出動! 真由美お姉さまファンクラブ
やっぱり歯磨き粉はミント味。ミント味よねー。チューブのキャップを取って、下向きに握り締めて、歯ブラシの上でギューっとして、ブチューグルグルグルグルー! 仕上げに上に軽くピッと尖らせてー
出来た! ソフトクリームミントあじー! あーんパクッ。ガッシュ ガッシュ ガッシュ ガッシュ ぶくぶくぶくぶく。
でもやっぱり1番はチョコミントよねー。せっかく昨日スーパーでベコちゃん印の永森チョコ練乳チューブを見つけてさー、これ混ぜたらチョコミントになるってウッキウキで買って帰ったのにー、お母さんったら私のこと宇宙人を見るような目で見ちゃってさー、1回も使わないうちに取り上げちゃうんだもん。酷いよねー。
ガッシュ ガッシュ ガッシュ ガッシュ ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく。
「おはよう、山田さん」
「ぶぁ?」
横から突然声をかけて来たのは背の高いショートヘアの女の人。キリッと結んだ小さめの薄い唇、切れ長の目に鼻筋の通った美人。下はセーラー服のスカートだけど、上は縁に赤いラインの入った白い体操服。でかでかと『黒田』の名札が縫い付けてある。昨日いきなり仲間になれって言って来たセンパイね。
「ぶべーっ、ガラガラガラガラ、ぺっ」
「何してんの! 黒田センパイにかかるじゃない!」
あわてて飛び出して手足を広げて盾になった女の子は… クラスメートの遠藤 帆波だっけ。あともう1人…
「はじめまして、山田センパイ! ヨロシクお願いしまーす!」
をーっ、何だか良くわからないけど凄い勢い。誰?
「この子は 合田 花恋、1年生。我が『真由美おねえさまファンクラブ』は今この子を入れて3人で活動してるの。そして栄えある4人目が美奈ちゃん、あなたってワケ」
「黒田センパイが大抜擢して下さったんだから有り難く受けなさい」
「押し付けは良くないわ、遠藤さん」
「すっ、スミマセン、センパイ! 私、少しでもセンパイのためになりたくって」
「いいのよ。美奈ちゃんの家が真由美おねえさまの隣って事、あなたが気付いてくれなければ見落としたままだったんだから。でも、真由美おねえさまの情報は網羅したつもりだったのに、こんな重要な事どうして見落としてたのかしら?」
「ハーイ! マユミが卒業しちゃって接点がないからだと思いまーす」
元気よく手を上げる1年。騒がしい子ねー。
「コラッ、花恋! なに呼び捨てにしてんの!」
「遠藤さん、せっかく入ってくれたんだから新人には優しく」
「ハイ、香織おねえさま」
「私には付けない。最近の活動は偶然撮った真由美おねえさまの写真を共有して、おねえさまの素晴らしさをラインで語り合うのが主な活動ね。美奈ちゃんがファンクラブ№4号になってくれるなら、今まで撮り溜めた画像は全て提供するわ」
「ホントー? 入るはいるー」
「待ってください黒田センパイ。美奈、入部するならアナタも写真を提供しなきゃ。隣に住んでるんなら何か握ってるんでしょ?」
「ふっふーん。これこれー。見てーみてー」
「山田さん、スマホは先生の許可なく使用禁… キャー!」
「センパイ、どうしたん… ギャー!」
「見せてー。うっわー」
「山田さん、これ相手は誰? 誰なの!」
「おにーちゃん」
「誰の!」
「私の」
「これいつ? いつなのよぅぉぅぉぅー」
肩つかんでブンブンゆすらないで〜
「昨日、知り合いの占い師さんが高校の外で撮って送ってくれたの」
「おねえさまに彼氏がいたなんて聞いてないっ!」
「隣同士だから幼馴染なんだけどー、中学に入ってすぐケンカしてー、昨日3年ぶりに仲直りしたんだって」
「ショ… ショックで… 立てない…」
「しっかり、先輩」
「他にも湯上がりに浴衣の写真なんかもあるけどー。藍色の生地にカキツバタの柄がオシャレでー、湯上がりの肌がとってもセクシーなのー」
「ちょっ!なんでお兄さんに抱き付いてるの? しかも胸元が…」
「ちょっとだけ開いて見えてるでしょー。欲しいー?」
「ほしいっ!」
「あげてもいいけど私からも1つ条件があるの。みんな真由美おねえちゃんの学校に知り合いはいる?」
「陸上部の先輩なら…」
「私は合唱部の先輩が」
「合田さんは入学したてだから卒業生に知り合いはいないかなー」
「小ぃねーちゃんが行ってるよ」
「よーし。じゃー今から言う通りに…」




