変わらない。君の困惑した様な顔を代償に、憂さを晴らそう。
「善処するよ……」
あんまりベタベタしない彼女と、ベタベタして欲しい彼との話。
落ち込んでいる事には気が付いてるんですよ。
最後に『放り投げた衣類探して泣く』という事からも、彼にあんまり縋って無さそう。
だからチャラにしたという発言は、本当の意味ではきっとしてないと思うんです。
彼女から甘えてないし、餌付けする側だし。
でも困惑した顔が見れたからいいや〜。
という腹黒さです。
明日は何を書こうかな。