08
広い会場に所狭しと並んだテーブル、その上にあるご馳走の数々は、
明日のコンテスト決勝戦に備えて、
係員の皆さんに英気を養ってもらうためにと用意されたもの。
俺たちも、ちょっとだけご相伴することに。
俺とツェリアさん、カミスさんとフィアンセのシェルカさん。
自己紹介も済ませて、4人で和気あいあいと立食形式のテーブル巡り。
えーと、妖精さんペアは、
フィナさんがカミスさんの胸ポケットの中、
チミコさんがツェリアさんのお胸の定位置、
そして俺が『縮小』魔法で、ふたりに給仕しております。
「個人で『縮小』魔法を使いこなすとは、シジマ殿は凄腕の魔法使いなのだな」
シェルカさんこそ、会場で突然暴れた男を取り押さえた手際、お見事でした。
「シェルカが強いのは分かってるけど、ああいうのを見るたびにハラハラするよ」
「カミスさんは、シェルカさんのことを本当に大切になさっているのですね」
『らぶらぶでお腹いっぱいになりそうだけど、デザートは別腹!』
「みんな、甘々だよねえ」
そんな感じで、まさに和気あいあいな夕食でした。
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カミスさんたちから"平和の館"へのお泊まりを勧められましたが、
全力で固辞。
流石に、甘え過ぎかな、と。
街の外に出て、例のごとく自由型マイホームを設置。
今日は夕食を済ませてきたので、すぐにお風呂。
そしてお風呂上がりに、お祝いの乾杯。
もちろん、ツェリアさん一次予選突破のお祝いですよ。
「私なんかで……良かったのでしょうか……」
……会場で暴れた男が言ってたこと、気になります?
ツェリアさんの隣で料理していた参加者の男が、
自分の料理に列が並ばないことにキレて暴れ出したんだよな。
その時、シェルカさんに取り押さえられながら男が叫んでいた言葉。
「これ、美人コンテストじゃねーだろっ」
まあ、気持ちは分からないでもないけどさ。
でも、いくらツェリアさんが美人さんだからって、
その隣があそこまでガラガラになるのはおかしいし、
やっぱりお味の方に問題があったと思うよ。
それに、ツェリアさんのクッキーの美味しさは、カミスさんのお墨付き。
あの男とカミスさん、どっちを信用するかと言ったら、
間違い無くカミスさんでしょ。
だからツェリアさんは、あんなの気に病まないで、
明日は美味しいお料理を作ることを楽しんで欲しいな。
「優しい旦那さまに恥じることのないお料理を、精一杯楽しんできますね」
『コンテスト決勝前なのにめっちゃごちそうさま!』