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障子の向こう  作者: 水野うしお
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【三話】海から


母から聞いた、まだ私が二歳や三歳そこらの時の話。


私は大層大人しい赤ん坊だったそうだ。夜泣きもせず公共の場で大声もあげず、ここで待っててと言えば1ミリも動くことなく座って待っているような子だったと母は話した。


でもやはり、数ヶ月に一度は寝付きの悪い時があったらしい。そういう時は、車の揺れが心地がいいのか、ドライブに連れ出すとよく寝るのだそうだ。

いつもは街中を走るがその日は夏だったこともあり、海でも行ってみようといつもとは違う道に車を走らせた。


車を走らせて十数分。その時の海の潮風は少し冷たかったそうだ。こんなに走らせたらもう寝てるだろうと静かになっている私に目を向けたが、なんとも険しい顔をして起きていたのだそうだ。

いつもなら寝ているのにな、と隣で険しい顔をした我が子を不思議そうに見ていた。眠さに抗ってるのか?と考えたが、寝るのが何よりも好きな子がそんな事しないよなと考え直しながら、母はUターンができる所まで車を走らせた。


Uターンをしてすぐ、私は突然怒鳴り出したらしい。


「やめてやめて!ついてこないでって言ってるでしょ!」


幼い子と言えどもその迫力は怖かったね、と母は苦笑いをして続けた。ただ事ではないと分かっていながらも、母は車を止めることなく「どうしたの?」と私に問いかけたそうだ。

すると私はバックミラーを指さしながら


「海からおじさん達が追っかけてくる!来ないでって怒ってるのにずっとだよ!?」

「おじさんたちってどんな?」

「わかんない……けどみんな海から出てくる!まだ出てくるの!増えてく!」


母はそれを聞いて急に怖くなり、急いで家に戻った。そして家に着いた途端、安心したのか私はぐっすり寝ていたそう。


「よく海や川なんかの水辺には幽霊が集まるって言うけど、あんときのうしおの顔みたら、あ、本当なんだなって納得したわ」


母はそれ以降、夜に水辺には行かないと決めている。

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