海だ!水着だ!おいかけっこだ! 3
海の家の親っさんは見た感じ子猫亭の親っさんとよく似ていた。正直、双子と言われれば信じてしまうくらい。間違い探しだとしたら相当な高難度だ。
だがゲーム世界ではどの街のバケモンセンターでも同じ顔のお姉さんが出て来るのが普通。ここは突っ込む方が野暮なんだろう。
「こっちだ」
親っさんマリンバージョンに案内され先程の十字路を曲がると、その先には天然の湾があって白砂が溜まり海水浴場にピッタリのビーチになっていた。
「碧い海!」
「青い空!」
「白い…砂浜…」
「行こうぜ!」
「ひゃっほー!」
「ひゃ… ひゃっほー」
「ちょっとみんな! 遊びに来たんじゃないのよ! それにこの浜辺にはクラーケンが出るって!」
山暮らしの長い3人は海を見て大興奮。イキナリ浜に向かって駆け出してしまった。委員長モードの真由美が叫んでも聞いちゃいない。
「イカ漁は深夜から明け方だ。クラーケンは夜明け頃に帰る船を追って来る。仕事は明日の夜明けだから今日は休んで、早目にしっかり寝といてくれ」
マリン親っさんの話に真由美の瞳がキラリと輝いた。
「じゃあ今日は自由行動日ですね!」
言うなり3人の後を追いかけて駆け出した。
「ケンちゃーん! 早く早くー!」
あっと言う間に浜への坂道を駆け下り、振り向いて手を降る真由美。
真由美がはしゃぐのも無理はない。川では真由美とろくに遊べなかったからな。主にみんなの選んでくれたピチピチのビキニパンツと、あと三頭犬のせいで。
だが今回の俺は違う! 今日までほとんどの日々を、このビキニパンツを制するための特訓に費やして来たのだ!
最初はその締め付けとコスレに身動きもまならなかった。顔を真っ赤にして内股で身をよじる様を女子一同にからかわれた俺だが、男子三日会わざれば刮目して見よ!
日々このピチピチビキニ海パンを履きこなした結果、今では買い揃えた勇者ルック(マリンバージョン)の下に、こうして常時身に着けてもヘッチャラなのだ!
もちろん全員、すぐに海で遊べるよう朝から下に水着を着込んである。
「もう少し説明する事がある。あれを見てくれ」
マリン親っさんの指差す先、浜辺には小ぶりな木造船が数十隻あげられ、所々に突き出た石灰岩の塊や砂浜に打ち込まれた太い杭にロープ繋いである。
「ほとんど人がいませんね」
「男達は朝方帰って酒かっくらって寝てるからな」
「あの…」
「ハイ?」
「キャーーーー!!!」
声を掛けられて後ろを振り向くと、いつの間にか少し年下の女のコ達が7、8人後ろからついて来ていた。
「キャー!」
「こっち見たー!」
「ステキー!」
「都会の男の子たまたまー!」
「おかしー!」
「ね、ね、このネックレス銀だっぺ?」
なんぞコレ?
「プ…プラチナ。多分」
「凄ーい! オシャレー」
「うちんちこん?」
「あーっ、抜け駆けー!」
「ズルーい!」
「私もー!散らかってるけどすぐかたすからうちんちくるべ」
「じゅんぐりだべ」
所々訛ってて聞き取り辛いが、どうやらどこかに誘われているようだ。
「あ… あの? この子達は?」
「村の娘達だよ」
「何て言ってるんですか… ね?」
「私の家に来てくれませんかって言っとるぞ」
女の子達は全員、期待に満ちた目で俺を見ている。
「いやっ、何で?」
「こういう村には新しい血が入らんからな。他所から強い旅人が来たら娘っ子がもてなす仕来りだ。常識だろ? 大丈夫! 生まれたら村の子として大事に育てるから」
「ちょっとマリン親っさん! 今なんか不穏当な発言が!」
「マリン親っさんか、長いな。マリおでいいよ」
もっと不穏当な発言が!
「この世界では一夫一妻制で女の子は結婚まで家を出ないんじゃなかったんですか?」
「お固い処女神を祀る陸じゃあそうだろうが、ワシら海の民が祀るポセイドン様は開放的でな。せっかく勇者殿が来たんだから10人いや20人くらいは…」
「やめて下さい!」
こんな話、真由美に聞かれたら危険が危ない!
「こん糞がー!」
あっ、勇者の証が光った。と思ったらバキッっと派手な音がして折れたオールがクルクル回りながら空を飛んで行った。
「でれすけ!」
「きもいる!」
「シルバーアクセのチャラ男が!」
「リア充もげろ!」
「爆発しろ!」
イキナリ後ろから殴られたようだ。あ、2本目。3本目。あーもう意味わかんない。
「爆発Lv3」
ちゅどーん。
煙が晴れると、そこには日焼けした男子が3人転がってピクピクしていた。海パンや髪の所々からプスプス煙が出ている。
「あの、大丈夫ですか?」
怪我してないといいけど。




