勇者ケント捕獲作戦3
「いいかみんな走りながら聞け。エリクトのバカは役に立たねぇ」
「ゼー、ゼー、貴方のせいですよね?」
「ウルセエ役立たず!」
「ゼー、ゼー、一度だけ挑戦させて下さい。パワーがなくても手はあります」
「あっ… ケント兄ちゃん… 探したんだよー」
「カティー、心配してくれたんだね。ありがとう」
「あの… 昨日はヘンな事してゴメンね… 昨日は凄くカッコ良くて… みんなの雰囲気に乗せられちゃって…」
「いいんだよカティー」
「あ… 手を… 握ったら… ちょっと恥ずかしい…」
「シーッ、静かに。 今追われてるんだ。こっちにおいで」
「あの… 何で茂みの中に…」
「いいからいいから。目を閉じてじっとしてればすぐ終わるから」
「あ… あのあのっ」
「可愛いよカティー」
「あんっ駄目っ」
『目的地 に 到着 しました』
「勇者ナビによるとこの茂みの中だ」
「マユミ、ドリュアスの力で一帯を封鎖して下さい」
「はい! 蔓草の精霊たち… 力を貸して」
樹の精霊と一体化したエロ真由美が本体のまわりをクルクル舞うと、祈りを捧げる本体真由美の髪が緑に染まり揺らめくようにウエーブする。
それに呼応して森のあちこちからヒョッコリ顔を出したのは頭に甘い香りを放つ小さな花を載せた3頭身の蔓草の精霊たち。よいしょ、よいしょと小さな掛け声を合わせながら蔓を引っ張り出してケンちゃんのいる茂みを四角く囲んでしまった。
カーン
「フライング村人ボディープレーーース!」
「さあ始まりました因縁の師弟対決!実況は私ストーカー真由美、解説は委員長真由美でお送りします」
ゴング?マイク?折り畳み事務机にパイプ椅子?どっから出したの?
「早速ですが解説の真由美さんギリシャ神殿の大神官がプロレス技を使った件について」
「えーそもそもですねー実況の真由美さん、レスリングの起源は古代オリンピックなんですよ」眼鏡クイッ
「そう!レスリングの起源はギリシャにあり! その大神官たる私があらゆるプロレス技を身に付けているのも当然なのです!」
「だそうです」
え… ええ…? まーそれはいいけど… 先生が茂みに突っ込んだ時『ダメージ0』って文字がピコンって出なかった?
「だが勇者ケントのダメージはゼロだーっ!」
「オレの愛のムチの効果だ」
「セコンドのヤオチュさんのコメント通り勇者ケントは師匠のDVを受け続け守備力が鍛え上げられているーっ!」
「村人Aの攻撃力では有効打は有り得ません」眼鏡クイッ
「あーっと村人A、勇者ケントの顔面に打つ打つナックルパートの連打だーっ! ダメージゼロ、ダメージゼロ、ダメージゼローッ」
「今のパワー差では目眩まし程度ですね」眼鏡クイッ
「出たーーーっ! 伝家の宝刀スピニングトーホールド! この技は回転するほど威力が増すーーーっ!1回!2回!3回!」
「1回転で通常の関節技の2倍、2回転で4倍、3回転で8倍、4回転で16倍、10回転で1024倍になります」眼鏡ピカッ
「これは危険だーーーっ! ああっと勇者ケント6回目で村人Aを蹴飛ばしたーっ! 解説の委員長真由美さん、どう見ますか?」
「スピニングトーホールド返し技の基本ですね。テクニック999の勇者ケントには造作もないでしょう」
「しかし村人Aすかさず奥の手、テキサス四つ葉固めだーっ!決まったー! これは脱出不能ーーーっ!」
「これは村人Aのフィニッシュホールド。関節技の完成形ですね」
「さあ勇者ケントどうするタップアウトかーーー?」
「いや、彼の両腕を見て下さい」
「おーっと勇者ケント腕のみで逆立ちの態勢! 両足と背骨を極められたまま村人Aの巨体を持ち上げたーっ! そしてそのままひっくり返すーっ! 有り得ないーっ!」
「村人Aとの圧倒的なパワー差を利用しましたね」
「そこから後ろに回り込んでーっ、決まったーっ!カールゴッチ直伝ジャーマンスープレックスだーっ!」
「美しいブリッジですね」
「レフェリーのカティーがカウントを取るーっ!」
「え? わたしっ? はわわっ… ワ… ワン、トゥー」
「あーっと村人A、2で肩を上げて返したーっ!しかし残りHPは1! 完全にグロッキーだーっ!」
「カウントが遅れて救われましたね」
「しかし勇者ケント、コーナーポストに登ってーっ! バック転! 月面猿人 落としだーっ!」
「俺達は、兄弟なんだーーーーっ」
「ワン、トゥー、スリー」
「勝負あったーっ」
カンカンカンカン
「新チャンピオン誕生の歴史的瞬間です! 勇者ケント見事な恩返し! 感動をありがとう!」
「次回は両国国技館で1週間後にお会いしましょう」
「それでは皆さんご一緒に。はあーーーーっ」
「マッスル!マッスルー!」
「あれ… ケント兄ちゃんがいないよ?」
しまったーっ! また逃げられたーーーっ!
決め技は空中元彌チョップにするか迷いましたが、地味ですよね。




