勇者vs英雄、真夏の決闘 4
俺は外向きに曲げた左手首を腰に当て、右掌を上に向けて鷲の爪のように指を軽く曲げ、クロスした足を爪先立ちにして上から目線でこう言った。
「まあいいだろう。どうしてもと言うなら、もう一度だけ勝負してやってもいいぞ。ただし、俺の指定するゲームでな!」
このポーズに特に意味はないんだけど、いや何となく。
「当たり前よ! あんな卑怯な手、認めないわ!」
「いいだろう。簡単なゲームだ。交代で1から交互に数えて10まで行った方が負け。一度に数えられるのは3つまで。俺から行くぞ。1!」
「え?え?え?」
俺はニッコリ笑って優しく教えてやった。
「アレキは2か、2・3か、2・3・4から選ぶんだよ」
「2・3・4よ!」
「5」
「6・7よ!」
「8・9」
「あーっ!」
「ハイ俺の勝ち〜」
コレ休み時間に部長に散々やられたヤツ。先攻で1、5、9、13、17、21、25、29… と4ずつ増える所で止めるようにカウントアップして行く。最初にその次の数、つまり10とか18とか30を負けの数だと指定しておけば先攻が必ず勝つ。何回も何回も負けて後でコッソリ来生に聞いてやっとわかったというね…
布団の中で悔し涙を流した物だが何が役に立つかわからない。アレキには悪いが部活の恨みを異世界で晴らさせてもらおう。
「せっ… 先攻の方が有利に決まってるじゃない! ズルいわよ!」
「じゃあ次。1から10までのどれかを選んで足して100まで行ったら負けゲーム。アレキが先攻ね」
「え? え? 10!」
「1足して11」
「6足して17よ!」
「5足して22」
あとは簡単、33、44、55、66… と答えて行けば…
「7足して99だ」
「あ… あう… あう…」
後攻が必ず勝つ。
「はいアレキの負け〜」
「ズルい〜 ズルい〜」
あ〜、泣き出しちゃったよ。最早なにがズルいかわからないけど悔しくて悔しくて、そう繰り返すしかないというね…
俺だ… お前は3か月前の俺だ… 何だか、ちょっと可哀想になっちゃったな。自分がやられて嫌だったんだから他人にしちゃいけなかったかも。
「もういじどじょうぶじなざいよ〜」
あ〜、もう涙でベショベショだよ。これ勝つまで終わらなくね? っていうか、もしかしてアレキあのタイプ? ほら、ライバルとして何度も何度も勝負を仕掛けては負けて、その度にフラグが立って好感度が上がるってアレ。
下手したらアレ。最後には『くっ、殺せ!』とか言ってエッチな展開になったりするヤツ。『くっ殺!』
マズイ! 俺何回勝った? もう3回? ヤバい!
「わ、わかった。じゃあこうしよう。次が最後の勝負だ。ズルをしたお詫びに次でアレキが勝った時の御褒美は今までの負けが全てチャラ、無かった事にしてやろう。しかも先攻・後攻、好きな方を選ばせてやる。勝っても負けても恨みっこなしだ」
「わがっだ…」
「ただし! ここまで譲る以上、負けたら厳しいペナルティーを与える! 俺に負けたらアレキは俺の奴隷になってもらう!」
「何だと!」
「それは聞き捨てなりません」
カクさんとスケさんが茶々を入れるがそれも想定内。
「従者は黙っていろ。俺が女共に毎晩何をしているか知っているか? 女房と奴隷の計4人を並べて朝までくんずほぐれつ! 負けたら貴様は5人目だ! ベッドに並べて同じようにしてやるぜ! さあ、どうする! 嫌なら帰れ! ゲーヘッヘッへ、ゲヒャ ゲヒャ ゲヒャ ゲヒャ ゲホッゲホッ オウェッ」
もちろん大嘘だ。
「おのれ人間のクズが! 姫、このような者の話を聞く必要はありません! 切って捨てましょう!」
「落ち着きなさいカクさん、感情的になってはいけません」
カクさんがヒートアップして来たがスケさんの方はやけに冷静だ。
よしよし、いい流れだ。今のセリフで好感度はマイナス100万、地面にめりこんで地球の反対側に突き出ただろう。
関わりたくなくて勝負を断るならそれで良し、やるならワザと負けて今までの勝ちをキャンセルする作戦! うまくすればフラグも解消するかも!
「ぐすっ ぐすっ… それで次の勝負は?」
「それは… ○☓ゲームだ!」




