たまには校長室を覗いてみるのもいいよね
飯田さん入れ忘れたので修正
「リモートで説明済みですので今更ですが当事者である3人には直接掻い摘んで御説明しましょう。そもそも本校の創立者である…」
部屋の奥には額縁に入った白黒の人物写真や表賞状を背に立派なデスクに座するキラリと光るメガネをかけたハゲ。いや校長。その左には学園史や教育理論の小難しい書籍が並んだ背の低い本棚、その上には紅いリボンのかかった大小の金色のトロフィー。右には何かの優勝旗。
デスクと入口ドアの間にはソファー、テーブル、向かい合わせにソファーという川の字の形で応接セットが配置され、俺は入って右側のソファーに座っていた。右に真由美、左に後から入って来た飯田さん。
両手に花はいーんだが俺は本日2度目の催眠音波に沈没寸前。真由美は背筋をピンと伸ばしピッタリ合わせた膝の上に両手を重ね、キリリと唇を引き結び、まさに委員長、凛とした姿に鋭い瞳で校長の話に聞き入っている。
夢の中ではベタベタ抱きついて来たりキスをせがんだり、油断すると乳首を触ったり脇の匂いを嗅ぎまくったりデレ度のハンパでない真由美だが… あれは俺の夢の登場人物、つまりは俺の願望であって。本物の真由美は手に手を取って遊んだ小学生の真由美と違い、今や俺の手の届かない凛々しいド高め女の雰囲気を否応なく醸し出している。
一方、俺はと言うと。
ぐう
ソファーに沈み込んでコレである。
ぐり。
なんか脇が痛いな。
ぐりぐり。
ぐうぐう。
痛っ! 誰か足踏んだ? んー。今ねてた俺? ああ、起こしてくれたんだな。ありがとう真由美。ふと気付くと左肩には飯田さんの頭がコトンと落ちてスヤスヤ寝息をたてている。組の男子が見たら目を剥いて怒るに違いない。「何であんなヤツに」ってね。
「という訳で当該2年生テニス部男子は昨夜付けで本校を除籍処分となりました。ご両親は近日中に市外へ引っ越されるとの事で彼がこの街へ帰って来る事はありません。警察にも適切な対応を頂き犯行グループは全員確保されました。しばらくはパトカーも皆さんの通学路を巡回しますので安心して勉学に励んで下さい」
「甘いんじゃないでしょうか」
「は?」
「私達、誘拐される所だったんですよ。もしかしたら… 殺されてたかも。除籍ではなく退学が適正だと思います」
「清水くん、言葉が過ぎる。拉致未遂だ。君達3人ともカスリ傷ひとつない。結果的には何も被害がなかったんだから警察も学校も過重な処分は出来ん」
これは真由美の向かいのソファーに座った口煩い学年主任の先生。言葉はいつも通りいかめしいけど瞼は落ちかけてる。校長の催眠音波おそるべし。おや、校長までウトウト舟を漕ぎ始めた。自分の催眠音波で自分が寝てるんだから世話はない。
学年主任の隣、俺の向かいには軽くカールしてふわりとしたロングヘアーで、ピッチリとしたスーツに身を包んだ女の先生。
胸元には『教育実習生 来生 綾女』の名札。良く見ると…
「やだ、ジロジロ見ないで」
「知ってるとは思うが彼女は教育実習生の来生先生。君らの組の出君の姉だ」
「あれ? 教育実習は6月末までじゃあ…」
「ほら、大雨で休校になったでしょ? その分、延びちゃったの」
「我々は警察や保護者の対応で忙しい。君らの対応は来生先生に一任する」
「あと少しだけどヨロシクね」
さすが来生のねーちゃん、文句の付けようのない美形だ。でも…
「あの、名札にゴミが」
よく見るとクルッと巻いた小さなゴミが付いている。単におっぱいを眺めていただけではないと分かって貰えただろうか?
「あ、これ? 中に入ってて取れないのよ。3週間で終わりだからそのままにしちゃった」
大人の色気を溢れさせながらも、さすがにまだ女子大生。テヘペロというしぐさには学生らしい初々しさがあってヨロシイ!
「そんな事よりコレについて説明して貰おうか」
学年主任の先生がテーブルに置いたのは授業で使うタブレット。画面にデカデカと映っていたのは抱き合って熱烈な口づけを交わす学生服のカップル。電柱に、壊れたミニバン。
「記憶にありません」
真由美っ?
「昨日の事はショックで記憶が混乱してるんです」
「えーっと、それに、顔がハッキリ写ってませんよね。これじゃあ誰だか…」
「ふざけるなあっ! この車はアレだろう! じゃあお前ら以外誰がいるっ!」
しまったヤブヘビだった。このヒト怒り出すとシツコイんだよなー。
「ちょっとキミやめたまえ」
「提案があります!!!」
その時、生徒指導の先生を引きずりながら校長室に乱入したのは、部長だった。




