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障子の向こう  作者: 水野うしお
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【二話】揺らす


小さい頃から寝る時に足を揺らされている感覚を持っていた。

足の先を摘まれ、ゆらゆらとされている感覚。でも寝る時みんななっているのだと思っていた。でもたまに、やはり寝る時にそんなことをされると眠れなくなってしまう時もある。

夜の10時を回っていただろうか。布団から出て母親に相談した。


「足がね、揺れて寝られん。お母さんはどうやって寝てた?」

「はぁ?」


母はぎょっとした顔で私を見た。

私は驚いている母をみて、なぜ驚く?と疑問に思ったのを覚えている。


「寝ぼけて自分で揺らしてんのやわ」

「ちがう!揺らされてるの!」


私の言う揺らされているという感覚を母も、次の日話した同級生たちも分かってくれなかった。


それから数年たった小学校六年生の頃。父親が関西から遊びに来た時のことである。

ショッピングをして、夕飯を食べ、テラスでコーヒーやお茶をそれぞれ飲みながら雑談をしていた時の事である。


「そういえば、この子足揺らされんねんて」と、思い出したかのように母が父に話し出した。

この頃私の家では私が変なことを言うのは本人にしか分からないのでしょうがないと理解していたので、特に面白おかしく言うのではなく、本当に話の種として話し出したのだ。

だが父は、それを聞くと「お前もかぁ」とタバコをふかした。


「俺もやねん。幼稚園生の頃から中学上がるまでやったかなぁ」


父は私の手の先を軽く持って揺らし始めた。


「こんなやろ?」

「そう、そう!」


驚いた。父は私が揺らされているのと全く同じリズムと速さで私の手を揺らしたのだ。興奮した私は父になぜ知っているのかを尋ねた。


「俺も最初は怖かってんけどな。おばあちゃんが「ええで、大丈夫そのうちこれは止まる」って言ってくれてな。ほんまに中学になった途端ピタッと止まったわ。やからうしおちゃん、多分来年止まるでそれ」


父は二本目のタバコを吸いながら私の頭を撫でた。


そして父の言う通り、私の足を揺らしていた謎の現象は中学に入ってからピタリと止んだ。

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