一家団欒?
キッチンで手を止めて振り返り、まるでいつもそうしてるみたいに暖かく優しい笑顔で声をかけて来たのは、母さんじゃなく… 真由美だった。
夏服の上にエプロンをかけて腰の上でキュッと縛って。そのせいかいつもの制服のスカートに包まれたお尻が、こう、肉感的に突き出して。エプロンをボンッと突き上げるのは、さっき揉んどけば良かったと思ったあの…
「やだもうジロジロみてー。相変わらずエッチなんだから!」
「相変わらずって、中1の時から何もないだろ俺達」
「ハイハイ早く座って。真由美ちゃん、賢人が起きるまで待ってくれてたんだから」
「はいお味噌汁。ウチで作って持って来たの」
真由美は軽く温めた味噌汁を汁椀に注いで、手際良くテーブルに並べていく。既に並べてあるサラダやお浸しや小ぶりのアジの塩焼きからラップを取って…
母さんが茶碗に御飯をよそいながら言う。
「アジも真由美ちゃんが持って来て焼いてくれたのよ。お母さん、ずーっと女の子が欲しかったから娘が出来たみたいで嬉しいわ」
「えーっ。 私は女の子じゃないの〜?」
「あら? そうね。美奈ちゃんはあの本の話ばーっかりだから男の子みたいだもの。さ、話はあとあと。温かいうちにどうぞ」
くぅーっ。真由美の手作り朝ごはん! 現実が一歩だけゲームに近付いた! 命懸けで真由美を助けたのは無駄じゃなかった!
「いっ… いただきます」
「いただきまーす」
「ひははひはーふ! ずるずるハフハフ」
カチャカチャ
「美奈ったら食べるのはいただきますしてから! かき込まずに良く噛んで! 箸の音立てない! 母さん、そんな風に躾けた覚えありませんよ」
いや躾けたの母さんだから。
「全く親の顔が見たいわ」
母さん鏡かがみ。あっ、美奈。
「ちょっと出せ。美奈、アジは頭から食べない」
丸呑みとかペンギンかよ。
「ぷはっ。これアジって言うんだ」
まったく、初めて見たみたいに言って。
「こうやって、お皿の上で箸でほぐす。あと小骨は脇に除けて食べる」
「あ、それでね、何と! 真由美おねえちゃんから重大発表がありまーす」
「賢人にお願いがあって来たんですって」
え? 俺に?
「あのね、その… 一緒に、学校に行って欲しいの」
「俺と2人で、学校に?」
「いやっ、そういう意味じゃなくてね! 昨日の人達がまた来たらと思うと怖くって。お父さんに車で送ってって頼んだんだけど『昨日は色んな事があってあんまり寝てないんだ。賢人くんに頼めばいいだろ』とか言うの」
「真由美おねえちゃん、おじさんの声真似上手じょうず〜」
「清水さんね、警察や先生の話聞いて真由美ちゃんを乗せて帰ったり警察に被害届出ししたり色々大変だったみたい。自転車も真由美ちゃんと一緒には乗らなかったから、もう1回取りに行ったんですって」
「そしたらお母さん『昨日面倒かけた上にお願いするんだから、キチンとご家族にも挨拶して来なさい、手土産ないから、かわりに朝ご飯のお手伝いして来たら?』とか言うのよ〜」
やったーーー! おじさんおばさんGJ!
「そんなに気を使わなくても賢人なら大喜びよねー?」
「かっ、かっ、かっ、母さん!」
「もぐもぐあぐあぐ、ごっくん。お兄ちゃん照れてるテレてるー」
「もう! お父さんがしっかりしないからこうなるのよ!」
「そう言えばウチの父さんは?」
「緊急でPTAの会合があるって言って会社休んで先に出てったわ。夕方までには今後の対応が決まるから先生の話を良く聞くようにって」
へいへい
「じゃあ私、歯も磨きたいし学校の準備あるから、後で玄関で」
「私さきに行くね。おかあさん、食パン1枚貰ってくからー」
「美奈ちゃん食べ過ぎ! 袋は閉じる! 食べながら走らない! あと歯磨きは?」
「ふぁっほうひふぁふらひふぉいへるはらー! ひっへひはーふ!」




