勇者ケント捕獲作戦7
「え〜っと、う〜っと、駄目だよ全然ないや〜」
「何を探してるの? リラ」
「うひゃあっ! ケンちゃん? あ〜ビックリした〜」
「はは、ゴメンゴメン」
あれ? マユミがいない。いつも一緒なのに。それに自然と肩を抱いたりして。うっ嬉しいけど… どうしたの? いつも素敵だけど今日は特にカッコイイよ? 何か恥ずかしいな。
「ローザとカティーが探しに行かなかった?」
「ああ、2人とはもう会ったよ。それでリラは1人で何を探してたの? よければ手伝わせて」
ええ… 耳元で喋って… いつもより近い〜
「うん。この木を見て」
「みんな同じ種類だね。花が咲いてたみたいだけど終わったのかな」
「ケンちゃんがコッチの世界に来た時が最後くらいで、みんな枯れちゃった。 あ〜見せたかったな〜 山のこっちがわ一面に紫色の花がすっっっごくいっぱい咲いて、いい香りに包まれて。素敵だったのにな〜」
「何て名前?」
「ライラックよ。リラの花」
「なんでライラックがリラの花なの?」
「え? ああ、違うの。ローザが住んでたガリアの方ではライラックをリラって言うんだって。私ね、本当の名前は覚えてないの。小さい時に奴隷狩りにさらわれて、勝手に名前を付けられて。そんな名前いらないって思ってた。本当の名前が欲しいって言ってて」
あっ、ケンちゃん黙っちゃった?
「ゴメン。つらい事思い出させて」
「いいの。小さい時の事はあんまり覚えてないし。それでね、ヤオチュに解放してもらって3人でこの村に来た時、この花が一面に咲いてて、私言ったの。『すごくキレイ。ここならきっといい事がありそう』って。そしたらローザが『あれはリラの花。気に入ったんなら今日からお前はリラだ、アタイが薔薇でお前がライラックの花な』って。その日から私はリラになったの」
「じゃあ、これはリラの花で、君の花なんだ」
「あ、うん。そうなるね。私の花。私の花だからきっと効くと思う」
「何に効くって?」
「いやその… ほら、この花枯れてるけど見て。みんな花びらが4枚でしょ? でも5枚のがほんのちょっとだけ混じってるの。ハッピーライラック。それを見つけておまじないに使うのよ」
「それで探してたんだ。何のおまじない?」
「えっ、はわわっ! ほ、他の人にバレたら効果がなくなるからソレは秘密!」
「はははハイハイ秘密ねヒミツ。あれっ、コレ5枚じゃない?」
「あっ、あったーーー! やったー! ありがとうケンちゃん! すごーい!」
「じゃあ早くやろう。とりあえずそこに座って。シロツメクサが茂っててフワフワだから気持ちいいよ」
「うん。でも、おまじないは帰ってからね。ケンちゃんが見てたら効果なくなっちゃうもん」
ケンちゃんは私と一緒にシロツメクサのベッドに横になって言った。
「そういえば同じだね。ほら、この葉っぱはみんな3枚だろ。でも中には4枚のがあって、見つけるといい事があるんだって」
「えっホント? どこどこ? ないよー」
「ホラあった、コレ。四つ葉のクローバー」
「えー! 早ーい! 今日のケンちゃん凄くない?」
「それ程でも。で、これをこう結んで、指輪〜 これはリラにあげる。はい左手出して」
「はっ、はっ、はうっ」
“ケント… 勇者ケント… 聞こえますか… 私はいま貴方の精神に直接語りかけています…”
「誰だっ!」
「どうしたの急に。誰もいないよ?」
「さっきからいい所で邪魔してるのはお前だな。出て来い!」
“女性に指輪を贈るのは婚約の証。婚約指輪の起源はギリシャ神話にあり! それこそはプロメテウスを縛るカウカーソス山の石と鉄鎖の表象…”
「この野太い声は… 先生!」
“貴方には将来を誓った女性が既にいる。それなのに他の女性にそれ程の神話的忠誠を誓わせるおつもりですか? 思い出しなさい!”
先生の声は… 脈動する紫光を放つ俺の右手の甲から出ていた。それに気付いた瞬間、激しい紫の光が溢れて俺の視界の全てを包み込んだ。




