私と花
ある日通りがかりのお花屋さんでドライフラワーをみた。
何故だか一際目立って美しく見えた。
もしかすると最近のやるせ無い落ち込んだ気持ちが、枯れている花にそっくりだったのかもしれない。
私は「いつか絶対に使おう」と思っていた透明のワインのから瓶にドライフラワーを生けた。
やりたいとずっと心にしまっておいたことが、ようやく1つ達成した。
次に雑貨屋さんで買った金色のヒョウタン型の花瓶、300円の白い花瓶、プレゼントで貰った小さめの大理石のような柄の花瓶、とどんどん私好みの物が増えていった。
壁に飾ってあるピラミッドやスフィンクスが描かれたポストカード、
引き出しにしまってある150円で詰め放題をした約200枚のポストカード。
どこかの美術館のものや、油絵で描かれたお花や建造物、北海道のイルミネーション、
こんな素敵なものを1枚1枚好みの物を詰めていいだなんて。
私は、どんどん自分の趣味、好きなもの、好きなことが増えていった。
そうして、刺繍糸を買ってお花の刺繍をするようになった。
初めに出来た作品は、紅紫と薄ピンクのお花が目立つ。
これ一つあれば、部屋が締まるくらいに引き立っている。
完成するのに数時間はかかるが、その後何度か刺繍をしては額縁に入れたりした。
最近は見つけたヴィンテージショップであまりに美しすぎる食器を見つけてから、
私は食器を集めることにハマっていた。
淵にピンクのお花が描かれたパスタ用のお皿や、珍しいと思い買った全体が緑色のお花の柄、
オレンジ色でもの凄い光沢のあるお皿、オレンジのひまわりが描かれたコーヒーカップなど、
通って通って集めたたくさんの食器。
そして、昔使った絵具と買ったキャンパスに絵を描くようになった。
カラフルにピンクのコスモスやオレンジと黄色のひまわり、濃いオレンジやグレーで際立てたりもした。
小学生が描いたお花畑の絵にも見えるが、私は満足だった。
その他にも、「90年代のおばあちゃんのお家」を想像して黄色のクロステーブルに
リンゴやチューリップを生けた花瓶、コーヒーカップやケーキスタンドを描いて、
黄土色のカーテンに、空の景色も見えるように作品を作った。
いつか、夢であってもいいからそのくらい昔のお家に住んでみたい、
そんな思いがあって描いたのだろう。
最近おばあちゃんにもらった、白鳥の花瓶。
こんな素敵なものもらって良いのかと、私はどんどん高まった。
さっそく生けたのは「ケイトウ」というお花だった。
これは幾つかの花屋さんで見て、一目惚れしたもの。
見た目が、明らかにお花ではなく図工で使うモールのようだった。
どうやって枯れるのだろう、そんな疑問も浮かべこの美しい花を手にとった。
そうやって一つ、また一つと「自分」を増やしていく自分に、
気がつくと始まりのドライフラワーに加えお花も趣味も増えていった。
私が生きてて良かった、と思う瞬間。