勇者vs英雄、真夏の決闘 3
「どうやら私に挑戦する資格はあるようね」
どうしてこんなに上から目線なのか。
「挑戦した覚えないんですけど。アレキは何でそんなに俺に絡むの」
「アッ、アッ、アレキだなんて! なに勝手に省略してるのよ!」
「アレキだってカクさんスケさんって略してるだろ」
「目上の者が目下の者にするならいいのよ! 貴方私より上のつもり?」
え? いや? 俺の事は別にいいんだけどさ。2人ともいい年した大人の男なのに目下だから何してもいいって何か違うくない? 俺がリラ達相手にしてる時とは全然違う言いようには共感しようがない。まーでも一応『さん』付けなのは好感が持てる。逆に俺が『さん』を付けなかったのは失礼だったな。
「じゃあアレキさん」
「ドラはどこ行ったのよ」
あーうるさい。だんだんムカ付いて来た。
「じゃあドラ娘のアレキさん」
「ムキーッ! 意地でも略する気?」
「そんなに嫌なんだ。じゃあこうしよう。俺が勝ったらお前はアレキだ。2度と文句言うんじゃないぞ!」
「じゃあ私が勝ったら何でも言う事を聞いて貰うわよ!」
「いいぜ!」
あっ、しまった。勢いで乗ったが俺に不利過ぎない? まあ勇者の証と神殺しの手甲があれば大抵いけるけど。
「あーっはっは! 貴方私に勝てるつもり?」
「普通に勝ちますが何か?」
「何にも知らないのね? この髪の色を見てもわからないの? 私は英雄! 『勇者』は『英雄』には絶対に勝てないのよ!」
「そんな決まりはないね〜」
「貴方、相克も知らないの?」
「何ぞソレ」
俺の質問にアレキは心底馬鹿にしたように答えた。
「相克は相克よ。勇者とは勇ましい者。つまり勇ましいだけのただの人間。一方、英雄は神の子孫! 人間である勇者では、神の子である英雄には絶対に勝てない! それはこの世界に組み込まれた法則であり構造なのよ!」
「俺より強いんならアレキが冥王と戦えばー?」
「わかってないのね。冥王は主神と同格の神。英雄は神の命令に逆らえない。戦えるわけないじゃない。これも相克よ」
「人間に英雄が勝ち、英雄に神が勝ち、神に人間が勝つんだな」
「馬鹿? 人間の分際で神より上のつもり?」
さっきから上だ下だってソレしかないんだな。
「だから人間の俺が勇者に選ばれたんだろ」
「ぐっ」
「要はジャンケンだな」
「何よりソレ」
そんな事も知らないのか? と言いたかったがやめておこう。それではコイツと一緒だ。俺は右手でグーチョキパーの形を作りながら説明した。
「グーにパーが勝ち、パーにチョキが勝ち、チョキにグーが勝つ。一番偉い奴なんていない。それがジャンケンだよ」
「ま、まあ同じかしら」
「それでこうやるんだ。手ぇ出して。こう、これがグーだ」
俺がアレキに近寄って手首を握り、指を包んで曲げさせるとアレキは何故か黙って指を曲げて素直にグーにした。近くで見ると綺麗だし素直にしてたら可愛いんだけどな。
しかし、これはからかいがいがありそうだ。
「んでこれがパー。よっしゃ勝ったーっ! 俺の勝ちーーー!」
「ちょちょちょちょちょ、ちょっと待ちなさいよ! まだ勝負は始まってないわよ!」
「何を言う… 常在戦場。人生は常に戦いだ! 相克の話をしたのはアレキ自身。じゃんけんのルールもキチンと説明した。その上で俺に言われるままグーを出した時点で! アレキは身も心も俺に敗北していたのだーーーっ!」
「ぐうっ!」
アレキは無茶苦茶偉そうなんだけど言い負かされると言葉に詰まるのが弱点だな。トランプで負けたら机を持ち上げて俺の頭に叩き落とし『これで私の勝ちよ!』と叫んだ部長に比べたら、どーって事ないぜ!




