戦い済んで日が暮れて
「お前らがやったのか?」
様子を見に駆け付けた猟師達は呆然としていた。山肌には大穴が開き、吹き出した瀑流はまるで青い龍のような姿で凍り付いている。いや、この川の上流から下流まで見渡す限り全てが凍り付き、星の光と月明かりにキラキラと青く輝いている。
そして黒焦げに、あるいは真っ二つになり氷に封じられた双頭犬。とどめに三頭犬のバラバラ死体。
猟師達は『こいつらが?』と言いたげに俺達を上から下までジロジロと見ている。ちょっと待って。俺はこの猟師達にどう見えてるの? 超ミニの海パン。首にはプラチナのメダルとチェーン。彼女がいるのに村娘3人を引き連れて男1対女4、しかも全員にエロい水着を着せて喜んでいる男…
猟師達の目は語っていた『都会風鼻にかけたシルバーアクセのチャラ男が』 『女がおる癖に村の娘に手を出しおって』 『リア充爆発しろ』 『もげろ』と。
違うっ! 断じて違うっ! 俺は部長に無理やり引き摺り込まれた漫研でスーパーロボット談議に花を咲かせるのが大好きというだけの健全な男子でっ! 引っ込み思案な普通の高1でっ! この『勇者の証』は女神に無理やり付けられただけでっ! このビキニパンツも彼女達に無理やり穿かされたんだっ!
俺は助けを求めて真由美を見て、ビックリした。
スケてるーーーーーっ!
真由美のハイレグ水着は水に濡れてスッケスケになっていた!誇らしげに少しツンと上を向いた豊かな胸! ち…小さなサクランボにっ…剃り残しの繁みがっ!
ヤバい。純白の水着に、まさか濡れるとスケスケになる機能があるとはっ!また鼻血がっ!帰ったら大沼亀を食べて血を補給しなければっ…
え…ちょっと待って?
『子猫亭自慢の大沼亀シチューだ。食べてくれ』
『どうだった?真由美シェフ特製大沼亀の香草煮、押し麦とともに』
『朝はやっぱり大沼亀の麦がゆだよね!リラが作ったの!さあ、召し上がれ!』
『アタイこれでけっこう家庭的な所もあるんだぜ!大沼亀鍋だ!食べさせてやるよ。フー、フー、フー、ハイあーん』
『あの…私…お料理はできないので…残り物の大沼亀をパンに乗せただけですけど…食べて下さい』
え?俺コッチ来てから1か月、朝昼晩オヤツ夜食ぜんぶ大沼亀食べてない?そりゃ出る!鼻血!
みんな俺に大沼亀ばっかり食べさせて何をさせる気なの?何を期待してるの?
はっ!ちょっと待て。真由美の白水着がスケてるって事は俺の海パンも…
俺が自分の股間をチェックすると、そこは真由美以上に大変な事になっていた!そして、リラとローザとカティーは、かがみ込んで口元を両手で押さえ、目元をポウッと赤くしてまじまじと覗き込んでいた!
「すげぇ」
「キャー」
「つん、つん」
「イヤーーーーっ!見ないでーーーーー!」
猟師達に借りた布でちん… 腰を隠してから聞いた所、双頭犬は村がかり総出で山狩りして1匹倒せるかどうかの猛獣。三頭犬に至ってはギルドに依頼して冒険者20人がかりでどうか、という強さらしい。
その毛皮には各種の耐性が備わっていて、衣類に防具にと高値で売れるそうだ。
「肉だけでも相当な値になる」
「たっ… 食べるんですか?」
「何言っとるんじゃ奥さん。ヒポクラテスちゅう偉いお医者さんが双頭犬や三頭犬の肉は精力・魔力を増強するからドシドシ食べなさいっちゅーとろうが」
真由美が突然、小声になって猟師のオッサンとコショコショ話し始めた。
「精力?そこkwsk!」
「おう。旦那さんに食わしたら朝まで、それはもう、むひひひひ」
「あのっ!少し分けて貰えませんか?」
「お前さんらが狩ったんじゃから、お前さんらのもんじゃ。後でキッチリ届けたるわい」
「ありがとうございます!」
途中から良く聞き取れなかったけど、何を相談してたんだろう?
そんなこんなで俺達が『子猫亭』に着いた時、夜はとっぷり昏れていた。真由美は親父っさんの温かいシチューを食べてすぐ、口をあけて鼻提灯。よっぽど疲れたんだな。ああ…寝顔もカワイイ…
「それでオレはクソ女神をブン殴ったってワケよ!」
「女神はダメージ0で、逆に思いっきりフッ飛ばされましたけどね。ばーっはっはっは」
師匠と先生はとっくに出来上がっていた。俺は2人に三頭犬との戦いについて話した。
俺達が向こうから着て来た服は、あの騒ぎで流されてしまった。水着で帰った俺達は結局、真由美はローザの、俺は親父さんの服を借りた。
服、と言っても長四角で真ん中に丸穴のあいた布に頭を通して腰を紐で縛るだけ。
ブラやパンツという物は存在しない。脇に開いたスリットのセクシーな事と言ったらもう。
俺の方は、男がワンピースって言うのかチュニックって言うのか、こんなのを着るなんてと最初は抵抗があった。でもコレが意外と便利なんだ、トイレでは。何しろ裾で壺を覆うようにスポンと座ってイタして立つだけ。ベルトやチャックを外す必要はないしズボンやパンツの間に縄を通す苦労もない。
欠点と言えば真由美と3人娘にスカートめくりをされるくらいだ。(なおノーパン)
真由美の寝顔にウットリ見惚れていて、師匠の声で我に返る。
「マユミは寝たな。オイ。真面目な話がある。ソレの話だ。山のドテッ腹に大穴あけるたぁ大した物じゃねーか。そいつは誰に貰った?」
俺は右手の甲に触れて答えた。
「知らない間に付いてたんです」
「知らねえって事ぁねぇだろうが!言え!あとビールおかわり!」
「あいよ」
師匠は飲み干したジョッキをテーブルに叩き付けて叫ぶ。こんなのは初めてだ。
「それは神殺し。大地母神のみが生成し、神を殺せる唯一の素材なのです」
「でも、師匠達だって冥王を倒せますよね?」
オープニングムービーでは、相打ちだったけど。
「確かにオリハルコンの武具や『証』でも神を倒せます。しかし神は数年で復活してしまうのです」
そう言えばオープニングでそんな事を言ってたな。
「神殺しの武具は神を永久に滅ぼすのです。しかも空間そのものを斬って移動する機能もあります。恐らく神の本体は異世界にあり、こちらの肉体は複製だから何度でも再生するのです。神殺しは空間を斬る機能で、異世界にいる神の本体を斬っているのではないでしょうか?」
「オマエなら」
師匠がビールの泡をフッと吹くと、泡に付いていたハエがテーブルに落ちた。
「このハエに、オマエを殺せる武具を与えるか?」
「神殺しの所持を許されるのは神自身か、神に絶対の忠誠を誓った『英雄』だけなのです」
そう言って黙った2人の鋭い目が語っていた。お前はこちら側なのか、あちら側なのか? 返答次第では切って捨てると。
「俺の服を貸してやるよ。心配すんな、洗濯屋がちゃ~んと洗剤で洗ったヤツだ」
「洗剤… だと… ?」




