俺と真由美と部活メンバーの残念な昼休み
やっと本編の真の(負け)ヒロイン、漫研部長『合田さくら』が登場。
私的には真由美が1番ですけど、三四上との決戦あたりまで読み進めて頂ければ『ああ、俺は何でこの娘と付き合わなかったんだ!』と思って頂けること請け合いです。
彼女の大活躍に乞うご期待!
ここが1巻の中盤だとしたら、三四上戦は4巻になるやら8巻になるやら遙か先の話になりますけどね!
「ふむふむ、夢の中で1か月も冒険したと?」
「そーなんだよねー。優介はどう思う?」
「んじゃ今日の部活はソコんとこのSF設定を考えてみた!でいこうぜ」
昼休み。入学時の計画では俺は真由美と仲直りして2人で弁当のハズだった。真由美の手作り弁当を『ハイあーん』とか! お箸が口に触れて真由美が真っ赤になって『間接キス…』とか! コレ!!!
しかし実際には俺を含めて5名の『漫画研究会』で机を寄せて弁当というのが俺の昼食だ。どうしてこうなった。
漫研って言っても活動は部長が薄い本を自費出版してるだけ。部員4名は漫画に大して興味もない数合わせの幽霊部員。昼休みに弁当かこんでロボット談義かSF談義をするだけの実質帰宅部なんだけどね。
「面白いわね。まー優介にSFの何たるかが分かるとは思えないけど」
「馬鹿にすんなよ部長。僕だって早川SF文庫は百冊以上読んでるんだ。ハードSF設定ならバッチリさ!」
いつものように口論を始めたのは谷 優介と合田 さくら。2人ともグリグリメガネのチビで重度のSFマニア。優介は7:3分けの見るからに真面目君。
部長は鼻のまわりに少しソバカスのある茶髪のソバージュ。ウチの制服はコレが着たくて受験する生徒もいるくらいデザインに力入れまくったブレザーで、これ着てコンタクトに変えて『合田酒造令嬢』らしく楚々としてれば結構人気者になる素質はあると思うんだけど。
「ハァ? 青背を百冊読んだらSF通ですか? 騙ってんじゃないわよニワカが!」
「さくら言い過ぎだよ」
「出は黙ってて! 優介アンタじゃあペリーローダンシリーズ全巻ちゃんと読み込んでる? 最新巻もよ!」
「さくらちゃんアレ1200話こえてるんでしょ? 全部読んでる人なんていないよ」
「ふふふ… 飯田さんご心配なく。当然! 全部読んでるさ!」
「じゃーあんたコレわかる? 大群が銀河に出現した年は?」
「3441年」
「…」
「…」
2人はしはらく睨み合ったあと突然クイズ合戦を始めた。
「ダッカル防御バリアは何次元?」
「6次元!」
「シュレッグブルムの幼生は?」
「ホルンシュレッケ!」
「真正ガンヨの名前は?」
「オヴァロン!」
「さくらちゃんのお弁当いつも凄いねー。3段重だもんね」
「さくらのお母さんは料理研究家でさ。お父さんの作るお酒に合う料理を研究がてら色々試作してるんだって」
いつもの始まっちゃったし量があるから食い切れないだろコレ。
「出、食っちまおうぜ(提案」
「さくらのお母さんは部活メンバーも食べていいって言ってたからね」
「んー!卵焼きおいひー」
我が校開設以来の美少女・飯田 真由美が出汁巻き卵を頬張ってニッコリ笑うとクラス中の男子が睨み付けて来る。その目にはいつものように『何でアイツらと』って感じで嫉妬の炎がメラメラ燃えている。
このクラスには俺の幼馴染『清水 真由美』の他にもう一人『飯田 真由美』がいる。『真由美』と呼んだら2人とも振り返るので皆『清水さん』 『飯田さん』と呼び分けてる。その点では真由美と幼馴染である俺も変わらない。
中学では飯田さんと優介が同じ学区。俺は高校で知り合って3か月だし幼馴染の真由美がいるんで飯田さんとは特に親しくはない。でももし真由美と幼馴染でなければ飯田さんの方にベタ惚れしていてもおかしくない超絶美少女なんだよね。まさに全校生徒の憧れの的。俺と出を除いての話だけど。
「唐揚げも美味しいよ。山田くん好きだったよね? ハイあーん」
「自分で取るよ」
「いいからいいから」グリグリ
「もぎゅもぎゅもぎゅごっくん。うん。ニンニクの香りがいいよね。何か隠し味も入ってる」
「衣に酒粕を入れてるんだって。出汁巻き卵にも… あ、飯田さん舐り箸は駄目だよ」
「はーい。来生くんはお嬢様と付き合ってるから御作法はバッチリだね!」
「お嬢様…」
「お嬢様…」
話を変えよう。
「この豚の皮付き角煮がまたトロトロで!」
マジこれ旨い。中華風の八角の香りに堪らず大ぶりの肉塊にかぶり付くと口の中でトロリととろけて。
「どれどれ? ホントだ皮のゼラチンがトロットロ」
「これ中華料理屋で食べたら1かたまり1280円はするよ!税抜きで!」
飯田さんは父子家庭で父親が病弱らしい。家事も弁当作りも家計のヤリクリも彼女が全部やってるらしく変な所でお金にこだわる。良く言えば家庭的ってワケ。美少女の割にね。放課後は特別にバイトを認められてて一緒にいるのは昼休みくらい。
「来生くんは幸せ者ねー。裏山c。これ毎日タダで食べられるんなら私だってさくらちゃんをお嫁に貰いたいくらいよー」
「それが、さくらは料理てんで駄目でさ。作れるのは薄い本だけさ」
「そういえば次の本は?」
「圭一攻め✕大石受けの『へぐらし』2次創作だって」
出はもの凄くトホホな顔で言った。来生 出。コイツは俺や真由美と同じ中学で生徒会長まで務めた成績優秀スポーツ万能イケメン高身長のスーパーマン。真由美が生徒会書記だったから1年間は相当ヤキモキさせられた。ただし出と部長は幼馴染で両家公認のカップル。実質許婚者つまり超安全牌! よって許す!(偉そう
「両方ともモデルは来生くんでしょ?」
「飯田さんやめてよ!恥ずかしいよ!」
よくこんな『部活』が認められているものである。
この学校では成績上位3分の1の優等生以外は部活強制参加。成績トップの出はともかく俺と優介の『メンド臭いから』という正当な理由による帰宅部希望は先生から却下を食らった。
そこに現れた救世主が合田さくら。さくらは入学初日に押し問答する担任と俺達の前で『漫画研究会』の設立を高らかに宣言。俺達は『実質帰宅部でいいから』という条件で数合わせの漫研部員にされてしまった。
この無茶振りが即日承認されたのにはワケがある。合田の親父さんが発見した微かな花の香りを持つ酵母で醸した銘酒『花ざかり』は今じゃ国際ワイン品評会で賞を総ナメ。
工場見学も人気でグルメ雑誌の取材もひっきりなしの有名人。祭りだ鏡開きだと言えば『花ざかり』の樽酒が出るから地元では知らぬ者のない名士で校長や教頭ともツーカー。その御令嬢であらせられる部長は『学園開闢以来の変態もとい変人』『アイタさん』と呼ばれながらも野放しなんだ。むしろ我々漫研部員が首輪というか危険人物の接近を知らせる鈴の音と見られている。
「「「ごちそうさまー」」」
部長と優介はまだやってる。1秒で出題する部長も凄いが1秒で回答する優介も凄い。30分ちょいで九百問は超えてるはず。前回は八百問ちょいで間違えたから優介粘ってるわ。ただこのバトル…
『部長が出題して優介が答えられなければ負け』
何と優介の勝利条件はどこにもない! この土俵に乗った時点で実は優介の負けが確定してるんだよ。それでも『知らないの?』と嘲笑われると受けてしまうのがオタクの性なんだよね。
「今何問目?」
「999問目よ」
弁当食いながら数えてる飯田さんも並ではない。
「よく私の千本ノックについて来れたわね! その根性に敬意を表し千問目はサービス問題よ!『ペリーローダン閣下の名を元にした通貨単位は?』」
「そんなもんあるかぁーーーーー!」
「ブッブー! 正解は『まるぺ』!アンタ普段からアンノ監督はどうのこうの語っといてそんな事も知らないの?! エバーから入ったニワカが! 『アンノウルトラマン』 『快傑のうてんき』 『愛国戦隊大日本』は基本でしょっ! DAICON3とDAICON4は試験に出るから覚えとけぇぇぇぇぇ!!!」
「・・・」
優介は言葉もない。エバーからして俺らが生まれる前の20世紀に始まった作品ですけど。その前のを知らないとニワカって厳cよ部長。
「はーい皆さんが静かになるまで先生、5分、待ちましたー。授業を始めまーす。教科書ひらいてー」
さっきから真由美に『まあ、まあ』 『しー、黙って』みたいなサインを手で送っていた先生がやっと話し出した。
「先生!チャイムが鳴ったのに授業を5分も妨害してるんですよ!何でこんな人達に注意しないんですか?納得できません!委員長として!」
真由美は俺達をギロリと睨み付けて吠える。もしかして俺も『こんな人』達って扱い?
「清水さ〜ん。漫研は学校公認の部活ですから〜。活動熱心なのはいい事で〜す。5分くらいは大目に見ましょ〜う。さあ、授業を始めますよ〜」
長い物には巻かれろというのが先生方の方針。合田酒造令嬢さまさまだね。
「漫研の皆さんは放課後残って下さい。たっぷりと話があります!委員長として!」
「丁度いいわ。私からも話があったのよ。漫研部長ではなく、さくらとして!」
「私はバイトだからチャイム鳴ったらすぐ行くね。車で送ってもらう約束があるから待ち合わせに遅れちゃダメなの!ゴメン!」
飯田さんだけ逃げる気まんまん。ズルイ!
2021.5.9 唐揚げシーン追記




