表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
障子の向こう  作者: 水野うしお
10/28

【十話】あの人


小学生の頃、夕方、帰り道。

いつもの様に私は祖母の家を目指していた。母は当時多忙な人で、夕飯を一緒に取れるのは週に二回あるかどうかだった。

今日の夕飯はなんだろうか。味噌汁が出るなら油揚げが入ってるといいな。なんてことを考えながら坂を登っていた。


ふと上を見ると、女の人がこちらに向かってきていた。肩まで伸びている緩やかなウェーブのかかった茶髪のお姉さん。とても何の変哲もない人に見えたのだが、私はその人から目が離せず、通り過ぎるまでジロジロ見てしまった。


通り過ぎた後も振り返って見たかったが、振り返らないよう、少し早歩きで祖母の待つ家に帰った。


……あの人、死んでるんだろうなぁ。


そんなことを思いながら、家にたどり着いた。



その日の夜。

私は基本寝てる途中で目は覚めないのだが、カリカリカリという音でふ、と意識が戻った。窓ガラスを引っ掻いている音だった。ゆっくりと目を覚まし、目をやると、茶髪が見えた。


「……どぉして、わかったの……?どぉして、……わかったの?」


外から聞こえてくるその声が、夕方見た女の人のものだと理解した。


「鼻、が全部なくて、血が出て、るから……あと、目ん玉もないと……」


私は寝ぼけながら窓の外の存在にゆっくりと語りかけた。

窓の外にいるそれは納得したのか気づけば気配すら感じなかった。そのまま私は完全に眠りに落ちた。


朝。

母親から腕を引っ張られながら起き上がる。目を擦りながら「おはよう」と声をかけると母は少し考える素振りをして「昨夜なんの夢見たの?」と聞いてきた。


「なんか……あんた怖いこと言っとったよ。鼻がないだの血がどうたらとか」

「あー、んー。なんか、鼻のない人とすれ違ったから……」

「……来たの?その人が」

「うん多分」

「やめてやぁ!」


母は私の背中を思いっきり引っぱたいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ