勇者vs英雄、真夏の決闘 1
2021.7.26アレキのカラーリング修正
「私はアレキサンドラ。テーバイの縮緬問屋の娘よ」
青い髪に碧い瞳。キリリとした顔立ちに引き締まった身体、都市の装備屋にもそうはない金のかかった戦闘用の装備。そして腰に佩くのは、柄にも鞘にも金銀と、遥か異国にしか産しない筈の色とりどりの宝石が散りばめられた宝剣。一見してそこらの商人の娘ではない。
両脇には侍従が2人。安っぽい布地の貫頭衣、つまり村人ルックで一見すると都市の下級兵士の雑兵ルックにも劣る。しかし隙のない構えと足音を立てず滑るように忍び寄る運足は明白に一般人と異なる格闘技経験者のソレ。それもオリンピック選手並みの動きだ。
都市の下級市民は2〜3人の奴隷を所有して身の回りの世話や荷物持ちをさせている。村人ルックの侍従を2人連れているというのは、つまり一般市民なら極々普通の出で立ちだ。
しかしソレが逆におかしい。主人がこれみよがしに佩いた宝剣、あれ一本でひと財産になる。日本でなら1億2億では収まらない値が付く国宝級の代物だ。しかも身分の高そうな美少女までオマケに付いて来て人質に良し夜伽に良しとなれば、盗賊団や奴隷狩りが目の色変えてダース単位で早い者勝ちと我先に襲いかかって不思議はない。
つまりその全てをあの3人、いや、もしかしたら素手の2人で駆逐できる目算があるという事だ。こっちには勇者の証があるけど、ここまでの相手だと類似品を持っているかも知れない。
しかもコッチは相手の得意技がわからない。正拳突きが来るか蹴りがくるか、それとも突然地面に這いつくばって視界から消えゴキブリのように地面を突進して足にしがみつき転ばされるか関節を逆に極められ折られるか。
最近では百裂脚くらい軽く捌けるようになり、師匠は特訓と称するDVに見様見真似で知り合いの技を混ぜてくるようになった。ウッカリ近づくと吸い込まれて掴まれてクルクル回って地面に叩き付けられるのはいいとして『真空投げ』はもう反則だ。しかしおかげで大抵の動きには即応できるようになった。
かと言ってリスクを取る必要はない。ここはスルーだ。
「ちりめん、おいしいですよね。アツアツの白ご飯にかけると。じゃ、急いでるんで」
しかしまわりこまれてしまった
「待ちなさい、逃げる気?」
「ツレを待たせてるんで。じゃ!」
しかしまわりこまれてしまった
「この私があなた如きの相手をしてあげるのよ、有難く思いなさい」
「そういうのいいです」
しかしまわりこまれてしまった
「待ちなさい、逃げる気?」
「だーーーっ! 分かったよやってやるよ!」
何回やっても回り込まれる予感しかしない! セリフが2個でループしてるし!




