育成イベント後半 2
「お食事しながら聞いて下さーい。育成も後半いよいよ大詰め。ここで極秘情報、水源地帯には何と!LR斑火竜が潜んでいるって伝説があるのー。コテポーズ!」
「伝説?見た奴いるの?」
「いませーんコテポーズ!」
「誰も見た事ないから伝説なのか」
「それでLRなんだ」
「条件を満たせば極稀に遭遇するLR斑火竜。強さも段違いですが倒すと確率で仲間になりまーす!」
「これ出ない奴」
「出るまで叩けば出るよ」
真由美の言う通りだが日本に帰る日がまた先延ばしになる。コンプを諦めるのもプレイ上必要な英断だ。
「強力なLR斑火竜を是非入手してください!コテポーズ!」
「狩れたら狩るわー」
「では何かご質問はー?はい勇者ケント〜」
「火竜は地水火風の四大元素で分類すると火系だと思うんだけど斑火竜はなんで水系のイモリなんだ?」
「何言ってんだいケン坊、昔っから火竜は『みずけい』だろ?」
「リラは?」
「みずけい」
「カティーは?」
「み…みずけいだよケント兄ちゃん…」
「何でだ〜っ!俺の世界では炎ゴーって吐く『ひけい』つか『ほのおけい』だぞ?!」
「変なの〜常識ねーなケン坊はー」
「でもケンちゃんは異世界から来たから」
「こ…こっちとは常識が…逆かも…」
「リラもカティーもケン坊に甘いねぇ」
「でも夜出たのは火い吹いてたぞ?」
「斑火竜は噴出する毒霧が白く輝く様が炎や煙のように見えるの。だから別名ファイア火竜とも呼ぶのよ。コテポーズ!」
「デカいのが吹いたのも毒霧だったんか」
エフェクト出てすぐ特効で封じたからわからんかったわ。
「私が説明申し上げましょう勇者ケント様!」
「テンションたけーよポリリン」
「そもそも火竜は『みずけい』のモンスターで間違い御座いません!」
「イモリはカエルと同じ両生類だもんね」
「知ってた速報」
確か図鑑で見た気がする。それに真由美に合わせてれば間違いはない。
「火竜は『みずけい』なので水系攻撃を吸収し逆に回復する能力があります」
「カエルのツラにションベンってヤツな」
「また体内に体重の10倍の水を蓄えており炎系攻撃のダメージを9割カットできます。更にこの水を蒸発させる事で気化熱を奪い炎系ダメージを99%カット出来るのです!」
「ソコは合理的に説明できんのな」
「薪の間に隠れていて火を点けると出て来るので火竜と呼ばれるようになったのです」
「1,001キロの火竜は91キロの本体が910キロの水を蓄えている計算ね?」
「違いますマユミ様、異世界の単位は良くわかりませんが、千キロの火竜は1万キロの水を蓄えているのです」
「それだと1万1千キロにならない?」
「いえ、千キロですが何か?」
「飲んだ分だけ体重は増えるハズだよな?1万キロどこ行った」
「質量保存の法則に反するわよね」
「常識で考えろよケン坊。このポーチだって物をいくら入れても重さは増えないだろ?」
「ポーチの重さパラメーターは固定だよ」
「お…重さが変わったら…変だよケント兄ちゃん…」
言われてみれば俺のポーチにはHP回復薬だけで999個入っているが重さは一切増えていない。何だかソッチの方が正しいような気がして来た。
「それでは納得したところで育成後半に、突入〜!コテポーズ!」
「「コテポーズ!」」
こっちに来てから朝昼晩オリーブオイルを使った料理を食べて定期的にこのポーズをした結果、便通が劇的に良くなった。学校で椅子に座って勉強していた頃とは違ってツルリと抜ける。この2つは日本に帰ってからも続けた方がいいかも知れない。
「もう1回、コテポーズ!」
「「コテポーズ!」」
でもカッコ悪いから人前ではやめておこう。