06
華城 華三栖 (ハナシロ カミス)さん。
俺とほぼ同い歳の男性。
痩せっこさんだけど、実はかなりの鍛錬マニア。
王家が駄目駄目だった頃のエルシニア王国で召喚される。
同い歳のエルミナ姫への、周囲からのあまりにも酷い扱いに憤り、
共に国外脱出を決意。
エルサニア王国に身を寄せてからは、冒険者として大活躍。
誠実この上ない人柄・可愛らしい容姿・内に秘めた熱い男気などから、
"若旦那"の二つ名で親しまれている、召喚者男性陣でも指折りのモテっこさん。
なるほど、婚約者6人は伊達じゃないのです。
---
カミスさんに、俺の事情を説明。
訳あって身バレNGなぶらり旅中であること。
出来れば他の召喚者さんたちには内密に願いますとお願い。
「分かりました。 もし僕に出来ることがあればいつでも声をかけてくださいね」
「僕も結構あちこち飛び回ってますけど、この"平和の館"に連絡してくれればすぐに駆けつけますので」
ありがとうございます。
俺も、あまり目立たないで済むことでしたら何でもやりますので。
……すみません。
住所不定の旅暮らしなので、残念ながら俺たちへの連絡方法が無いですね。
でも、カミスさんみたいに人脈が広い人なら、
どんな厄介事でもお茶の子さいさいなのでしょうね。
「いいえ、家長としての心構えとか、夫婦間のあれこれとか、教わりたいことがたくさんありますから」
「これからよろしくお願いします」
こちらこそ、異世界生活の先輩に学ぶことがたくさんあります。
よろしくお願いします。
「それで、これからどうします?」
「奥さまにご挨拶してから、会場を回って試食三昧ですか」
おっと、そうでした。
ツェリアさんに会いに……って、列がまだあんなに。
これは今日は無理ですね、
一次審査終了時間まで、会場内でのんびり、かな。
『お呼び出しを申し上げます』
『シジマ様、ヤツタカ シジマ様』
『至急、案内所の方までお越しください』
---
案内所には案の定……
『おのれ、食べ放題……』
いや、食べ放題じゃないから。
ってか、あれほど目立っちゃ駄目って念を押したのに、
何やらかしてるんですか、チミコさん。
案内所の係員さんによると、
どうやらこのはっちゃけ妖精、
会場中のお料理を片っ端から食い散らかしてたんだと。
しかもコースターも受け取らずに逃げ回りながら。
で、食べまくって飛べなくなったところを、ようやく捕縛されました、と。
「残念ですが、チミコさんは特別審査員を失格ということに……」
申し訳ありませんでした。
何でしたらご迷惑をおかけした分、身体で償わせますので。
『エロ同人みたいに!』
黙れ、食い逃げ妖精。
「よろしければ、僕たちの仕事のお手伝いをお願いしたいのですが」
お申し出はありがたいのですが、ご迷惑では?
カミスさんはこのイベントの運営委員ですよね。
お忙しい中、俺たちのやらかしの尻拭いまで……
「実は、コンテスト本選の方で、チミコさんのお手をお借りしたくて」
この駄目っ娘妖精にも、お手伝い出来ることがあるのなら。
『妖精界のホープ、華麗に本領発揮の予感!』
俺、悪寒しかしないけど。
とりあえず、飛べるようになってもここで大人しくしてること。
あと、間食禁止な。
『別腹禁止警報発令!』