13.やだもうっ
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よかった。飲んでくれた。
そうホッとしたレーネだったが、頭を上げようとしたのになぜか身動きできない。
「?!」
ヴォルが動かせる右腕が、レーネの身体に巻き付いて離そうとしないのだ。
「やだ、ヴォル。離してぇ。うン?!」
一度は離れたレーネとヴォルの唇がふたたび合わされる。
その口腔内に、ずるりと柔らかなものが侵入してきた。
「んっんんっ」
粘膜同士を捏ねるように擦り合わされる。
なにか隠していないか確かめるように歯の付け根の一本一本を隈なく探すように確かめられ、口内に溜った唾液を啜り上げられた。
ヴォルの舌がネーレの中を容赦なく縦横無尽に暴いていくその度に、レーネの身体の奥に痺れるような不思議な感覚が奔った。
これは……これが、正常な状態でハーマユの鱗茎を摂取した時の、副作用なの?
痺れるような感覚に翻弄されつつ、レーネは必死になって、ヴォルの行動を理解しようと努めた。
たぶんきっと、意識が混濁した状態で苦い何かを口へと含まされたことで毒を飲まされたと勘違いしたんだわ。そうよ、昨夜のヴォルも気にしていた。
ならば。今のレーネがすることは、解放を求めて暴れることではない。
ヴォルの不安を無くすように、その行動を受け入れることだ。
レーネは目を閉じて、ヴォルが落ち着くまで、彼のしたいようにさせることにした。
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「はっ!」
気が付けば、レーネまで意識がなくなっていたようだった。
「やだもう。なんで私まで寝ているのぉ!」
あんなに大変なことになっていたヴォルを前にしてちゃんと治療もしないまま眠ってしまった自分にレーネ自身が吃驚だ。
慌てて見上げると、すぐそこに、呼吸が穏やかになったヴォルの寝顔があった。
顔色もすっかり良くなっていたし、なにより表情が穏やかになっている。
「よ、よかったぁあぁぁ」
盛大に息を吐いた。張り詰めていた、といってもいつの間にか眠っていたくらいだけれども緊張の糸が途切れたのか大いに脱力した。
トクトクと規則正しいリズムを刻むヴォルの鼓動に、頬が弛む。
あの後、そのまま気絶なのか眠ってしまったのかわからないが、レーネはヴォルの腕に囲い込まれていたらしい。
そのまま起さないように、大きな腕の中から抜け出した。
呼吸も安定しているしハーマユが効いてきたのか熱もないようだけれど、細かい擦り傷がたくさんついていた筈だ。
レーネは、洞窟から長々と続いていたヴォルが這い出してきたと思われる赤黒い跡を思い出して身震いした。
「あれ?」
確かに、ヴォルの身体は血で汚れていた。
砂だらけだったし、なんなら血で濡れた土もそこかしこにこびり付いている。
「これは……」
けれど汚れがくっついているだけで、傷跡がない。
もちろん、最初にヴォルが倒れていた時にすでに負っていた傷はまだそこにあった。服の上からでもわかる程度に患部は腫れあがっているし、熱も持っている。
それでも、手や顔に付いている小石や砂は、レーネが軽く払うだけでぱらぱらと落ち、その下の皮膚に傷はなかった。
「うそ……私ったら吃驚しすぎて、いろいろ見間違えしちゃったってことなの? 恥ずかしい」
へなへなとその場に崩れ落ちる。
あの時、怪我をした動物たちがたくさんいた。
熱があがったかして助けを求めて這い出してきたヴォルは、彼等の流した血の上を這ったかなにかしたのだろう。
そうしてできた血の跡に、驚き過ぎたレーネは気が動転してしまったに違いない。
「やだやだやだやだ。恥ずかしい。勘違いして、おかあさんから言われてた教えまで破っちゃったよぉ」
頭を抱えてその場に崩れ落ちる。
顔を真っ赤に染めたレーネは、力なくその場へとへたり込んだ。
ハーマユさん達もごめんなさいですぅぅぅ。




