決着!ハーレム絶対防衛戦!
ずどん!
地響きを立て、巨大な氷の刃が三頭犬の3つの首に落下した。氷片の混ざった水しぶきが谷中にキラキラ飛び散る。精霊たちも大喜び。
だけどおかしい。私のイメージでは首は3つとも落ちているはず。だけどそんな様子はどこにもない。水しぶきが晴れ、三頭犬の首が見えて、私は呆然とした。左右の首はおかしな方向に曲がって虫の息。まん中の首は黒い靄に覆われたまま傷1つない。そうか!落下の瞬間に防御力を中央に集中して氷の刃を支えたんだ!
その1瞬の隙に中央の首がぎろりと私を睨み付けた。全身の筋肉が強張る。これは状態異常? 魔犬の目から恐ろしい悪意が伝わって来る。『地獄へ堕ちろ、だと? 我がどこで生まれたかも知らんのか?』と。
そして、再びぎろりと前を、ケンちゃんを睨み付ける。
ケンちゃんは、両手の拳を合わせて高々と掲げ、何かを念じていた。
俺は三頭犬を睨み続ける。でもコイツは引くつもりはないようだ。コイツは俺を舐めている。俺はもっと大きく、もっと強くならなきゃいけない。こんな奴に舐められないくらい。
俺は両手の拳を組んで、高々と掲げた。紫光を放つ神殺しの手甲は俺の意思に応じカチカチと結晶を成長させ左拳をも包み込む。まだまだ。もっと大きく、もっと大きく、もっと大きく。真由美が作り上げた断頭台より高く、大きい、拳のイメージ!
ヤツが俺を睨む。その目は確かに語っていた。『お前を殺す』と。そしてヤツは突っ込んで来た。黒い突風のように。俺はヤツの頭に拳のイメージを振り降ろした。その時、頭上から巨大な何かが落ちて来て、ヤツの首を地面の奥深くに叩き込み、その頭蓋骨を粉砕した!
その様子を、山頂から窺う2つの影があった。
「あれはお前の必殺技『隕石落とし』じゃねーの?」
「『隕石落とし』は地下迷宮の1つや2つ粉砕する技です。まだまだ力が足りませんね。まあ大目に見て合格にしておきましょう」
女神も戦神も数万の隕石を召喚し人の世を焼き尽くす力を持つ。ここからがスタートだ。
「お前のお気に入りも大したもんじゃねーか。一声で川の精霊を従えちまったぜ」
「それだけではありません。この山脈の地下を流れる水脈、全ての精霊をまとめ上げましたね」
真由美を縛る魔力のたてがみがほどける。俺は駆け出した。真由美を抱き締めるために。真由美!愛してる!
真由美も魔犬の背を駆け降りた。そして、彼女の力で見渡す限り凍り付いた沢に降り、俺の方に走って来た!そして、すべって、転んで、顔面から俺の股間に突っ込んだ!
「痛ぁっ!・・・」
「ケンちゃん!ゴメン!」
少しだけ気持ちよかったから謝らなくてもいいよ、真由美。
数分後、真由美の治癒で何とか回復した俺は彼女をギュッと抱き締めた。その拳はまだ紫の光輝を放っていた。戦いは終わった筈なのに、何かを警戒するようにエネルギーを増し、振動している。これは共鳴?
その時、死んだはずの三頭犬が立ち上がった。白目を剥き、牙を剥き出しにして突然岩肌を駆け登る。上空の何かに向けて? それとも崖の上で怯える3人に向けて?
「危ない!」
手甲から衝撃波を発しようと構えたその時、高空から細い、細い、細い紫の閃光が煌めいた。三頭犬が動きを止める。次の瞬間、その3つの首がポロリと落ちた。首を失った巨体はぐらりと傾くと再び谷底に転がり落ちる。
何かがいる。 三頭犬など比べ物にならない、もっと強い何かが!
俺は振り向いた。川下の方角。暮れなずむ、宵の明星が輝く空に、そいつはいた。
弟子達がこちらを振り向いた。いや、見ているのは我々より遥か後ろ? 振り向くと、そこには夕暮れの空。
女勇者が叫ぶ。
「違う!金星の方角!」
宵の明星を背に、何かがいる!
大賢者の右目から冷たい緑の焔が上がる。
望遠!超望遠!超超望遠!超超超望遠!いた!神殺しの武具を持った女。あれは死神の鎌!遥か高空1万メートル以上!
「全てを打ち砕け緑の閃光!」
右目に埋め込まれた義眼から必殺の光線を放った瞬間、その女は神殺しの鎌で空間を丸く切り抜いて消えた。紫の穴は瞬く間に縮まり、必殺の閃光は虚空を貫いた。
「やったか?」
「逃げられました」
「あるいは、見逃してくれた、か」
「これは1日に1発しか撃てませんからね」
大賢者が右目に人差し指を突っ込みグルリと回すと、その碧眼はスポンと取れ、ゆっくりと光を失っていった。余熱で暗い眼窩から湯気が上がる。
それを見た女勇者が、ほんの少しだけ心配げに言う。
「大丈夫か?」
「ええ。冷ませばまた使えます。ビールで洗いましょう」
「毎度毎度、ひとの酒で洗ってんじゃねーーーーーっ!」
目からビームは基本技。




